2024年12月22日( 日 )

物流を通じ糸島の魅力を全国に発信 「地域とともに成長していきたい」

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(株)イトキュー

 (株)イトキューは、福岡県糸島市に本社を構え、地元・糸島市をはじめとした九州一円の花卉・農産物などの運送事業のほか、物流センター事業、観光バス事業を手がけている。2025年1月に創立50周年を迎える同社の今後の成長戦略はいかに。

ドライバーの離職率低下を目指す取り組み

 拠点を置く糸島市をはじめ、九州一円の花卉および野菜などの農産物・生鮮物の運送事業を手がける(株)イトキュー。九州各地の農家や農協が荷主となり、関西および関東の市場にこれらの商品を輸送している。

 物流事業をめぐっては今年、大きな動きがあった。4月からトラック運転手の残業時間の上限が年間960時間に規制されたのだ。運送業界ではこれによる配送の遅れやドライバー不足などが懸念されている。いわゆる「2024年問題」だ。「工業製品などと異なり、我々が扱う商品は鮮度が命、まさに時間との戦いです」(中原理臣代表取締役社長)。

中原理臣代表
中原理臣代表

    「2024年問題」に関しては、関東や関西、中部圏の同業者と九州の同業者では捉え方が多少異なると中原代表は語る。「東京・大阪・名古屋の物流圏はおおよそ6時間圏内です。東京~大阪は6時間、東京~名古屋だと3時間、名古屋~大阪だと2時間から2時間半ほどしかかかりませんので、九州の事業者ほど深刻な問題だと捉えられていないのでしょう。九州から大阪に行くには最低9時間は必要です。地方の状況を考慮せずに日本全国ひとくくりにされているのも大きな問題だと思います」。

 解決策として同社が取り組んでいるのは、「ドライバーの補充」よりも「いかにドライバーの離職率を下げるか」という戦略だ。具体的には定年の延長や、ベテランになって体力が落ちても対応できる業務内容にシフトする作業環境の整理など。こうした取り組みが徐々に離職率の低下につながっているという。

事業者間の協力関係をこれまで以上に強固なものに

 2025年1月に設立50周年を迎える同社。中原代表は、今後の事業展望について「既存の顧客をこれまで以上に大事にしていくことが大前提です」としたうえで、「事業者間の協力関係をより強固にしていく必要があると思っています」と述べる。たとえば、自社で各拠点に営業所を設けてそこでドライバーを雇おうと考えても、慢性的なドライバー不足が続く現状では維持することが難しい。そこで各地方の事業者と連携してリレー輸送することで、スムーズな輸送を可能にするのだ。

 さらに中原代表は、作業効率化の徹底も重要だと語る。「輸送時間は短縮できません。ただ、荷揚げ・荷下ろしなどの作業をフォークリフトなどでやれば、大幅に時間を短縮することができます。荷主と受け先の協力が必要不可欠ですが、検討する価値は大いにあると思います」。

業界全体で助け合い難局を乗り越える

 中原代表は父である先代からバトンを受け、11年に社長に就任。観光バス事業など新たな取り組みもスタートさせ、九州一円および西日本エリアのバス旅を提供している。また、アビスパ福岡とライジングゼファーフクオカの選手送迎バスも運行しており、試合のない日などは、ファンサービスの一環として幼稚園などへの貸し出しも行って大変喜ばれているという。

園児に公開されたアビスパの選手送迎バス
園児に公開されたアビスパの選手送迎バス

    「事業だけを受け継ぐのではなく、同時に父の想いも受け継いだつもりです」(中原代表)。同社のケースはスムーズに事業承継が行われている好例だといえるが、同業他社をみると必ずしもそうではないケースが散見される。事業承継のメリットがない、後継者がいないなどが主な理由だ。イトキューではそうした事業承継に頭を悩ませている地元企業があれば、いつでも相談に乗るというスタンスをもっており、皆で助け合って地域の物流業界を盛り上げ、難局を乗り越えたいと考えているという。

創業の地・糸島への想い 糸島の魅力向上に貢献

糸島を拠点として事業を展開してきた同社。中原代表に、活動エリアを広げる考えなどはあるのか。「父の時代から現在まで糸島の花・農産物を全国にお届けしてきました。今後もそれは変わらず、我々の使命だと思っております」(中原代表)。

 「もっと売上を伸ばしたい、活動エリアを広げたいなどの理由で、たとえば福岡市に本社を移転するといった考えはありません。物流を通じて地域を守り続け、その結果として成長していけたらと考えています」(同)。その言葉の端々ににじむのは純粋な「糸島愛」だ。これからも糸島の花や農産物の魅力を全国に届けたいという思いが揺らぐことはない。

 そうした糸島愛は、同社のトラックからも見て取れる。トラックには糸島の農産物の写真がラッピングされ、「きっと満足 糸島生活」というメッセージが掲げられている。中原代表は「糸島への恩返しになればという思いで、こうしたラッピングを施しました」と語る。

ラッピングが施されたトラック
ラッピングが施されたトラック

 実際、東京の市場では「糸島のトラックがきた!」と興奮した面持ちでいわれることが多々あり「こういう言葉をかけてもらえるとドライバーも励みになるし、我々も『やって良かった』と思えます」(中原代表)。東京の市場での反応は糸島ブランドが全国に認知されている何よりの証拠でもあり、それに対する同社の貢献度の高さをうかがい知ることができる。

 創業の地である糸島に根付き、物流を通じて糸島の魅力を全国に発信し続けている同社。糸島ブランドのさらなる魅力向上に同社がはたす役割は、今後さらに増していくことだろう。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中原理臣
所在地:福岡県糸島市多久819-1
設 立:1975年1月
資本金:1,500万円
TEL:092-322-1741
URL:https://itokyu.com

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