2024年10月10日( 木 )

“敵前逃亡口先内閣”こと石破政権の言行不一致

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 総裁選中の発言を次々と覆している石破茂首相の言行不一致が目立っている。マイナ保険証一本化もその1つで、平将明・デジタル担当大臣が河野太郎・前大臣と同様、12月2日以降は紙の保険証を使えなくなるという方針を堅持。そこで10月2日の初会見で私は、次のように問い質した。

 ──石破総理は総裁選中に「マイナ保険証一本化に納得しない人が多ければ、紙の保険証との併用も選択肢だ」というふうに言ったが、これはリップサービスだったのか。「口先内閣」と呼ばれかねないと思うが…。しかも林官房長官も「不安払しょくに納得したうえでマイナ保険証一本化に移行する検討をする」と言っているが、(マイナ保険証一本化の方針堅持を表明した)平新大臣の発言と明らかに食い違っているのではないか。

平将明・デジタル担当大臣
平将明・デジタル担当大臣

    平 総裁選での発言だと思う、石破さんも林さんも。その主旨は「何だか分からないが、もしくは不安だけれども、全部デジタルにもって行かれたら、それは困るよね」と私は理解している。なので「紙(の保険証)がなくなって、もしくは全部マイナ保険証で12月2日から行くのだということは、選択肢があったほうが良いのではないか」という主旨で、石破候補(当時)は発言をされたものと思っている。資格確認書の紙がプッシュ型で送られるので、そういった意味で紙もちゃんとあります。マイナ保健証が嫌だとか恐いという方は資格確認書があるので、そういった意味ではアナログのオプションも用意されていると理解しているので大きく齟齬はないと思っている。

 この平大臣の回答は、マイナ保険証一本化を強行してきた河野前大臣の立場とまったく同じだ。石破首相が総裁選中に訴えてきた慎重論はまったく反映されていなかったのだ。私は質問を続けた。

 ──総裁選中の石破さんの発言を聞けば、「(マイナ保険証一本化に)納得する人が多くなければ、紙の保険証との併用もあり得る」と普通の人は理解すると思うが、これは守らないのか。たとえば、世論調査をして、現時点で不安を感じている人がどれぐらいいるのか、納得している人がどれぐらいいるのかを調査したうえで、最終決定をする考えはないのか。納得する人が多くなくても独断で(マイナ保険証一本化に)踏み切るのは(石破首相が掲げる)「納得と共感の内閣」と真逆ではないか。

 平 これはさまざまな議論を経て手続きを経ている。これを大きく方針転換をする状況にないと私は思っている。予定通り進めたいと思う。

 ──「世論調査をしないで強行する」ということでいいのか。

 平 無言でうなずく。

 さらに質問を重ねようとしたが、ここで司会者に質疑応答を打ち切られた。納得できなかったので、会見終了直後、声掛け質問をした。

──「リップサービス内閣」と呼ばれるのではないか。石破さんと話をしたのか、マイナ保険証について。

 平 (無言のままうなずく)

 ──「総裁選中の発言はリップサービス」と(石破総理に)納得してもらったのか。

 平 (無言のままうなずく)

 ──「納得と共感(内閣)」は看板倒れではないか。(マイナ保険証一本化に)国民は納得していないのではないか。(納得しているのか否かの世論)調査もしようとしないのか。閣内不一致ではないか。石破さんの足を引っ張るつもりか。

 平 足を引っ張るつもりはない。

 ──ちゃんと話したのか、石破さんとマイナ保険証一本化について。

 平 話しています。

 ──(石破首相は)「総裁選中の発言はリップサービスでいい」と言ったのか。

 平 リップサービスという言葉は誰も使っていない。

 ──実際、そうではないか。林官房長官も同じこと(マイナ保健証一本化に慎重な発言)をしている。

 平 無言のまま立ち去る。

 「総裁選中の発言はリップサービスにすぎない」と言ったに等しい石破政権の言行不一致について、立憲民主党の小川淳也幹事長に同日の会見でどう受け止めたかを聞いてみた。

 ──石破総理の「正論撤回」、総裁選で言っていた発言を次々と撤回していることに関連して、マイナ保険証について石破さんは総裁選で「(マイナ保険証)一本化に納得しない人が多ければ、紙の保険証との併用も選択肢だ」と言っていたが、今日、平デジタル担当大臣の会見で聞いたら「今までの方針を堅持する」という方針で、石破政権が「納得と共感」を掲げているのに国民が(マイナ保険証一本化に)納得しているのかどうかの世論調査さえしない。この受け止めについて

立憲民主党 小川淳也幹事長
立憲民主党 小川淳也幹事長

 小川 「ほれ言ったことではない」という感想だ。つまり総理大臣の言葉の重みや責任がどの程度閣内に浸透し、そして党執行部に浸透しているのかが直ちに問われている。こういうことがいろいろなところに出てくるわけであり、まさに閣内不一致の問題であり、石破総理ご自身のリーダーシップの問題であり、そういうことがあちこちに出て、結局、脅かされるのは国民生活の安心感と安定感であると強く苦言を申し上げたい。

 こうしたことをぜひ、国会で審議させてください。一体、総理は何のつもりでそう(全閣僚参加の予算委員会を開いたうえで解散と)言ったのか。平さんは平さんでどういうつもりでそう言ったのか。国会でぜひ審議させていただきたい。改めて、それを強く要求したいと思う。

 ──(マイナ保険証一本化問題は)総選挙の大きな争点の1つ、対立軸になると捉えているのか。

 小川 私どもは「デジタル化はこれから必要なこと」と基本的に思っているが、「その準備が整っているのか」という問いをずっと投げ続けてきたわけで、政権の体面と引き換えに政権の面子と引き換えに、保険医療にかかる国民の安心感を奪うことは本末転倒で言語道断という立場を取ってきた。これは当然、選挙で問われるべきだ。(マイナ)保険証の問題というよりも、それを含めて、政治姿勢というか、言葉の責任というか、政権が何を優先しているのかという政治姿勢そのものを絡めながら、大きく問うていきたいと思う。

 ──最後に、石破政権を例えるとしたら「敵前逃亡・口先内閣」がぴったりなような気がするが、幹事長の捉え方を教えていただければ。

 小川 いいアイデアだと思います。先ほど、ちょっと「(石破政権は)口約束」「空手形」と申し上げましたが、同主旨でいいアイデアだと思う。

 マイナ保険証一本化の方針を変えなかった石破政権に対して立憲民主党は「12月以降も紙の保険証併用可能」を公約にすることを決定。10月27日投開票の総選挙の大きな争点の1つになることが確実となった。選択的夫婦別姓や日米地位協会改定などについても総裁選中の発言を覆した石破首相(政権)に対して、国民がどんな審判を下すのかが注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

関連キーワード

関連記事