2024年12月19日( 木 )

元弁護士・清田知孝被告裁判、第3回公判(4)被害者との関係と脅迫指示はあったのか

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 25日午後、福岡県弁護士会に所属していた元弁護士・清田知孝被告の横領事件に関する第3回公判が福岡地裁で行われた。
 事件は清田被告が弁護士であった当時、依頼人の預り金等を横領していたとして起訴されたもの。1つ目の事件に加えて、第1回と第2回公判で2つの追起訴が行われ、現在3つの事件について併合審理が行われている。
 今回の第3回公判では、3つ目の事件に関する被告人の罪状認否と、それに続いて1つ目と2つ目の事件に関する被告人尋問が行われた。

 25日に行われた第3回公判内容のうち、記事(1)で3つ目の事件に関する罪状認否と検察による「証拠によって証明しようとする事実」の説明、記事(2)で2つ目の事件に関する被告人尋問、前回の記事(3)で清田被告の事件の背景にある、弁護士としての業務状況と、被告がいかにギャンブルにのめり込んでいたかについて報じた。

 今回記事では、1つ目の事件に関する被告人尋問について報じる。

1つ目の事件
 2021年6月、清田被告が顧問を務めていた企業が起こした未払い金請求訴訟で、当時所属していた法律事務所の口座に振り込まれた金額約882万円のうち約802万円を横領したもの。

1つ目の事件の被害者との関係について

 被害者Aとは知人の紹介で知り合い、Aの会社の顧問弁護士を務めるようになった。

 21年6月、清田被告は、Aの会社を原告とする未払い代金の請求訴訟で回収した金額、約800万円を横領した。6月7日以降に金を引き出し、同月26日までにすべて使ってしまった。使途のほとんどはボートと、他のクライアントの穴埋めだった。この預かり金について、決してAから、自由に使ってよいと承諾を受けていたわけではない。

 Aから回収した代金の振り込みを求められると、清田被告は、「調整の上、振込みします」などと言い訳し、Aとの面会の約束を変更することなどを繰り返していた。

 21年10月には、Aから「正直に話してほしい」と言われ、食事の席でAと話をした。そこで清田被告は返済の約束をしたが、Aから叱責なども一切なかったことが、むしろとても申し訳なく感じた。

 22年9月には、書面で返金を約束するなどもした。同年12月までに250万円返金した。

 清田被告にとってAは、単に弁護士と顧客の関係ではなく親しい知人の間柄であり、決して裏切ってはいけない人だった。清田被告はAから「どうにか再起しようね」などと励ましの言葉をかけてもらっていたが、結果として何度も裏切ってしまった。

 また、検察官尋問で検察官から、「清田被告とAの関係は、ボートのためのお金を貸してくださいと言えるような関係だったか?」と問われると、清田被告は「お金を貸してくださいと言えたと思う」と答えた。それに対して検察官が、「ではなぜ、お金を貸してくださいと言わずに、預かり金を勝手に使ってしまうという行為におよんだのか」と問うと、清田被告は、「お金を貸してくださいと言うことは、Aさんに自分の弱い部分を見せてしまうことになる。Aさんとの対等な関係を崩したくなかった」と答えた。

告訴取り下げの脅迫指示をしたのか

 Aによれば、Mという人物がAとAの妻に対して、清田被告への刑事告訴を取り下げるように脅迫したとされる。

 Mは清田被告が知る税理士事務所の事務長で、清田被告はMに本件について相談していた。しかし、清田被告は、刑事告訴を取り下げさせるように脅迫の指示や依頼をしたことはないと主張した。また、Mが独断で動いたと思うとか、Mが脅したことも知らなかったと語った。

 これに関する検察官尋問では、MがAに対して、次のように発言したことが明らかにされた。Mは清田被告とは10年以上の付き合いで、清田被告に会って意向を聞いてきた。Mが勤務する税理士事務所の税理士とMが清田被告の保証人になるから、清田被告に対する告訴状を取り下げろ、とAに対して語ったという。

 それに対して清田被告は、Mは保証人になるとは言ってくれたが、まさかそれがAを脅すということにつながるとは思ってもみなかったと主張し、改めてMのAに対する脅迫への関与を否定した。

「Aの弱み教えてください」というメールの意図について

 清田被告が友人に「Aの弱みを教えて欲しい」と依頼していたメールについて、清田被告は「Aさんと示談したいという思いから、そういうメールを送ってしまった」と語った。

 検察尋問で改めて「弱みを教えて欲しい」というメールの意図について問われると、清田被告は、「その人が過去にAさんと揉めていたらしいという話を聞いていたので、その話を聞こうと思った」と語った。

 清田被告は、Aに対する思いを問われると、直接会って謝罪したいと語り、被害金の全額の返済と示談の申し入れをこれからも続けたいと語った。

今後の公判予定

 第4回公判は、7月11日(木)午後1時30分~3時。第4回公判では、3つ目の事件に関する被告人質問などが行われる予定となっている。

 第5回公判は、9月12日(木)午後2時30分~4時30分、いずれも912号法廷で開かれる予定。

(了)

【寺村朋輝】

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