【BIS論壇No.458】グローバルサウス動向
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は10月20日の記事を紹介する。10月~11月は世界で発言力を強めつつあるグローバルサウス主要国関連の国際会議が多く開催される。
(1)
中国、ロシアが長年主導している「上海協力機構」(SCO)首脳会議が10月15日から2日間パキスタンのイスラマバードで開催された。加盟国は安全保障、貿易、テロ対策など地域協力促進について協議した。カシミール問題などで関係が悪化しているインドからはジャイシャンカール外務大臣が9年ぶりに会議に出席。激変する世界秩序の主導権をにぎるため、中露はSCOを主導し、国際社会で発言力を増しているグローバルサウスを取り込んでいく戦略を強化しつつある。
パキスタンのシャリフ首相は中国の広域経済圏構想「一帯一路」の「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」ついて「パキスタンの近代化に役立った」と評価した。
本構想のパキスタンのグワダル港やカラチ港を結ぶ中パ・プロジェクトは欧米からは「債務の罠」として批判されたが、パキスタンのイクバル計画・開発・特命相は「我々の近代化に役立った」と一帯一路を含む、中国のインフラ計画を高く評価したという。日本や欧米のメディアはスリランカのハンバントタ港を含め、「債務の罠」論で中国の「一帯一路」を批判しているが、筆者が先年、スリランカを訪問。現地関係者に意見を聴取した際も、欧米のメディアの批判と違い、現地では好意的な評価が多かった。現場のHuman Intelligence(人的情報)を収集して評価することが情報論的にも肝要だ。
(2)
ロシアのカザンでは近来、力を増しつつある新興国グループ「BRICS」首脳会議が10月22日から24日まで開催される。当初、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興有力国5カ国で始まった会議は加盟国が増加。アラブ首長国連邦、イラン、エジプト、エチオピア、サウジアラビアが加盟、10カ国に増加し力を増しつつある。さらに新興国30カ国が加盟を希望しているとの情報もある。
中国、ロシアはG7(先進主要七カ国)などに対抗するためにもBRICS拡大を中国の巨大経済圏構想「一帯一路」と並ぶ関係強化の手段とみなしているようだ。
(3)
11月中旬にはブラジル・リオデジャネイロで「20カ国・地域首脳会議(G20サミット)」が開催される。このように主要新興国会議が今秋、パキスタン、ロシア、ブラジルで開催される。10月27日の日本の衆議員選挙、11月5日の米国大統領選挙と国際政治が変動。さらにロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・パレスチナ戦争と国際情勢の激変の年末を控え、世界の政治、経済、軍事情勢の動向を的確に見極めることが極めて重要と思われる。そのためには情報収集力と分析力を身に付けることが肝要であろう。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。関連キーワード
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