2024年10月08日( 火 )

業績不振から危機説が噂されているサムスン電子(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

ファウンドリ事業ではTSMCと差が開く(つづき)

半導体 イメージ    さらに、半導体が複雑になっていくにつれて、パッケージング技術が大事になってくる。1つのチップでは実現できないことを、パッケージング技術を活用して複数のチップを積層状に搭載することによって、実現できるようになるからだ。代表例が、AI時代の到来とともに需要が急増しているHBMだ。メモリを垂直に積層した後、GPUと一緒にしてAI半導体が製造されるからだ。TSMCは約10年前から「CoWoS」といわれる最先端パッケージング技術を開発して、その技術でサムスン電子から同社の最大顧客であるアップルを奪ったわけである。

 一方、サムスン電子やインテルは、TSMCとは対照的に、ファウンドリ事業で不振が続いている。証券業界ではサムスン電子は昨年ファウンドリ事業で約2兆ウォンの赤字を出し、今年の上半期だけでも、1兆5,000億ウォンの赤字を記録していると見ている。ファウンドリ事業は顧客を確保して製造をすることで、歩留まりを上げることもできるが、歩留まりが悪いので顧客が付かず、顧客がないので歩留まりを上げるチャンスがないという悪循環に陥っている。ファウンドリ事業は下半期に受注が決定される場合が多いが、顧客もなく、赤字が累積しているため、ファウンドリ事業はサムスン電子の重荷となっている。インテルに至ってはもっとひどい状態で、ファウンドリ事業の売却が噂されるほどである。

AI時代のメモリHBMでも先を越される

 サムスン電子は、AI半導体市場の90%以上を握っているエヌビディアに、第4世代HBMであるHBM3を供給していない。一方、SKハイニックスはAIメモリ市場で最も大きな比重を占めている「HBM3」と、第5世代HBMである「HBM3E」ですでに大きな売上を上げている。サムスンはHBM市場を過小評価し、HBMの開発においてSKハイニックスに先を越され、HBM市場では後塵を拝している。その結果、既存のメモリ市場とは違い、HBM市場ではSKハイニックス59%、サムスン電子37%と、SKハイニックスがサムスン電子をリードしている。SKハイニックスは「HBM3E」8段の製品の出荷を開始し、12段製品の認証過程にいる。一方、既存のメモリは需要が低迷しそうで、サムスン電子の業績予想が明るくないのはそのせいである。

外部環境は中長期的な業績にも暗い影を落とす

 HBMではSKハイニックスに先を越され、ファウンドリ事業では絶対強者であるTSMCの背中が遠のいているサムスン電子。このような状況下で、売上比重の高い中国市場に輸出ができなくなったら、サムスン電子の業績に悪影響が出るのは必至だ。

 サムスン電子はまずメモリ事業でシェアを取るため、HBM事業に投資をしなければならず、ファウンドリ事業に専念するTSMCとの差を縮めるのはもっと難しくなるかもしれない。しかし、台湾有事などを考えると、半導体の製造がTSMCに集中するのは良くないし、顧客にとっても選択肢が1つしかないのは良くない。サムスン電子は今の苦境を乗り越えることができるのか、サムスン電子の対応に世界が注目している。

(了)

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