中国人の対日感情は「完全両極化」~日中ビジネス交渉人徐静波
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8月に中国で、新書『日本企業の生き方』(原題:日本企業的活法)を出版した。バブル経済の崩壊後、日本企業が生き残りを求め、改革を求め、新たな発展を求めた姿を描いたものである。
出版元である北京華文出版社の招待を受け、上海、北京、杭州、寧波の4カ所で計6回の講演会とサイン会を行い、上海のブックフェアにも参加した。講演会とサイン会は合わせ
て1,300人以上が会場に詰め掛け、サインをした本は1,000冊以上に達した。訪れたのは企業の経営者や弁護士、さらには政府関係者、大学生など、そして家族全員できた人もいた。ちょうどその期間中に、8月15日という敏感な日を迎えたこともあり、主催者側は日本を語ることで「反日脈」が会場で騒ぎを起こすのではないかと心配をしていた。しかし、6回のイベントで騒ぎなどはまったく起きず、むしろ日本に対する温かさや強い興味を感じたものである。サイン会には大勢の人が集まり、一時間以上並んだ人もいた。
参加者とのやり取りで、とくに多かった質問は以下の点であった。
一、日本はバブルが崩壊してから社会や経済にどのような問題が起き、それをどう解決したか。
二、生産過剰に陥っているなか、日本企業における「海外進出」策とは何か。
三、今日本で会社を興すとしたら、どのような手続きが必要か。
四、子どもを日本に留学させたいが、何を学ばせたらよいか。
五、福島原発で大量の排水を流しているが、日本で魚は食べられるか。以上の質問から、中国は景気が著しく後退しているなか、日本を教師役とみなし、30年間の企業の歩みから参考となり得る経験や教訓を見出したいという経営者が多いことがわかった。
私はこうした日本への思いから、中国では「完全両極化」という現象が生じていると感じた。日本が好きな人は年に何回も訪れ、子どもの通学に便利になるようにと日本で家を買ったり会社を興したりしようなどと考える人もいるが、嫌いな人は「日本」と聞くだけで嫌悪感が生じてしまう。
よって、これら「好き」と「嫌い」の両派がSNSで議論の応酬をして、「好き派」が次第に「売国奴」などと罵倒されていく。日本に着いたら現地で撮った写真をWechatやブログにアップすることはごく少ない。反日派を刺激しないようにするためであって、「日本が好き」が公言から「秘めた恋」に変わってゆく。
中国では、靖国神社に放尿したり落書きをしたりする「強硬派」市民など、過激な「反日派」がいながらも、日本に対する見方が知的になっている人が増えていることを感じる。SNSでは靖国神社での「強硬派」の行為に対し、単なる個人の出しゃばりであって日本で暮らす中国人のイメージを壊した、という批判の声が出ている。そしてまた、NHKのラジオ番組で本番中に「尖閣諸島は中国のもの」と言った中国人アナウンサーに対しても、最も基本的な職業モラルや社会的信頼に反するものと批判をしている。
中国のSNSでは、一方的に日本を批判し反日を支持したりせず、このような知的なメッセージが次第に主流となっている。ただし一方で、日本が「嫌い」という少数派の行為が一段と過激化している様子も目に見える。
今年6月、蘇州で日本人学校の通学バスが男に襲われて中国人女性が死亡、日本人の母と子がけがをした。また深センで9月18日午前、日本人学校に通う10歳の小学生が校門から200mのところで男に剌され、死亡した。
いずれも日本人の子どもが被害になった事件で、日本が「嫌い」という一部の中国人が「口先だけ」から「行動」へ変わり始めたことを意味するものであり、背筋が寒くなる事態である。
百聞は一見に如かずであり、日本にきてじかに社会を見たことで目からうろこが落ちる中国人は数多い。日本人もやはり何度も中国に足を運ぶべきであり、とくに小泉氏のような政治家ならなおさら中国を訪れて理解を深め、メディアばかりを見ずに中国と対話をすることで隔たりをなくしていくべきである。
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