2024年09月13日( 金 )

元弁護士・清田知孝被告裁判、第5回公判、情状証人出廷 家族として事件の認識を語る

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 清田知孝被告は弁護士であった当時、依頼人の預り金等を横領していたとして逮捕・起訴された。現在3つの事件について併合審理が行われている。

 12日午後、福岡県弁護士会に所属していた元弁護士・清田知孝被告(以下、清田)の横領事件に関する第5回公判が福岡地裁で行われた。

 今回の公判では、清田と10年以上生活を共にしている内縁の妻Aが情状証人として出廷した。Aに対して弁護人と検察官から尋問が行われた。

弁護人尋問

 弁護人:今の生活状況は。
 A:私が仕事を増やして生計を立てている。しかし自分の働きだけでは生活費が足りないため、自分の貯金を切り崩して生活している。また、自宅は税金の滞納で国税の差し押さえにあっており、引っ越さねばならない。

 弁護人:清田がお金の問題を抱えていることは知っていたか。
 A:清田とは従来から仕事やお金の話は一切しておらず、清田が問題を抱えていることを知らなかった。

 弁護人:清田にお金をめぐる問題があることをいつ知ったか。
 A:以前は生活費を貰っていたのでお金をめぐる問題を抱えているとはまったく知らなかったが、2022年9月に国税局がきて清田に税金の滞納があることを知った。そのときに、まずはしっかり納税をしなくてはいけないということで、それ以来、清田から生活費は貰っていない。

 弁護人:その後、清田は逮捕されることになるが、警察の捜査がおよんでいることは知っていたか。
 A:私自身も警察から事情聴取を受けたので知っていた。その後、清田が実際に逮捕されて、依頼人のお金を横領していたことを知った。

 弁護人:そのことを知った時どのような気持ちになったか。
 A:驚くとともに、清田に対して怒りと情けない気持ちになった。しかし、(事情に気づけなかった)自分自身に対しても同様の気持ちが起こった。

 弁護人:事件を起こした清田に対してどのような考えをもっているか。
 A:被害者に対して償っていって欲しい。

 弁護人:今、一緒に生活している清田の様子はどうか。
 A:清田は被害弁済のために日中仕事をしている。私が生活費のために仕事の時間を増やしているので、今は清田が家事もしている。清田は以前はまったく家事をしていなかったが、今は食事の準備から掃除などに至るまで、家事全般を清田が行うようになった。

 弁護人:もし判決で執行猶予が付いた場合、清田をどのように監督するか。
 A:今後、清田は弁護士業を行うことはないと思うが、清田の預金は私が管理するようにする。また、今まで仕事について詳しく話をすることはなかったが、これからは仕事についてもコミュニケーションをとるようにしたい。

 弁護人:もし清田の行動に不審な点がある場合は、まず私に相談してほしい。私も共に清田の監視を行う。

検察官尋問

 検察官:Aは清田の仕事上のお金のことについてまったく感知していなかったというが、何か聞くことができない事情があったのか。
 A:親しきなかにも礼儀ありではないけれど、そこのところは明確に線引きをしていて、(仕事上のことやお金のことは)それまで尋ねることはなかった。

 検察官:22年に国税から指摘された税金の滞納額は4,000万円になるが、税金の滞納金額を聞いたとき、その莫大なお金を何に使ったのか清田に聞いたか。
 A:清田から「別の自分のことに使った」と聞いた。しかし、別のこととは何かは聞いていない。

 検察官:なぜ詳しく聞かなかったのか。
 A:知るのが怖かったからかもしれない。

検察官:長く暮らしをともにしているのに、そのような問題に至るまで、清田から相談はなかったか。
 A:不安を抱えていることなどについて一切相談はなかった。もっと突っ込んで色んなことを話していればよかった。

 検察官:清田が実刑判決を受けた場合はどうするか。
 A:まだそこまで考え切れていない。

 検察官:Aの親族から引っ越しの費用などについて援助を受けたとのことだが、被害金の弁済について援助を受けることはできないのか。
 A:相談はしたものの、そこまでお金に余裕があるわけではなく弁済の援助までは難しいと断られた。

弁護人の再尋問

 弁護人:清田がよく中洲で飲むことにお金を使っていることは知っていたか。
 A:そのことは知っていた。

 弁護人:清田は決して人に自分の弱みを見せる人間ではなく、最後になって自分の所に依頼してきたような状況だが、Aも清田の性格についてそのように理解しているか。
 A:はい、そのように理解しています。

公訴事件外の被害者からの嘆願書

 公判では情状証人の尋問に先立って、弁護側から新しい証拠の提出があった。

 そのうちの1つは、公訴事件とは別に清田から預り金の横領を受けた被害者らによる嘆願書だった。嘆願書の概要としては、清田が分割による被害金の弁済に同意したことと、もし清田が実刑判決を受けた場合は被害金の弁済が滞る可能性があるとして、清田への実刑判決を求めない旨がしるされていることが弁護人から説明された。

今後の公判予定

 次回、第6回公判では、清田の身元保証人であり、判決が執行猶予付きとなった場合に清田を雇用する予定の企業の社長が、情状証人として出廷予定となっている。

 公判予定は、11月1日(金)午前10時~11時30分、912号法廷で開かれる。この公判で結審となる。

傍聴記者補注

 本件事件は、清田が横領金の多くをテレボート(インターネットによる舟券購入サービス)につぎ込んでおり、清田のギャンブル依存症が大きな要因にあったと考えられる。この点を明らかにするには、家族が清田のギャンブルについて認知していたかが重要な問題であるが、今回の情状証人尋問では、弁護人、検察官いずれからもギャンブルについての言及は一言もなく、またその件に関する情状証人への質問もまったくなかった。

【寺村朋輝】

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