肥薩おれんじ鉄道の現状と展望(前)
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運輸評論家 堀内重人
(株)肥薩おれんじ鉄道は、熊本県と鹿児島県を跨って走行する第三セクター方式の鉄道会社で、沿線自治体およびJR貨物が出資している。九州新幹線開業にともなう、並行在来線区間の八代~川内(せんだい)間を経営分離により開業したこともあり、厳しい経営が予想されるが、貨物列車の通行料収入に依存することなく、新たな活路を見出そうとする同鉄道の現状を紹介し、将来を展望していきたい。
肥薩おれんじ鉄道の発足
2004年3月に、九州新幹線の新八代~鹿児島中央間が暫定開業した。それにともない、それまで鹿児島本線であった八代~川内間が、JR九州から経営移管され、新たに第三セクター鉄道の肥薩おれんじ鉄道を設立して、経営が移管された。
新幹線開業にともない、経営分離して誕生したほかの第三セクター鉄道は、県境で分断され、単一県内で運営するのが、一般的である。それに対し、肥薩おれんじ鉄道は、本社は熊本県八代市だが、熊本県と鹿児島県に跨っている。これは鹿児島県内に車両基地を確保するための敷地が確保できなかったことに起因しているという。なお、運行の本部は、鹿児島県出水(いずみ)市にある。
1991年に熊本県と鹿児島県は、新幹線開業後の鹿児島本線・八代~川内間をJR九州から経営分離し、第三セクター鉄道として運営することで合意、2000年に両県は具体的な検討を開始した。すると収支予測は、熊本県内の区間は、水俣市などの都市があるため、赤字経営にはなるが、鹿児島県内の区間と比較すれば、経営状態が良いことが分かった。
反対に鹿児島県内の区間は、県境に出水(いずみ)市はあるが、そこから川内市(現・薩摩川内市)まで大きな都市がないことから、非常に厳しい経営が予想された。このため熊本県側は「熊本県内の収入で鹿児島の不採算を内部補助するのは、望ましくない」と主張した。
一方の鹿児島県側は、「鹿児島県の区間は、単独では経営は成り立たない」と主張し、議論は2年間も平行線をたどったが、02年2月に熊本県と鹿児島県が合意した。合意の内容は、以下のような内容である。
(1)第三セクター会社を合同で設立する。
(2)出資および初期投資の負担は両県で1対1とする
(3)赤字が発生した場合には、両県区間の実績を把握し、区間の状況に応じて対応する01年12月にJR東日本から経営分離された盛岡~青森間は、県境でIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に経営が分離されたが、青い森鉄道はIGRいわて銀河鉄道よりも、経営状態が厳しいことから、上下分離経営が採用され、インフラは青森県が所有することになる。
鹿児島本線の八代~川内間も、県境で2つの第三セクター鉄道が誕生し、経営状態がとくに厳しい鹿児島県側は、上下分離経営が実施される危険性があった。最終的には、熊本県と鹿児島県に跨りはするものの、八代~川内間で肥薩おれんじ鉄道という、1つの第三セクター鉄道が、02年10月31日に設立された。
(つづく)
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