2024年10月03日( 木 )

建設業で死亡者数が増加傾向、熱中症対策がより重要に

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ
午後8時近くまで施工が行われる新築住宅の現場
午後8時近くまで施工が行われる新築住宅の現場

5カ月連続で前年比増

 建設業で死亡事故者数が増加している。とくに気温が上昇した5月以降に増加していることから、現場作業を行う人たちが熱中症に罹り、高所から転倒・転落したなどといったことが主な要因になっていると見られる。来年以降も夏季は高温のなかでの作業を強いられるに違いない。より高度な対策や工夫が求められている状況だ。

 厚生労働省がまとめた「令和6年における労働災害発生状況について(9月速報値)」(2024年1月1日から8月31日までの累計)によると、全体(製造業、建設業、林業、陸上貨物運送事業、第三次産業)の死亡者数は437人で、前年同期比6人増(同1.7%増)となったことがわかった。このうち建設業の死亡者数は137人と全業種で最多となり、前年同期比9人増(同7.0%増)だった。建設業では今年5月から5カ月連続で前年比増となっており、今夏の猛暑が影響しているものと見られる。

 死亡者数が多いのは、建設業に次いで第三次産業、製造業、陸上貨物運送事業、林業の順だった。事故の型別発生状況では、「墜落・転落」が114人で最多となり、前年同期比6人増(同5.6%増)となっていた。次いで「はさまれ・巻き込まれ」「交通事故(道路)」「激突され」「飛来・落下」「崩壊・倒壊」の順で続く。トップの「墜落・転落」は高所作業が多い建設業で多い事故だ。

2023年1月1日から8月31日までに発生した労働災害について、24年9月9日までに報告があったものを集計したもの(厚生労働省ホームページより抜粋)
2023年1月1日から8月31日までに発生した労働災害について、
24年9月9日までに報告があったものを集計したもの
(厚生労働省ホームページより抜粋)

現場の猛暑対策

 猛暑による死傷事故を防ぐため、より一層踏み込んだ猛暑対策、熱中症対策を進める動きも見られ始めた。最も象徴的なのが、「空調服」の導入。ファンで服のなかの空気を循環させることで、汗の蒸発を助け、気化熱によって涼しさを感じられるため、作業効率の向上が見込めるものだ。「これがないと仕事ができない」と語る作業者もいるほど、夏場の必須アイテムとなっている。このほか、扇風機や冷風扇、製氷機を現場に設置するといった動きも見られるようになった。

夏場の現場作業で必須アイテムとなった空調服を着て作業に臨む人たち
夏場の現場作業で必須アイテムとなった
空調服を着て作業に臨む人たち

    福岡市内のある新築住宅の施工現場では、始業を午前7時に早め、最も気温が高い日中は休憩を取り、午後8時頃まで作業をしている様子も見られた。現場で作業をする人に確認したところ、これも暑さ対策の1つなのだという。別のある福岡のゼネコン関係者は、「夏場の暑さ対策は建設業にとって重要な経営課題となっている。ただでさえ、現場作業員の確保が難しくなっているなかで、夏場の作業環境の整備は今後の人材確保にも影響するからだ」と話している。

 死亡者数と併せて発表された「休業4日以上の死傷者数」は、7万7,251人で前年同期比1,120人増(同1.5%増)となったが、建設業に限れば7,991人で前年同期比228人減(同2.8%減)だった。事故の型別発生状況を見ると、「転倒」が2万880人で前年同期比190人(同0.9%増)。次いで「動作の反動・無理な動作」「墜落・転落」「はさまれ・巻き込まれ」「切れ・こすれ」「激突」の順となっていた。事故の発生件数の減少に加え、「墜落・転落」が3位にまで下がっているのは、前述のような対策の成果を表すものといえそうだ。

10月でも猛暑対策を

 ところで、気象庁は24年夏(6月から8月)の天候について、「1946年の統計開始以降、夏として西日本と沖縄・奄美では1位、東日本では1位タイの高温となった。また、日本の平均気温の基準値からの偏差は+1.76℃で、統計を開始した1898年以降の夏として、2023年の記録とならび、1位タイだった」としている。なお、福岡県では9月19日時点で環境省による「熱中症警戒アラート」が56回発出されるなど猛暑日が続いた。太宰府市は同日時点で61日目の猛暑日となり、福岡市では同日に最高気温38.0度を記録するなど、9月に入ってからも異常といえる高温の状況が継続している。

 福岡管区気象台が8月20日に発表した北部九州の「3カ月予報」(9~11月)によると、「9月と10月を中心に気温は高い」としており、平年並みになるのは11月を待たねばならないとしている。もうしばらくは高温の日々が続くことが予想されるわけで、継続的な熱中症対策が求められる状況だ。

【田中直輝】

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事