2024年12月22日( 日 )

オーダーメイドの現場力にみる組織づくり 「社員が誇れる会社」までの14年間

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有澤建設(株)

 有澤建設(株)は、今年創業108年目を迎えた。現社長・木下氏が社長に就任した2010年8月期に18億円だった同社の売上高は、13年8月期には28億円、16年8月期には56億円にまで増加。その後は安定して50億円以上の売上高を計上する体制となった。24年8月期は80億円を大きく上回る見通しの同社ではこれまで、組織力強化のためにいくつもの方策を打ってきた。

制限をむしろ特長へ 有澤建設の現場力

木下英資代表
木下英資代表

    「品質へのこだわり」「安心・安全へのこだわり」「地元へのこだわり」をモットーに掲げ、今年創業108年目を迎えた有澤建設(株)の強みは、幅広い用途の建築物を毎年のように竣工できる設計・施工力だ。

 同社の代表取締役社長・木下英資氏は、こうしたオーダーメイドに関する強みについて、次のように話す。「敷地の形状や方角、法令上の制限など、物件ごとに異なる条件を生かした提案を心がけています。工夫することで、制限がむしろ特長となる可能性もあります。もちろん、請負の範疇を超えないよう気をつけていますが、お客さまの求めるものをかたちにできるように、設計や工務はもちろん、営業や事務スタッフ全員で知恵を出し合っています」。

100年企業の6代目社長 世襲ではなく社内から

 2010年、40歳で有澤建設の5代目社長に就任した木下氏は、「(有澤建設の)20~30年後の道筋をつけるのが私の役目」といい、すでに次期社長の指名準備に取りかかっている。「6代目となる次期社長は、世襲ではなく社内から選ぶ予定です。そのために、社内体制を整え、強くするために権限移譲を進めてきました。私が現役で次期社長をバックアップできる年齢のうちに社長を譲り、有澤建設を継続発展させていければ」と続ける。

有澤建設(株) 本社ビル
本社ビル

    権限委譲に加え、ボトムアップの社風醸成のために取り組むのが、学生との連携プロジェクトだ。地域の課題を考えた高校生が、地域に根付いた企業を訪問し解決策を探すという、探求型フィールドスタディが高校の授業として行われているが、有澤建設は受け入れ企業として20年から参加。これまで多くの地元校を受け入れ、建設業のサプライチェーンに関する座学だけでなく、実際の工事現場を現場監督の解説付きで見学するなどの取り組みを続けてきた。

 マンションリノベーション研修では、平尾地区の管理物件を対象に、学生と有澤建設選抜メンバーがリノベーションの提案を行ったほか、地元大学からインターンシップを受け入れ、現場体験や竣工物件めぐり、営業の企画提案から受注、着工の流れを説明するなど、学生たちとの接点づくりにも余念がない。「学生ならではのフレッシュな発想は、社員たちに良い刺激を与えてくれています。基本的に私は報告を受けるだけで口を挟まないようにしており、それが学生や社員たちの成長につながると考えています」(木下社長)と人材育成への期待も込める。

柔軟な現場管理を可能にする現場員のコミュニケーション能力

 24年8月期、有澤建設の売上高は80億円を大きく超える見通しで、木下社長が社長に就任した当時と比較して、売上高は4倍近くまで増加した。業界環境の好転による影響も大きいものの、それをかたちにしたのは、これまで行ってきた組織強化の賜物だろう。

 「ありがたいことに、お客さまやお取引先さまからの紹介案件が受注の多くを占めるようになってきました」と木下社長は話し、とくに評価が高いのは現場員のコミュニケーション能力の高さ。「図面通り」「最初に決めたスケジュール通り」ではなく、「可能な限り顧客の要望に寄り添って、いい建物をつくろう」という意識が社内に浸透しており、オーダーメイドに強みがある同社ならではの柔軟な現場管理を可能にしている。

 こういった柔軟な現場管理には、協力会社との連携が欠かせないが、「毎日の工程管理をしっかりとしてくれる」「同じ立ち位置で接してくれるので本音で話ができる」といった声が協力会社からは挙がっており、施主だけでなく協力会社との信頼関係構築にも気を配っている様子がうかがえる。

人手不足のなかでの組織づくり 安心して定年まで働ける環境へ

有澤建設(株)    建設業界の人手不足は解消のメドが立っておらず、24年4月からは時間外労働の上限規制をはじめとした「働き方改革関連法」の適用もスタートした。かつて建設業界では、長時間労働で経験を積んで、短期間で一人前に育てることが可能だった。当たり前だが、現代の人材教育においてそこに期待することはナンセンスで、時間がかかることは周知の事実となって久しい。

 この点について木下社長は、「人材育成にコストがよりかかるようになっていますが、人手不足のなかで組織をつくり、育てるためには欠かせないものだと思っています。育成の仕組みを整え、現在20代30代の社員が安心して定年まで働くことができる環境を整えることも、私の責任です。社員が誇れる会社にしたい。そのために、社長就任から14年、組織づくりに力を入れてきたつもりです」と力強い。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下英資
所在地:福岡市博多区博多駅南4-4-12
設 立:1967年9月
資本金:9,000万円
TEL:092-433-1811
URL:https://arisawa.jp

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