急拡大する蓄電池ビジネス(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏火力発電より発電コストが安くなった太陽光発電
米国の電力網はほとんどが1950~60年の間に建設されたもので、送電ロスが多い。そのため、米国政府は太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーを中心に既存の電力網から代替させようとしている。
エネルギーを輸入している中国も、再生可能エネルギーにとても力を入れている。「世界の工場」と言われている中国だけに、安い電気を確保することが競争力の源泉になるからだ。
広大な地の利を活かして中国は太陽光発電や風力発電に尋常ならぬ力を注いでいる。その結果、太陽光パネルの主要製造段階におけるシェアの8割程度は中国製となっている。
中国製の太陽光モジュールは、価格が日本や韓国の半額くらいで、他国は太刀打ちできない状況となっている。太陽光パネルの生産において電気代は全体コストの40%くらいを占めているが、中国は電気代が安い上に、すべての工程を自動化し、ロボットで生産しており、競争力は圧倒的である。
中国企業同士の競争も激しいため、太陽光パネルの価格は安くなり、電源のなかでは発電コストが火力発電より安くなった。太陽光だけではない。風力発電でも同じような現象が起きている。韓国でも市場に中国の安い風力発電機が雪崩を打って入ってきている。このような状況に危機感を覚えたのは米国である。そこで、中国をけん制し始めている。
再生可能エネルギーには蓄電池が必須
近年、電気代が高騰し、住宅に太陽光パネルを設置し、電気代を節約しようとする家庭も増えている。その際に余った電気は蓄電池に貯めておき、必要なときに使いたいという需要があり、蓄電池の需要は今後伸びていくだろう。また、新築住宅への太陽光設置義務化の動きもあり、蓄電池の搭載率上昇も期待されている。
再生可能エネルギーの普及にともない、企業や発電所など、蓄電池を活用した新しいビジネスに参入したいというところも増えている。そこで蓄電池の充放電による電力取引で収益を挙げる「蓄電所ビジネス」が注目されている。
電力需給で考えると、電気の市場価格が安くなるのは、電気が余るタイミングで、電気が高くなるのは不足するタイミングである。つまり、電気が安いときに購入して蓄電し、高くなるタイミングで売電すれば、多額の利益が見込めるビジネスが成り立つわけだ。さらにEVが普及すればするほど、一度使用した車載電池を蓄電池にリユースするケースも増え、定置型蓄電池市場の形成にプラスとなるだろう。
韓国の車載電池メーカーは低迷しているEV市場への挽回を定置型蓄電池でできるのではないかと期待している。中国企業はエネルギー密度では落ちるが、低価格で、火災などがあまり発生しないリン酸鉄という正極材を使った蓄電池で、韓国企業の市場シェアを奪い、韓国企業は苦戦を強いられていた。
このままでは太陽光パネルも、風力発電機、それに蓄電池市場も、中国に根こそぎ奪われるのではないかという懸念が米国にある。そのため恩恵を最も受けるのは韓国企業になるかもしれないとも言われている。
(了)
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