トランプが副大統領候補に選んだ男の野心(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田和幸世界に衝撃が走りました。現地時間7月13日午後6時ごろに起きた、演説中のドナルド・トランプ前大統領を狙った暗殺未遂事件です。20歳の銃撃犯はその場で射殺されました。連邦捜査局(FBI)は彼をそのような行動に駆り立てた背景や裏で指示した黒幕の有無を捜査していますが、謎は解明されていません。
FBIは、トランプ前大統領が負傷したペンシルベニア州の選挙集会での銃撃事件の捜査を主導していますが、警備の責任は地元警察、FBI、そして大統領と元大統領の警護を担当するシークレットサービス(SS)の3者が分担していたため、責任の所在がはっきりしていません。しかも、暗殺未遂事件が発生したほぼ同時刻、バイデン大統領のジル夫人が同じペンシルベニア州で夫の代わりに遊説していました。
このことはあまり表立って報道されていませんが、ホワイトハウスのホームページには掲載されています。問題は、FBI、SS、地元警察のいずれにとっても、現職の大統領夫人の方が前職の大統領より警備対象としては格が上と位置づけられていることです。そのため、狙撃対策部隊を含め、警備隊の大半はジル夫人の身辺警備に振り向けられていました。
その結果、トランプ氏を狙うような狙撃犯が潜伏する可能性が最も高いと思われる演説会場傍の建物の屋上などが、事前に封鎖されるような対策の対象にならなかったことが判明しています。しかも、トランプ氏の身辺には身長の高い男性の警備員が配置されていましたが、他は背の低い男性と女性の警備員ばかりでした。
さらに、通行人がビルの屋上でライフル銃を構えている不審な男を見つけて警備員に通報していましたが、無視されていたことも不可解でした。要は、ジル夫人の警備に人を取られてしまい、トランプ氏の警備は二の次にされてしまったわけです。そうした不手際が重なったことを受け、トランプ氏の支持者からは「バイデンが仕組んだ事件だ」といった非難の声もSNSを中心に拡大しています。
じつは、アメリカでは現職の政治家を狙った脅迫や傷害事件は昨年だけで8,000件にも達しており、警察も手が回らない状況に陥っているのです。現在進行中の大統領選挙にはバイデン、トランプ両氏以外にも多くの立候補者が活動しています。なかでもロバート・ケネディ・ジュニア氏はケネディ家の看板を背負っているため、無所属での立候補ですが、じわじわと支持を広げています。
ところが、彼の陣営が要請しても、バイデン政権は身辺警備のSSの配置を拒否してきました。自らの対立候補には国家予算を使わないという嫌がらせの一種としか思えません。そのため、彼は自費でボディガードを雇っていました。
今回のトランプ氏の暗殺未遂事件の後、トランプ氏は狙撃された現場でガッツポーズを見せていましたが、病院に搬送された後には「俺は死んでいたかもしれない」と弱音を吐いたことも報道されています。
そんなトランプ氏は、「ケネディ・ジュニアも狙われているはずだ。彼にSSを付けないのは理不尽だろう」と対立候補への気遣いを見せました。そうした動きもあってか、バイデン政権はようやく重い腰を上げ、ケネディ・ジュニアへの身辺警備にSSを就けることを約束した模様です。
いずれにせよ、トランプ氏の暗殺未遂事件に関しては、容疑者の動機や背後関係が不明のままでは、再発の危険性も払しょくできそうにありません。あと半年を切った11月5日の大統領選挙ですが、まだまだ波乱含みで推移することになりそうです。
(つづく)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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