TSMC、時価総額でアジア1位に(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏AIブームで絶好調のTSMC
米中対立の激化によって、半導体の製造技術はビジネス面だけでなく、国の安全保障の面においても重要な武器となりつつある。そのような半導体技術と製造能力を確保するため、半導体をめぐって各国は激しく争っている。韓国はメモリ半導体市場では市場シェア6割超という1人勝ちの状態であるが、ロジック半導体の分野では世界シェアは2%台に過ぎず、微々たる存在である。
半導体の製造を大きく分けると、半導体を開発・設計する工程と、半導体を製造する工程がある。設計企業が半導体を開発・設計したら、それを受託して半導体を製造するビジネスを「ファウンドリビジネス」という。台湾のTSMC は「ファウンドリ」の世界最大手で、最先端半導体の製造において世界最強の企業である。
同社の名前は、半導体の関係者ならいざ知らず、一般人にはあまり知られていなかったが、AIブームなどで、最先端半導体が話題になればなるほど、同社の名前が一般にも知られるようになった。
7月10日、同社の上半期の実績が発表された。今年の上半期の売上高は、前年同期比26%増の1兆2,661億5,400万台湾ドルであった。また翌日の発表によると、同社の株価は史上最高値を記録し、同社の時価総額は28兆台湾ドル(約8,610億ドルに相当)でアジア1位だ。同社の株価は今年だけで47%上昇している。
3ナノの生産能力は昨年より3倍増加したにも関わらず、3ナノ半導体の供給は需要に追い付かず、需要を満たすため、TSMCは国内外に合計8カ所の工場建設を予定している。米国アリゾナ州に工場を建設しているが、第2の工場建設も予定していて、米国の3カ所の工場だけでも合計で650億ドルの投資が計画されている。その他に、熊本にも第2工場の建設、ドイツのドレスデンに車載半導体工場、それに、インド、メキシコなどでも工場建設についての協議をしているという。
時代を動かす企業になったTSMC
TSMCは自社ブランドなしにアップル・クアルコム・エヌビディアなど世界を代表するビッグ・テック企業が設計した半導体を受注して生産する。世界最強企業を顧客にしている同社は、ビジネスの性格上、一度関係を結ぶと関係が深くならざるを得ないので、顧客と密接な関係のなかで仕事をしている。
アップルの場合、同社製品の全量生産をTSMCに委託しており、アップルはTSMC生産全体の27%を占めるほど大事な顧客である。台湾は家電製品などの受託生産に強い国であるが、そのビジネスモデルを半導体に応用して、TSMCは世界を制覇するようになった。同社の報告書によると、535社の顧客に、291種類の技術を利用して、1万2,302種類の製品を製造しているという。
TSMCの創業者であるモリス・チャン(張忠謀)は、半導体産業は水平分業になることを見越して、30数年前にこのようなビジネスモデルをつくり上げたが、半導体の製造設備には莫大な投資が必要になることと、スマホの登場で半導体の旺盛な需要があったこと、またAIブームで高速処理が必要な最先端の高性能チップが求められていることなどが相まって、同社は大成功を収めている。同社は製造の下請ではなく、同社の技術なしでは最先端半導体は製造できないので、同社の成長はこれからも続きそうだ。
(つづく)
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