元弁護士・清田知孝被告裁判、第3回公判(2)保釈手続きを放置した重大な人権侵害事件
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25日午後、福岡県弁護士会に所属していた元弁護士・清田知孝被告の横領事件に関する第3回公判が福岡地裁で行われた。
事件は清田被告が弁護士であった当時、依頼人の預り金等を横領していたとして起訴されたもの。1つ目の事件に加えて、第1回と第2回公判で2つの追起訴が行われ、現在3つの事件について併合審理が行われている。
今回の第3回公判では、3つ目の事件に関する被告人の罪状認否と、それに続いて1つ目と2つ目の事件に関する被告人尋問が行われた。25日に行われた第3回公判では、前回記事(元弁護士・清田知孝被告裁判、第3回公判(1)債務整理に関わる資産横領事) で報じた3つ目の事件に関する罪状認否と検察による「証拠によって証明しようとする事実」の説明の後、1つ目の事件と、2つ目の事件に関する被告人尋問が行われた。
今回の記事では、2つ目の事件についての被告人に対する弁護人と検察官双方からの尋問について報じる。
2つ目の事件
2022年6月、清田被告が弁護士だった当時、清田被告に刑事事件の弁護を依頼したBさんから、Bさんを保釈するための保釈金として利用するためにキャッシュカードを預かったにもかかわらず、引き出した現金を保釈手続きに利用せず横領したもの。弁護人尋問で明らかになった状況
保釈請求の放置と217日間の勾留保険金詐欺で逮捕されたBさんは、1つ目の事件の原告であるAさんの紹介で、清田被告がBさんの弁護人になった。
22年5月16日のBさんの第1回公判の後、同月20日に清田被告は拘置所でBさんに接見し、保釈のために拘置所が保管しているBさんのキャッシュカードを宅下げ※して清田被告に渡すことを提案。Bさんはこれに了承して、キャッシュカードを渡して暗証番号を清田被告に教えた。
※宅下げ:勾留されている容疑者が、接見にきた者に対して物品を渡すこと。警察署や拘置所の窓口を通じて行われる。差し入れの逆。
ところが、清田被告は、6月3日に60万円を引き出し、同月10日に50万円を引き出し、その後も引き出しを行って、合計510万円をBさんの預金口座から引き出したが、Bさんの保釈申請を行わなかった。
引き出した金はいずれも保釈の申請には利用されず、清田被告はテレボート(インターネットによる舟券購入サービス)での舟券の購入と生活費にあてた。
そのように清田被告がBさんの保釈請求を放棄した結果、Bさんは22年1月~8月にかけて217日も勾留された。Bさんが保釈されたのは、Bさんが清田被告を弁護人から解任して、新しい弁護人を選任した後であった。
「重大な人権侵害」清田被告の弁護人が断罪
清田被告の弁護人は、このような清田被告の行動について、「依頼人の身柄の解放のために最善を尽くすのが刑事弁護人の使命であるにもかかわらず、その務めを放棄し、重大な人権侵害を引き起こした」と断罪した。
一方、清田被告自身は今回の事件で40日間勾留された。Bさんの勾留期間はその5倍以上にあたる。清田被告は弁護人から「保釈されたとき、どのように感じたか」と聞かれると、「ホッとした」と答え、続けて「Bさんに対してやってしまったことの重大さを理解した」と答えた。
また、弁護人が清田被告に対して、「依頼人の身柄の解放より、ボートのほうがやりたかったのか?」と問いただすと、清田被告は曖昧に同意した。
清田被告はBさんに対して後日520万円返金しているという。
清田被告は弁護士を通じてBさんに対して示談の申し入れをしているが、弁護士にはBさんからは何の反応もないという。
しかし、清田被告は、これからもBさんへ示談の申し入れを続けることを希望し、可能であれば、Bさんに直接会って謝罪したいと語った。
検察官尋問における争点
保釈請求の放棄は意図的だったか?検察官は清田被告に対して、「清田被告がBさんのキャッシュカードから一部の金を横領した後も、キャッシュカードのなかには300万円程度の金額が残っていた。この金額があれば、Bさんを保釈することができたはずだが、なぜ保釈しなかったのか?」と問いただした。
それに対して清田被告は、「自分の保身のためだったと思う」と答えた。
記者注(Bさんが保釈されると横領がバレてしまうため、清田被告が意図的にBさんの保釈を放棄したのではないかという疑惑についての質問であった。)
22年6月に開かれたBさんの第2回公判で、裁判官はいまだに勾留されているBさんについて清田被告に対して、「なぜBさんを保釈してあげないのか」と問いただしたという。それに対して清田被告は「帰りに保釈請求を出して帰ります」と答えたものの、結果、保釈請求は出さなかった。
Bさんは6月8日~8月28日にかけて、清田被告に対して13通の手紙を出している。そのうち2通が未開封の状態で清田被告の自宅から押収されている。これに対して清田被告は、「当時、業務の遅滞によって多くの未開封の書類などが事務所に溜まっていた」と説明し、残りの11通についても、「読んでから捨てたのか、読まなかったのか分からない」と回答した。
その後、清田被告は、Bさんの後任の弁護士とともに2人でBさんに接見に行く約束をしていたが当日キャンセルをした。その理由について「後ろめたくて行けなかった」と答えた。
検察官は清田被告に対して、「勾留された被告にとって、弁護人は唯一頼ることができる存在。Bさんにとって弁護人である清田被告はそのような存在であった。その弁護人に裏切られることがどんなに重大なことか。自らが容疑者となって勾留されて、Bさんの気持ちが分かったか?」と聞くと、清田被告は「Bさんの気持ちがよく分かった」と答えた。
(つづく)
【寺村朋輝】
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