2024年11月27日( 水 )

急拡大する蓄電池ビジネス(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

市場の環境と電力の特性

蓄電池 イメージ    生成AIなどの新たな技術が、これまでになかったかたちでエネルギー需要を生み出している。生成AIが普及すればするほど増設が予想されるデータセンターや従来の製品より数10倍の高電力を必要とする半導体など、今後、電力需要の増加が爆発的に拡大することが予想されている。一般的なデータセンターは32MWの電力を使用するが、AI向けのデータセンターは約80MWを使用するのだという。

 米国や中国、日本などは、その需要を満たすための熾烈な競争に突入している。しかし、電気は単体では蓄えることができず、常に需要と供給を一致させる努力をする必要がある。

 電力が不足すると、停電になることは一般人でも知っているが、電気が余っても停電になるリスクがあることはあまり知られていない。電気の需給が一致しないと、電圧や周波数の変動を起こすことになる。大幅な変動になると、電子機器の故障や大規模停電を引き起こしかねない。

 脱炭素社会の実現に向けて導入が進められている太陽光発電の場合、発電が不安定で、日照量が多い時には発電量が多く、夜になるとまったく発電しない。発電量が需要を大きく上回る昼間は、「出力制御」が実施されるケースも増えつつある。

 「出力制御」とは、電力会社自身の判断で発電所のオーナーから電気を買うのをストップする制度だ。出力制御が行われると、発電した電気が捨てられることになる。夜になると発電しないので、電力供給ができず別の電源から電力を供給してもらわないといけない。

 蓄電池がなかった時代は、電気を蓄える唯一の手段は揚水発電であった。貯水池を上下両方につくり、水の落差を利用して水車を回転させ、発電させる。電気が余ったら、その電気を使って水を下から上に運び、水としてもっていて、電気が必要なときに水を落としてまた発電するという仕組みだ。

定置型蓄電池需要の増加

 蓄電池市場は以前から大きな成長が予想されていた。ところが予想に反して蓄電池市場は成長せず低迷していた。しかし、「AIブーム」の到来で、電力需要の爆発的な増加が予見される。再生可能エネルギーで電力を供給しようとすると、蓄電池も需要が増加しそうだ。

 日本でも「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの導入量を積極的に増やそうとしている。しかし、これら太陽光や風力による発電方法は、発電量が天候や時間などに左右されやすいので、安定供給に課題がある。その課題を解決する方法として発電側や系統側に蓄電池を設置し、電力タイムシフトや出力を平滑化することが考えられている。

 韓国の調査会社・SNEリサーチによると、昨年の定置型蓄電池(ESS)の市場規模は、前年同期比27%伸長の400億ドルで、35年には800億ドルにまで成長するという。

(つづく)

(後)

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