【揺れるセブン&アイ(1)】 創業家MBOで外資買収に抗戦(後)
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セブン-イレブンのノウハウはおいしい
そのセブン-イレブン・ジャパンは調理済み独自商品、一定地域集中出店、共載配送、定価販売、酒あり店、イメージ広告戦略で「コンビニ最強」といわれるまでに成長した。しかし、巨大化は多くの場合、革新性にブレーキをかける。市場という外を見る行動から所属組織という内部優先の忖度経営が横行する。一時に比べて、圧倒的に強かった総菜が、近年はファミリーマートやローソンの後塵を拝するケースが少なくない。既存店売上や新規出店の問題も横たわる。そのセブン-イレブンの祖業創業家がかつてのサウスランドと同じ状況下にある。
セブン&アイの子会社は整理、統合をくりかえしたとはいうものの、その数は170社超ある。しかも小売子会社はセブン-イレブンを除けば今後の業績は楽観できない。とくに祖業のイトーヨーカドーは衣料からの撤退と多数店舗閉鎖を余儀なくされるところまできてしまっている。イトーヨーカドー店舗はこの10年で182店から108店へと激減した。さらにそこから16店舗が閉店予定だ。そうなると店舗数は92店になる。そこにきて、今回の虎の子・セブン-イレブンに対するM&A騒ぎだ。
セブン&アイの時価総額の低さを見越しての買い得感が理由といわれるが、もちろんそれは見かけの理由で、クシュタール社の狙いは世界最大のコンビニ事業への飛躍とセブン-イレブンが持つ食を中心とする商品力だ。もし、買収がうまく行けば、巨大市場の北米、アジアにおける業界のガリバーになることができる。しかし、アメリカ本土に店舗展開するセブン-イレブンに米連邦取引委員会が黙認するとは考えられない。必ず干渉するはずだ。しかし、政権が交代し、トランプが大統領になるとその干渉は緩くなる。
そんななか、急浮上した買収対抗策が創業家の伊藤家によるMBOだ。先般、同業のローソンも今後の競争環境の激化に備えて、MBOで非上場化した。それに次いでの業界最大手の非上場戦略だ。金融機関や商社、投資ファンドからどう資金調達するかは今のところ公表されていないが、いずれにしてもそれには7~8兆円という巨額の資金が必要だ。
アワーカンパニーとマイカンパニー
上場企業は公共性が強いといわれる。もちろん、この場合、優先する公共は株主だ。経営はその意思で決定、結果も監視される。一方、非上場企業は少数の株主の意思で経営全般が決定する。どちらが良いかは別として、有名企業ではサントリーや竹中工務店、YKK、ダイソーなどが非上場だ。非上場企業は自由な経営ができるだけでなく、市場に株がないから買収されないし、財務内容も公開しなくていい。とくにこだわった哲学と経営手法をもつユニークといわれる企業が上場すれば、平均、常識的な管理、監視の目に縛られるから、こだわりの経営などできなくなる。しかし、それは経営全般に指導者の恣意的な経営で組織が運営されるから、ワンマン経営という弊害も生まれる。さらに経営能力に欠けるリーダーが現れると、会社が潰れる。流れない水と同じで動かない組織は腐る。
創業家主導の上場廃止で、買収は防げるだろうが、その経営が順調に変化、推移するかどうかは誰にもわからない。巨大化した企業は経営者個人の意思とは別のところで自ら動く。
(了)
【神戸彲】
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