2024年11月19日( 火 )

うきはテロワールと悠久の古代史(3)

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前うきは市長 髙木典雄 氏

(5)    水

地下水(うきはの恵水〈めぐみ〉)

うきは市 イメージ    うきは市は、上水道が整備されておらず、地下水だけで生活用水などがまかなわれている、全国でも非常に珍しい「水のまち」です。

 耳納連山と阿蘇山を水源とする筑後川水系から滲み出る豊富で良質な地下水は、古くからうきは市の暮らしを支え、「うきはの恵水」としてさまざまなかたちで私たちに恩恵を与えてきました。

 うきは市の平坦地の地下に溜まっている水の総量は約7.4億m3、なんとうきは市民の皆さんの生活用水や農業・事業のために利用している年間使用量の120年分にあたります。

 この豊かな地下水は、農産物を育てるために欠かせない、とっても大切な要素の1つとなっています。一方、稲作により田には河川から大量の水が引かれます。雨が降ったときだけではなく常に水を張っている田は、地下に絶えず水を送る大切な働きをしています。

健康でおいしい水

 うきは市の豊かな地下水や湧水は、全国の多くの日本名水百選と同様のアルカリ土類炭酸塩です。塩はナトリウムという陽イオンとクロールという陰イオンの2つで成り立っています。これが水に溶けて離れることで電解質となります。人間の体は、この電解質の陽イオンと陰イオンのバランスによって、血管・細胞・神経・筋肉などの動きを調整しますが、アルカリ土類炭酸塩は非常にイオンバランスのとれた、良質な地下水となっています。

 また、うきは市の地下水は地下にとどまっている時間、滞留時間が長く、平坦地では20~40年、中山間地では50~63年、日本名水百選に選定されている清水湧水は47年となっています。地下水の味の決め手は、シリカやカルシウム・カリウムですが、滞留時間が長くなるとシリカが多くなるので、おいしい水となっています。

 なお、吉井地区の水源は耳納連山でありますが、複合扇状地であることから複雑な帯水層となっており、水源との距離は短いなか、ゆっくりゆっくり土砂の隙間を30年から40年かけて流れ、その間たくさんのシリカ・カルシウム・カリウムを含むことになります。吉井の語源の1つに、「よ⦅吉⦆い水が湧き出る⦅井⦆戸」という説があるほど、とくにおいしい水となっています。

 このように、うきは市の地下水は健康な水とおいしい水の要件を満たす軟水であり、おいしい農産物を育てるために欠かせないとても大切な要素を有しています。

(6)    雨

 うきは市は、太平洋岸気候区に属しており、年平均降水量は2,006mmと福岡県内では一番多く、気候条件に恵まれた環境となっています。

 気象庁のデータによると、8月の午後に5mm/h以上の雨が降った日数、つまり夕立が近隣や全国の果樹名産地(ブドウ生産が盛んな山梨県内、柿生産が盛んな和歌山県内など)と比較して多いものになっています。

 適度な夕立があることから、果樹の水分補給と暑さの調整が可能となっています。また、渇水期の干ばつ防止にもつながっており、農産物の生産に大変適しています。

(7)    地理

 うきは市は筑後川が筑紫平野に流れ込む玄関口であり、平坦地については阿蘇山の噴火や氾濫原によって形成され、粗い目、細かい目の地層が重なり、水はけの良い土地となっています。

 30万~9万年前に4回の阿蘇山巨大カルデラ噴火が起こりました。うきは市の平坦地の地層のなかにも3回目と4回目の噴火で降り注いだ火山灰が認められます。

 また、筑後川は名だたる「暴れ川」であり、氾濫のたびに河道を変え、筑後川本流の周辺は氾濫原となっていました。川の氾濫は土地に豊富な栄養を与えるため、豊かな土壌となって米や麦・野菜等の生育に適した農地となっています。

 これまで、学術的調査の結果、うきは市の大地が、いかに農作物の生産に適した地理的特性を有しているかを、代表的事例として7大自然要素の概要を述べてまいりましたが、いかがだったでしょうか。他地域との比較で具体的な数値はお示ししませんでしたが、数多くの項目において、国内の他の農業生産地よりも良いデータが出ており、うきは市はほかの地域にはない優位性をもった地域であるといえます。

(つづく)


<プロフィール>
髙木典雄
(たかき・のりお)
1951年8月、福岡県浮羽郡浮羽町(現・うきは市)出身。74年、福岡大学商学部2部を卒業。70年に建設省九州地方建設局(現・国土交通省九州地方整備局)に入省。94年から98年まで、建設省九州地方建設局から浮羽町助役に出向。その後、福岡国道事務所副所長や九州地方整備局調査官、九州地方整備局総括調整官などを歴任後、2012年3月に国土交通省を退職。12年7月にうきは市長に初当選し3期務めた。

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法人名

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