2024年07月16日( 火 )

元弁護士・清田知孝被告裁判、第4回公判、被害者Cとの関係と被害金の謎

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 11日午後、福岡県弁護士会に所属していた元弁護士・清田知孝被告の横領事件に関する第4回公判が福岡地裁で行われた。

 事件は清田被告が弁護士であった当時、依頼人の預り金等を横領していたとして起訴されたもの。現在3つの事件について併合審理が行われている。今回の第4回公判では、3つ目の事件に関する被告人尋問が行われた。

3つ目の事件
 2021年9月頃、清田被告は被害者Cが経営する会社、F社の債務整理と売掛金500万円の回収の依頼を受任した。同年10月に清田被告が代表を務めるリーガルジャパン法律事務所の口座に、回収した売掛金368万円余りの振り込みを受けた。しかし、清田被告は、29日と31日に口座から200万円を引き出して、のめりこんでいた競艇のテレボート(インターネットによる舟券購入サービス)の支払いに充てるなどした。また、11月1日にも同じく150万円を引き出して、被告人が弁護人を務める依頼人の保釈保証金に充てるなどし、その他にも16万円余りを引き出して、法律事務所の家賃の支払いに充てたとされる。

被告人と被害者Cとの関係(弁護人尋問より)

 清田被告はネイビーのスーツで出廷。被告人は尋問に先立ち改めて起訴事実を認めた。

 被告人は被害者Cとライオンズクラブで知り合う。プライベートで親しく付き合うようになり、Cの会社の顧問弁護士となった。Cは羽振りが良く、当初、被告人はCの会社の経営がうまくいっているものと思っていたが、不動産プロジェクトへの参加を誘われてから、必ずしも経営がうまくいっていないことに気が付いた。

 Cが進める不動産プロジェクトは神戸の土地造成事業で、被告人はCからプロジェクトへの参加を誘われた。弁護士として契約書の確認などにかかわったが、資金面でも1,000万円を出資した。また、被告人はCの頼みで被告人の知人へも出資を依頼した。しかし、知人は出資を拒否した。

 不動産プロジェクトについては売買契約までこぎつけたが、Cが資金を準備できずに契約は頓挫した。これがきっかけとなり、Cの会社は資金繰りに行き詰まり、Cは会社の債務整理について被告人に相談した。

受任から横領へ(弁護人尋問より)

 21年9月、被告人はCの会社の債務整理を受任した。

 同年10月29日、Cの会社の未回収売掛金について、3社から合わせて368万円余りを被告人が代表を務める法律事務所の口座に振り込みを受けた。

 同日、被告人は預り金368万円のうち100万円を引き出した。

 30日、引き出した金額を50万円と43万円の2回に分けてテレボート(インターネットによる舟券購入サービス)に使用した。残り7万円は何に使用したか詳細不明。

 31日、預り金から50万円ずつを2回引き出してテレボートに使用した。

 11月1日、2回に分けて合計150万円を引き出し、保釈保証金の穴埋めに利用した。
 預り金の残金のうち16万5,000円は事務所賃料にあてた。

 被告人はCの会社の債権者に受任通知を送付したり、主要取引銀行に連絡をしたりしたものの、その後、債務整理は遅滞し、被告人が福岡県弁護士会から業務停止処分を受けたことによって事実上放棄された。

 Cから被告人に対して説明を求める連絡が何度かあったが、被告人は無視することなどを繰り返していた。Cとは家族ぐるみで付き合いもさせてもらっており、このようなことになってしまって申し訳ないと思っている。

 被告人は現在Cに対して示談を申し入れ中で、すでに300万円を入金している。お金を工面して弁済し、Cに謝罪したい。

なぜ同じ過ちを繰り返したのか?(検察官尋問)

 検察官:被告人が横領を行った21年10月は、1つ目の起訴事件の被害者Aに対して、食事の席で横領の事実を打ち明けた時期にあたる。被告人はAに対して強い罪悪感を感じたと証言していたが、なぜその月末に同じ横領を繰り返してしまったのか?

 被告人:Cの不動産プロジェクトに出資した1,000万円がまだ返金されていなかったことなどもあって…
 (記者注:出資金と相殺できると思ったということか?)

 検察官:被告人は、弁護士という立場で多額の金を預かりながら、それを横領してしまった。その罪の重大さと社会的な影響の大きさを考えなかったのか?

 被告人:社会的な影響の大きさなどはとくに頭にはなかった。

 検察官:被告人は1つ目の事件で被害者Aからの連絡を無視するなどしていたことを悪いことだったと反省していたはずだが、その後、Cに対しても同様の態度を取ることは悪いことだと思わなかったのか。被告人はCからの再三の連絡に対応しようとしなかったにもかかわらず、事件になってから示談の申し入れの連絡をしてきている。この身勝手さに対してCは怒っている。また、Cの債権者に対しても多大な迷惑をかけている。これらのことを理解できるか。

 被告人:大変申し訳なく思っており、自分と向き合って反省している。

 検察官:お金が欲しい人は世の中にたくさんいるが、どうして被告人は横領という罪を犯してまでお金を求めてしまったと思うか?

 被告人:現在、(ギャンブル依存症の治療のために)病院でグループカウンセリングを受けている。参加者8名のうち、法を犯したのは自分だけだった。当時の自分を振り返ると、収入で稼いで穴埋めをすればよいとか、バレなければ大丈夫などと、甘い考えで言い訳をしていた。周囲には先輩弁護士や事務員などもおらず、ブレーキがきかなかった。自分の弱さがあったと思う。

将来の仕事におけるお金の扱いについて(弁護人尋問より)

 被告人は、今後、弁護士として仕事をするつもりはない。また、お金を預かる仕事もするつもりはない。

記者注
 『元弁護士・清田知孝被告裁判、第3回公判(1)債務整理に関わる資産横領事件』で既報したが、6月25日に行われた第3回公判では、3つ目の事件について公訴事実の他にも、被害者Cには多額の被害金があることが触れられている。しかし、今回の公判では、公訴事実以外の被害金については「詳細は触れない」(弁護人)として尋問が進められた。

今後の公判予定

 第5回公判は、9月12日(木)午後2時30分~4時30分、情状証人による証言が行われる予定。912号法廷で開かれる。

【寺村朋輝】

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