顕在化する人手不足、福岡市の入札不調件数は増加傾向続く
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入札不調件数は増加傾向続く
以前、福岡市が2019~23年(23年は1月18日まで)にかけて発注した建設工事の入札状況をまとめた。その結果、19~22年にかけて、入札不調(以下、不調)の件数が増加傾向にあることを伝えたが、23年の年間の結果を合わせても、増加傾向に変化はなかった。
不調件数の増加の背景にあるのは市の提示する「予定価格の低さ」、そして事業者側の「人手不足」だ。23年の不調件数は、それまで最多だった22年の142件(不調発生率約7%)を上回る、179件(約8%)となった(福岡市契約情報参照)。不調発生率は1割未満に抑えられてはいるものの、横ならびで増加する入札件数と不調件数からは、建築資材価格や労務単価が高止まりするなか、市が提示する予定価格と事業者が想定する適正価格との間に依然として乖離があることを示唆している。この価格差が埋まらない限り、事業者が限られた人手を優先して市の発注工事に回すとは考え難い。
とくに不調件数が多いのが、土木工事と建築工事。市が23年に発注した土木工事の不調件数は70件を超え、建築工事は30件を超えた。どちらも不調発生率は1割を超えている。また、電気工事における不調件数の増加も目立った。19~21年までは片手で数えられる程度の件数だったが、22年に16件まで増加し、23年には20件を超えた。第1種、2種電気工事士ともに人手不足が顕在化し始めており、今後官民双方で関連する開発計画の停滞を招く恐れがある。
入札の実施前に“中止”となるケースも散見される。24年(6月27日までの数字)において不調件数の多い、土木・建築・電気工事の3工種について見てみると、土木・建築では中止は0件だが、電気工事は3件発生している。市によれば、中止理由は3件すべてが市の提示した予定価格では施工困難として、事業者が入札への参加を辞退したことによる不調だ。市は設計見直しとそれにともなう予定価格の変更を行ったうえで、再度発注を予定している。
予定価格には過去の工事で実際に支払った労務単価や資材価格などの、実態調査の結果が反映される。実態調査の結果から平均値・最頻値を算出して、その値を反映することで、工事にかかる標準的な価格として定められたものが予定価格である。
しかし、人手不足から労務単価は高騰を続けているほか、地域や資格の有無、熟練度によっても変わるため、そもそも標準的な価格を割り出しにくい状況にある。資材価格も諸外国の情勢や円安など、複合的な要因で高騰を続けているほか、取引業者間の関係性や交渉によって変動するため労務単価と状況は同じだ。また、建築工事に関しては工事費概算書を作成する設計事務所によるところも大きい。
予定価格の設定には不確定要素が多い分、各地方自治体は“意向”を組み込みやすいともいえるが、不調が増加傾向で推移している福岡市においては、見直しの必要があるといえる。予定価格は市況に応じて柔軟に変動し続けることが理想的であり、公共工事の円滑な施工確保を実現するためにも、以前述べた通り、予定価格=標準価格という考え方からの脱却が求められている。
懸念される落札後辞退の増加
予定価格の低さは改善の余地があるが、人手不足の解消に特効薬はない。少子高齢化をともなう人口減少が避けられない日本において、3K(きつい・汚い・危険)のイメージが根強く残る建設業界は人材確保にとりわけ苦戦を強いられている。国土交通省は「給与」が高い、「休暇」が取れる、「希望」をもてる、の新3Kを打ち出している。建設業界の枠を超え、異業種と比較しても見劣りしない給与水準、充実した福利厚生を提示している事業者もいるが、数は決して多くはない。
人手不足が深刻さを増すなかで、福岡市の発注工事において、落札後に事業者が辞退するケースも出てきている。21~24年(6月14日まで)の間に、落札後、人手不足を理由に事業者が辞退した事例は──
※この記事は7月8日発刊の当社有料会員向け情報誌『I・B』に掲載した記事から一部を抜粋したものです。全文を読むには有料会員への申し込みが必要となります。
【代源太朗】
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