2024年11月24日( 日 )

傲慢経営者列伝(5):トヨタ・豊田会長「超お坊ちゃま」の「裸の王様」(前)

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 『裸の王様』は、アンデルセンの有名な童話である。ある国におしゃれな皇帝がいた。2人組の仕立屋が、「バカ者には見えない布地をつくることができる」という触れ込みでやってきた。皇帝は大金を払い、新しい衣装が完成した。家来は「布が見えない」といえず、大声で称賛する。皇帝はパレードで新しい衣装をお披露目する。1人の子どもが叫んだ。「なにも着ていない」──。トヨタ自動車の豊田章男会長は、現代の「裸の王様」である。

豊田会長「日本で頑張れない」発言が大炎上

 これが「傲慢」といわずしてなんなのか。大規模不正に揺れるトヨタ自動車の豊田章男会長から、また暴言が飛び出した。

 トヨタへの逆風が強まるなか、章男会長は、長野県茅野市の聖光寺で開かれた交通安全祈願の後、所感などを報道陣に語った。それを朝日新聞デジタル(7月18日付)が以下のように報じた。

 〈「(自動車業界が)日本から出ていけば大変になる。ただ今の日本は頑張ろうという気になれない」「ジャパンラブの私が日本脱出を考えているのは本当に危ない」と述べた〉

 さらに報道陣に「強い者をたたくのが使命と思っているかもしれないが、強い者が居なかったら国は成り立たない」と逆襲に出た。

 これが報じられると、X(旧・ツイッター)上で反発の声が殺到した。

 〈とっとと出て行けよ〉
 〈豊田章男の逆切れ自己正当化。ほんとうに滑稽だな〉

実像は「わがままなお坊ちゃま」

 光文社の写真週刊誌『Smart FLASH』(7月20日付)は、「日本で頑張る気が起きない」発言で批判が殺到した豊田章男会長について「わがままお坊ちゃん」と揶揄した。同誌では自動車ジャーナリストのこんな見方を伝えている。

 〈自社メディアの『トヨタイムズ』などを利用して、気さくな人間に見えるように演出していますが、章男氏の本来の姿は、”わがままなお坊ちゃん”そのものですからね。
 実父の章一郎氏が『章男を部下に持ちたい社員はトヨタにいない』と言って、入社に難色を示したことで、履歴書を出して一般社員として入社したことは美談として伝えられていますが、実は『部下に持ちたい社員はいない』という言葉は、そのまま字面通り章一郎氏の本音だったのだろうと言われています〉

 章男会長の逆切れ発言に、太鼓持ち幹部たちは「おかしいでしょう」といえず、「会長様のおっしゃる通り」と頭を垂れているのだろう。まさに「裸の王様」そのものだ。

章男氏の仰天語録:ぼくは「超お坊ちゃん」なんです

トヨタ自動車 イメージ「ぼくは『お坊ちゃん』と呼ばれていますけど、違うんです。『超お坊ちゃん』なんです」

 章男会長の有名な語録の1つだ。臆面もなく自らを「お坊ちゃん」と称する神経には驚かざるを得ない。裕福者、高貴の家に生まれた子を指し、「苦労知らずのお坊ちゃま」と揶揄する意味で使われる。

 では、「超お坊ちゃん」とは何か。「お坊ちゃん」を超えるもの。世間的な家柄とか、お金持ちを超えて、もっと高みにある者。そう王様とか皇帝といった存在だ。

 高みから下々を見下ろすのが殿下の流儀なのだ。それでは章男殿下が求めているものは何か。「人々の賞賛」である。殿下がおやりになったことは「神さまのようにすばらしいですね」と誉めてほしいのだ。

「老夫婦とロバの話」で何をやっても批判するマスコミを糾弾

 章男殿下の語録をもう1つひもといてみよう。トヨタ自動車の広報サイト「トヨタイムズ」に掲載された、20年6月の株主総会での章男社長(当時)の発言だ。株主の質問に答えて、「老夫婦とロバの話」をした。

 〈ロバを連れながら、夫婦2人が一緒に歩いていると、こう言われます。
「ロバがいるのに乗らないのか?」と。
 また、この人がロバに乗って、奥さまが歩いていると、こういわれるそうです。
「威張った旦那だ」
 奥さまがロバに乗って、ご主人が歩いていると、こういわれるそうです。
「あの旦那さんは奥さんに頭が上がらない」
 夫婦揃ってロバに乗っていると、こういわれるそうです。
「ロバがかわいそうだ」〉

 章男殿下は、何をやっても批判されるとマスコミを糾弾しているのである。

日本経済新聞を「出入り禁止」に

 章男殿下のマスコミ嫌いはつとに有名だ。とりわけ毛嫌いしているのが日本経済新聞で「出入り禁止」に近い措置が下されている。

 関係悪化の要因となったのは、20年5月12日付夕刊の見出しだとされる。

 〈トヨタ、今期8割減益〉サブに小さく〈営業利益5000億円〉。

 この見出しに、章男殿下は、コロナ禍でも5,000億円の利益を出したことを評価すべきなのに、マイナス面が強調されていると立腹したのが発端。以来、露骨な”日経外し”が行われ、提灯記事しか載せない新聞やテレビしか寄せ付けない。

 自分を批判することを絶対に許さないのが、「超お坊ちゃま」の流儀なのだ。

(つづく)

【森村和男】

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(後)

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