2024年07月16日( 火 )

消えたNT9-中日新聞の謎

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「能登半島地震について報じた北陸中日新聞の記事から、志賀原子力発電所の至近距離にあるNT9の記述が消えた」ことについて論じた7月14日付の記事を紹介する。

北陸中日新聞が7月13日付紙面で「能登半島地震残る謎」と題する記事を掲載した。しかし、本当の謎はこの記事そのものである。本ブログ、メルマガで、能登半島の先端部分の西南から北西にかけての長大改定断層に関する専門家分析を何度も紹介してきた。

1月19日付記事
「無限大リスクの志賀原発」
https://x.gd/gt6ZU
「派閥解消より重要な原発解消」
https://foomii.com/00050
1月23日付記事
「旅行支援より被災者支援が先決」
https://x.gd/fTP8m
「2次避難遅れ主因は行政対応か」
https://foomii.com/00050

東京大学地震研究所は2013年に始まった「日本海地震・津波調査プロジェクト」で、日本海側の震源断層モデルを示していた。本年1月22日放送のNHK定時ニュースに東京大学地震研究所の佐竹健治教授が出演した。私は佐竹教授が提示した警告を1月19日付記事に記述していたが、その内容がニュースで報じられた。

佐竹教授らの研究グループが警鐘を鳴らすのはNT2からNT9(NT7を除く)の7つの活断層のうち、NT3とNT9が年初の能登半島地震でほとんど動いていないこと。いわゆる「割れ残り」で、研究グループは、今後、NT3とNT9の活断層が動き、マグニチュード7クラスの地震を発生させる可能性があることを警告した。

1月23日付記事に記述したのは、佐竹氏がNHKニュースで北陸電力志賀原子力発電所至近距離にあるNT9が動いて大地震を引き起こす可能性に警鐘を鳴らしたにもかかわらず、ネット上で配信される記事で、なぜかNT9が除外されていることだった。佐竹氏のグループは、本年初の能登半島地震の震源域と重なる7つの海底活断層について、今回の地震で観測された津波波形から断層がどの程度動いたかを解析した。

その結果、「珠洲沖セグメント」、「輪島沖セグメント」などと呼ばれる「NT4」、「NT5」、「NT6」の3つの活断層が大きく動いた一方、半島先端と佐渡島の間に位置する「NT3」と石川県志賀町近海の「NT9」の2つの活断層がほとんど動かなかったことを明らかにした。佐竹氏は今回の地震で動かなかった活断層が刺激を受けて動き、マグニチュード7クラスの地震を引き起こす可能性についての警戒を呼び掛けている。

ところが、インターネット上の記事では、動かなかった活断層のうちNT2とNT3だけを取り上げ、佐渡近辺の中越沖で強い地震が発生するリスクのみを強調するものが多かった。しかし、NHKニュース7で佐竹教授は、石川県志賀町近海のNT9が動く可能性を併せて指摘した。既述の通り、NT9は石川県志賀町に所在する北陸電力志賀原子力発電所に極めて近い。

7月13日付北陸中日新聞の考察記事「能登半島地震残る謎」の最大の謎は、紙面に掲載された活断層の所在を示す地図から「NT9」が消滅していること。「消えたNT9-北陸中日新聞の謎」の方がはるかに重大な謎である。

※続きは7月14日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「消えたNT9-中日新聞の謎」で。


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