半導体業界を襲ったASMLの株価急落(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏業績悪化の原因は
米国はAI半導体などの最先端の半導体技術が中国に流出しないようにするため、中国に対して各種の規制を課してきた。米国の中国に対する規制が厳しくなればなるほど、半導体製造装置が中国で売れなくなることが容易に予想できる。しかし、驚いたことに、世界一位の半導体メーカーであるASMLの売上高に占める中国の割合は49%で、2位の米国のアプライド・マテリアルズの中国の比重は32%である。このように半導体製造装置の最大顧客は、実は中国であったわけだ。ところが、米国の規制で中国での販売が減少することが予想されると、同社の売上高は減少せざるをえないというのが市場の予想である。同社は米国の最先端製造設備の場合、米国の規制がすでにあって販売できなかったが、同社はその間、むしろ規制外の古い設備を中国に大量に販売し、売上を上げていたようだ。ところが、それも米国の規制により、今後減少が予想されている。
また、AIチップなどの最先端半導体は景気が良いものの、景気失速でスマートフォンやパソコンが売れなくなり、半導体需要は全般的に減少していくことが見込まれている。さらに、中国需要の減少がインテルやサムスン電子にも影響を与える。それがまわりまわってASMLへの製造設備発注を控えるようになるので、ASMLの収益減少につながるのではないかと思われているようだ。
韓国経済を支えている半導体輸出
半導体の景気は、韓国経済に大きな影響を与えるようになった。なぜかというと、韓国経済は内需が振るわないなか、輸出が経済成長を牽引し、今年も2%台の成長をキープしているからだ。しかし、輸出のなかで一番大きな比重を占めているのは、半導体である。産業通商資源省によると、今年第3四半期の半導体輸出は、約367億ドルで、前年同期対比で41%も伸長した。同期間の総輸出額である1,739億ドルの21%を半導体が占めている。今まで韓国の輸出を支えていた分野が中国によって競争力を失うなか、半導体は唯一、競争力を維持し、韓国経済を支えている存在だ。
このような状況下、もし半導体景気が低迷することになると、韓国経済が甚大なダメージを受けることは容易に想像できる。半導体のなかでも韓国の主力製品はメモリだが、メモリ価格はすでに下降線をたどっている。メモリ価格が下がっているのは、需要の減少が直接的な理由である。しかし、長期的にみると中国企業がメモリに莫大な投資を続けており、やがてメモリ市場は供給過剰に陥り、メモリ価格が暴落するのではないかという長期的な懸念もある。
韓国経済を現在支えているメモリの価格が暴落すれば、サムスン電子は危機に陥ることになるし、韓国を代表するサムスン電子が危機に瀕すると、韓国経済に危機が訪れるのはいうまでもない。ASMLの株価急落は韓国経済に暗い影を落としている。
(了)
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