2024年11月21日( 木 )

西安の蔦屋書店、現地に馴染めず閉店へ(後)

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 今年の前半に北京でオープンした蔦屋書店も、似たような問題が起きている。

 店で、王さんという女性が新書のパッケージを店員に開けてもらおうとしたところ、「自分でやって」などと言われ、開けようとした際にうっかりとページを破ってしまった。そこで店員に、全額を賠償するよう言われたという。

 この件はネットで随分反響を呼んだ。王さんは、壊したものを弁償するのは当然だとする一方で、立ち読み用の本がないことに疑問を投げかけた。蔦屋は現在、中国に12店舗あり、すべてがフランチャイズ店である。このうち1号店である杭州店と、上海の上生新所と前灘太古里の計2カ所、西安店の計4店が「蔦屋書店」であり、それ以外は「TSUTAYABOOKSTORE」という。

 蔦屋は2020年に中国に上陸し、大型店100店と小型店1,000店の計1,100店を構える予定としている。

 今の状況を見ると、この計画はほぼ大型店舗のネットでの人気に依存しているように見え、日本のように街中に浸透させるにはまだかなりの道のりが必要と思われる。

 蔦屋書店の創業者である増田宗昭氏は立ち上げ当初、「生活スタイルの情報を提供する拠点」というコンセプトを掲げた。本を売るだけでなく生活スタイルを売ること、これが長期的な目標なのだった。

西安 イメージ 西安の蔦屋書店の背後には、邁科集団が存在している。公開情報によると、蔦屋を呼び寄せ、同社の子会社である蔦屋投資(上海)有限公司とともに店舗開設をはたしたのは、邁科投資控股の全額出資子会社である西安邁騏図書文化伝播である。邁科投資は1993年創立の陝西省地場の民間企業で、近代的物流やフィナンシャル事業などを主に手がけ、経営トップである何金碧氏の夫婦はともに何度も胡潤の中国長者番付にランクインしている。蔦屋は開店当初、邁科センターの重要なテナントであって、ビジネス上で文化全体を引き上げていく大切な存在であった。

 それぞれ思惑を抱えている中国のフランチャイズ経営者が、増田氏の長期主義を粘り強く徹底できるか、あるいは本当に「生活スタイルの提供者」という役割で中国の一般市民に浸透していけるかは、かなり疑問視せざるを得ない。

 蔦屋は結局、中国に馴染めなかったのである。

 西安の店では、夏場を迎えて割引セールを始めたことで売上も伸びたが、売れた後の本棚が空いたままで補充をしていない様子から、本当に閉まってしまうのか、との思いが出始めている。

(了)


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