トリビュートの不動産再生(1)「立ち退き」
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対話が重要も非弁行為に注意
保全すること自体が、まちの価値を高める建築や公園などの緑、その猥雑さによって生み出される情緒などもある。しかし、建物の老朽化にともなう低稼働、もしくは空き家、管理不全の建物は、まちの魅力を下げるため、一定の新陳代謝もまちづくりには重要なファクターとなる。課題を解決することで土地の価値を高め、人が集まり、まちが活性化するからだ。こういったまちの再生に欠かせない最初の一歩が、「立ち退き交渉」だ。
福岡市内を中心に、不動産再生に取り組む(株)トリビュート(福岡市中央区)の代表取締役社長・田中稔眞氏は、交渉のポイントについて「時間をかけてコミュニケーションをとっていくこと」と話す。
まず、立ち退き交渉を行うには、当事者=物件オーナーであることが求められる。この点について、トリビュートの執行役員統括部長・永田誠氏は「たとえば、アパート管理会社などがオーナーに代わって交渉することは非弁行為となり、犯罪です。オーナーが法人の場合、オーナーの会社の名刺だけ持って交渉に臨むことも同様で、当事者となることはできません。当社では、自社がオーナーとなる場合にのみ、立ち退き交渉を行っております」と指摘する。
立ち退き交渉は「じっくり時間かけて」
立ち退き交渉の相手には、いくつかのパターンがある。立ち退きの正当事由としては、「物件の老朽化による取り壊し」「建替え」のほか、「長期間の家賃滞納」「ゴミ屋敷にする」といった賃借人の善管注意義務違反などが挙げられる。これらに該当する場合、賃貸借契約の更新拒絶や中途解約が認められる可能性があるが、「どんなにオーナーに正当事由があっても、じっくり賃借人に向き合い、納得していただいたうえで退去していただくことが当社のモットーです」(永田氏)と続ける。
「最終的には訴訟手続に移行することもある」(永田氏)とはいうものの、いかに法的にオーナーに理があっても、訴訟をちらつかせるなど強行するのではなく、わかりやすい言葉でじっくりと時間をかけて交渉していくことが重要なのだそうだ。
定借への切替有効だが「賃借人の理解必須」
賃貸借契約の形態には大きく2つある。「普通借家契約」と「定期借家契約」だ。定期借家契約は数年から10年程度が一般的で、期限が来ればオーナーは再契約を拒否することができるため、立ち退き交渉はそれほど難しくない。だが、定期借家制度は2000年に施行された契約形態ということもあり、福岡ではまだそれほど普及しているとは言い難く、立ち退き交渉のメインは「普通借家契約」となる。普通借家契約では、期間満了後も借主が希望すれば契約は更新される。戦後間もなくならまだしも、これだけ物件の選択肢があるなかにおいて、借主の立場が強すぎるとして問題視されることも増えてきた。
こういった事情から、いずれ売却することを視野に入れた収益物件の取得では、「普通借家」から「定期借家」への切り替えも有効だ。賃借人にとって不利な変更となるものの、契約行為に不慣れなことも多く、物件オーナー(または管理会社)が定期借家契約のデメリットを隠して切り替えを促すことはそれほど難しくはないだろう。この点について永田氏は、「たしかに、不意打ちで定期借家契約へ切り替えることも可能でしょうが、次のオーナーに問題を負わせるのは不本意ですし、賃借人への不義理ともなり、当社への信用問題にもつながります。ご理解いただくことが難しいケースも少なくありませんが、じっくり説明して理解していただくことが重要となります」と話す。
福岡のまちづくりへ 協業で建替えスキーム
同社ではこれまで、アパートやマンションなどの住居、飲食店舗などのテナントビルの立ち退き交渉を行ってきたが、「テナントビルの立ち退き交渉は1年以上かかることもザラ」(永田氏)だという。代替物件の紹介や営業補償など、双方が納得する結論を導き出すには多くの時間と労力を要する。
福岡市の中心部では、アライアンス企業とともに課題がある大型物件を取得し、立ち退き交渉を進めたうえで建物を解体し、アライアンス企業が新たな建物を開発するというスキームの再生プロジェクトにも着手。「福岡の不動産は大きな注目を集めています。老朽化や管理不全の物件は、まちの魅力を大きく損なう原因となります。まちづくりの観点からも、当社の不動産再生事業は意義があるはずです」と田中社長は力を込める。
【永上隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中稔眞
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-1
サンセルコビル6F
設 立:2009年4月
資本金:1,600万円
TEL:092-292-2313
FAX:092-292-2314月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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