2024年11月21日( 木 )

TSMC進出の幅広い波及効果~福商、玉山銀主催シンポ開催

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 福岡商工会議所と台湾・玉山銀行は4日、ザ・リッツ・カールトン福岡で「台湾・九州経済貿易シンポジウム In 福岡~持続的成長を共に目指して~」を開催した。海外企業の対台湾投資促進を主な業務とする中華民国対外貿易発展協会(台湾貿易センター)の責任者も交え、パネルディスカッションなどが開催された。

日台連携の動きとメリット

開会挨拶を行う谷川会頭
開会挨拶を行う谷川会頭

    開会挨拶において谷川浩道・福岡商工会議所会頭は、TSMCの進出にともなう半導体関連産業への大型投資は、九州に10年で20兆円の経済波及効果がもたらすと見込まれ、「新生・シリコンアイランド九州」の実現にとって極めて大きな意義をもつことを強調した。九州と台湾との経済・文化両面での交流がますます盛んになるなか、双方が強みを生かしてともに繁栄するため、双方向の交流とビジネスの拡大を商工会議所として全力でサポートしていくと述べた。

開会挨拶を行う黄玉山銀会長
開会挨拶を行う黄玉山銀会長

    黄男州・玉山銀行代表取締役会長は、九州にとって台湾は輸出では第4位、輸入では第5位の相手であり、お互いに重要な存在であることを確認したうえで、今後、九州で半導体サプライチェーンが構築されていくなかで、同行福岡支店が日台協力のプラットフォームの役割を担い、台湾の半導体メーカーや製造業顧客の日本への投資に関連するコンサルティングを行うなどのサポートを行っていくと表明した。

 陳銘俊・台北駐福岡経済文化弁事処処長は、九州の半導体産業が活発となり、九州が日本経済を牽引していくとの期待を寄せた。

 基調講演では玉山銀行と台湾貿易センターの日本側責任者がそれぞれ台湾と九州の経済貿易関係、日台連携について講演を行った。久保敏也・玉山銀行福岡支店長は、台湾では研究開発費が総額で世界3位、1人あたりで4位であるほか、九州-台湾間の輸出入の多くを半導体関連が占めていること、また台湾人の訪日客において九州を訪問する比率が上昇していることなどを紹介した。また、台湾はグリーン電力、再生可能エネルギーに注力しており、玉山銀行としてもESG投資に注力していることなどを紹介した。最後に日台の協力について、双方には価値観などにおいて違いが見られるものの、それを認識し、相互に思いやることが大切である点も強調した。

台湾の状況を紹介する久保玉山銀支店長
台湾の状況を紹介する久保玉山銀支店長
日台連携について話す張台湾貿易センター所長
日台連携について話す張台湾貿易センター所長

    張惠莉・台湾貿易センター大阪(兼福岡)事務所所長は、日本企業にとっての台湾企業との提携のメリットの1つとして第三国市場の共同開拓を挙げ、台湾企業は多言語能力とスピーディーな意思決定、日本は技術開発力、品質への高い信頼というそれぞれの強みをもつと強調したうえで、インドなどでの事例を紹介した。また、半導体関連の材料・製造装置で日本は依然としてトップレベルにあること、台湾の食品輸出先として中国が落ち込むなか、日米が23年には1、2位を占めるようになったことなどについても触れた。

半導体以外に広がる台湾の対日投資

 パネルディスカッション(コーディネーター:柴田建哉(株)西日本新聞社取締役会長)では、TSMCの九州進出について、黄玉山銀会長は九州に新たな資金、人材、産業チェーンがもたらされることを述べた一方で、谷川会頭は九州の地場企業がTSMCのサプライチェーンに入るのは現状ではハードルが高いとしつつ、九州で技術面での研究開発や人材育成に取り組んでおり、その成果が出てくることへの期待を表明した。

 黄志芳・台湾貿易センター会長(元外交部長)はTSMC進出以降の動向として、半導体のサプライチェーン以外にも化学や建築、不動産、美術など幅広い産業の台湾企業が九州に進出しており、新たなエコシステムの形成が期待できる非常に大きなチャンスであると評価した。また、そのなかで玉山銀など金融機関は非常に重要なプラットフォームとしての役割をはたすと進出の意義を強調した。

 TSMCにとってのグローバル戦略という視点からの日本・九州の位置づけについても話が及んだ。TSMCはサプライチェーンを世界規模で展開しているが、黄玉山銀会長は多くの国が半導体産業に注力するなか、日本は装置と材料、台湾は設計と製造、アメリカは設計など、韓国や中国を含めてそれぞれ強みをもつ分野があり、1つの国がすべてを統括することはなく、分業・協力の新たな機会が生まれるとの見方を示した。

 黄台湾貿易センター会長はそれに加えて、インド、ヨーロッパ諸国もそれぞれ自国の半導体産業の強さを取り戻そうとしているが、関連のインフラについて、欧米印と比べ日本が相対的にリードしているとの見方を示した。なお、同センターは九州での業務量増加に対応するため、福岡事務所のスタッフ増員を予定しているという。玉山銀行も10月23日に熊本事務所を開設する。

【茅野雅弘】

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