2024年08月30日( 金 )

住宅街に大型マンション 近隣住民に聞く「開発の影響」

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小笹団地跡マンション建設予定地
小笹団地跡マンション建設予定地

 現在、小笹団地跡(福岡市中央区小笹)では、(株)えんホールディングスによる分譲マンション・エンクレストガーデン福岡(総戸数364戸、2025年12月竣工予定)が建設中だ。筆者は建設地の目と鼻の先のマンションに住んでいるのだが、エンクレストガーデン福岡の開発によって、周辺の生活環境には小さくない影響が生まれ始めた。筆者の体験と近隣住民へのインタビューから、近隣に大型マンションが建つことで何が変わったのかレポートする。

近隣説明会

 福岡市では「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例」により、建築主などに標識の設置や計画概要等の事前説明などを義務づけるとともに、市による調整や調停委員会による調停制度を設け、建築紛争の予防や調整に努めている。周辺住民として、大規模な工事にはやはり不安を抱くため、筆者もこの説明会に参加した。

 複数回行われた説明会では、工事の内容、工事期間、隣接部の問題などを詳しく説明され、意見交換も行われた。不思議なもので、人は説明を聞けば不安が軽減する。トラックなど工事車両が通るため、軽微な騒音はある程度発生するが、初期の基礎工事のときくらいしか大きな音はなく、深刻な騒音は感じなかった。

道路の拡幅工事

 近隣にひらがなの「ひ」のような複雑な形状の道があった。小笹団地が完成した直後の航空写真(1975年当時)でも確認できる。

1975年小笹エリアの航空写真(国土地理院所蔵)
1975年小笹エリアの航空写真(国土地理院所蔵)

 運転はヘアピンカーブよりも難しいうえに道幅が狭く、対向車がきた場合はすれ違うこともままならないという不便さがあった。

周辺道路の拡幅工事
周辺道路の拡幅工事

    大型マンション・エンクレストガーデン福岡の建設工事が進むなかで、周辺の道路などについても整備が行われた。道に面したある家は、勝手に車庫に入られたりもしていたようだ。「これまでは、車庫に知らない車が入ってきたりして嫌な思いをすることがあったし、車庫の門を締めると車がぶつかって門が壊されたこともあった。道幅が広がるとうちの車庫に車が入って来ることもなくなり、喜んでいる」(60代男性)。

消防車が来た時の例
消防車が来た時の例

    「住んでいるマンションまで3方向からアクセス可能だが、1方向は狭くて消防車が入って来ることもできなかった。もう1方向もマンション前で直角に曲がらないと建物近くまで来られないので、大型のハシゴ車は1方向からしか入って来られなかった。道自体が傾斜しているので、宅配便のトラックなども方向転換する際に車の底が地面に接触して亀状態になるのを見たこともある。安全で安心に住めるように道が広がったのはありがたい。つい最近、近所に消防車が来ることがあったけど、3台も4台も来るので道幅と広い場所は必要だと思った」(80代男性)。

公園への通路と排水溝整備など

 「エンクレストガーデン福岡は、小笹中央公園への通り道をつくるという。周辺住民も通っていいとのことだったので、バス停までの距離が短くなって出勤のときに助かる」(40代男性)。

 「道を広げたら、その分カーブミラーと(マンション所有の)壁が邪魔になった。(マンションの理事会と話し合ったうえで)壁を切って通りやすくしてくれたり、カーブミラーを移設してくれたり、マンション側の立場に寄り添って工事をしてくれました」(60代男性)。

拡幅工事後の道路
拡幅工事後の道路

 「住んでいるマンションが坂の下の方にあるので、大雨のときには排水が溢れてエントランスや駐輪場に水が流れ込んでいた。マンション新築工事では、排水溝の整備も同時に進めていただいたようで、心配が1つ減った」(40代男性)。

筆者の所感

 新しいマンションが建つと、そこに新しい組合ができる。これまでは何もないけれど、今後何らかのトラブルが起きた際に、協力して解決できるように関係をつくっておきたいところ。しかし、まだ存在しない組織とは話し合いもできない。そこで、お互いの管理会社を交え、双方の理事会の顔つなぎを依頼した。ひと家族ならば蕎麦やタオルをもって挨拶に行ってもいいのだろうが、マンション単位となるとそうはいかない。今回のエンクレストガーデン福岡は364世帯が入居予定とのこと。お互いを知らないからこそ起きるトラブルもあるだろうから、事前にコミュニケーションを図ることで、お互い快適に過ごせるのではないかと期待している。

【外部ライター・奥野晃市】

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