【講演録】政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が語ったメディアが伝えない政界の内幕
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11月14日、データ・マックスは、元朝日新聞政治部次長で政治ジャーナリストの鮫島浩氏を講師に迎えて、福岡市内で、政局講演会『新政権・解散総選挙後の日本の行方』と、政治関係者を中心とした『鮫島浩、政局の裏を語る。意見交換会&懇親会』を開催した。
石破政権を支えるやり手の森山幹事長
午後2時からアクロス福岡で開催した講演は、平日にもかかわらず一般市民・企業関係者らが多く駆け付けた。鮫島氏は2時間半の長丁場を、休憩を挟み前半と後半に分けて、9月の自民党総裁選、現在の石破政権をめぐる勢力構図やアメリカ大統領選挙でトランプが再選した背景などについて語った。
鮫島氏の講演は、3月に続く2回目の開催であるが、この間、自民党派閥の「裏金」問題で「政治とカネ」の問題が問われ、岸田文雄首相が総裁選不出馬を決断。9月の自民党総裁選で石破茂氏が選出され、衆議院を解散したが、衆院選で自民・公明両党が過半数割れで少数与党となるなど、政局はめまぐるしく転換した。
岸田政権で岸田氏を支えた1人は麻生太郎氏であったが、石破政権では誰なのか。鮫島氏は、鹿児島選出の森山裕幹事長の名前を挙げ「石破政権を支える裏の主役である」と指摘。「新聞配達をしながら鹿児島市議に当選した苦労人」と評したうえで、「参議院議員に進んだが、当時の参議院自民党のドン・青木幹雄氏と決別して衆議院に鞍替えした」ことや、「岸田氏・菅氏・麻生氏とも話ができるやり手」と石破政権をつなぎとめる要の存在であると述べた。また森山氏は、国会対策に携わったことから、自民党だけでなく野党人脈も広い。とくに立憲民主党の元国会対策委員長で、現在、衆議院予算委員長を務める安住淳氏とは非常に親しい関係にあると指摘した。
小泉進次郎の失速 高市早苗の基盤
自民党総裁選では、当初、知名度が高い小泉進次郎氏が有力との見方が強かったが、討論会などでの発言が響いて失速した。鮫島氏によると、総裁選前の時点では岸田政権の低迷した支持率では解散総選挙は乗り切れないと自民党の大勢は判断しており「小泉氏で10月前半解散を行い、10月27日投開票のカレンダーが出来上がっていた」と述べたが、この情報をいち早く入手した鮫島氏は、8月22日の時点で、自身の動画『鮫島タイムス』で語っていた。
石破政権誕生の経緯について、鮫島氏は「石破茂氏自身含めて誰もが予想しなかった」と述べたが、国民人気と裏腹に、石破氏の自民党内での評価は芳しくなかった。この点について「石破氏は、安倍元首相や麻生氏に嫌われていたが、麻生内閣の閣僚でありながら、退陣を迫ったことに始まる」と指摘。「政治の世界では、メンツを潰されたという怨念は大きい」「権力を維持するうえで、次に自分を裏切ったらこうなるぜと見せつける必要がある」と述べた。
他方、総裁選で敗れたものの、依然として岩盤保守層に人気の高い高市早苗前経済安保相であるが「安倍派を抜けたにもかかわらず、総裁選で担いでくれた安倍さんを裏切れない。亡くなった後も安倍支持層を裏切れない」と評し、そのことが政治家としての最優先課題になっていると指摘した。
高市氏は党員人気が高く旧安倍派を中心とした支持が広がったが、総裁の座を射止めることができなかった点について、鮫島氏は「日韓関係などで危機感を覚えたアメリカの意向」であると独自の見解を披露した。
日本や欧米で広がる既成政党やメディアに対する不信
講演の後半は、日本の政治にも大きな影響をおよぼすことになるアメリカ大統領選挙を中心に日本との関係が語られた。
日本のメディアの大半は、民主党のカマラ・ハリス副大統領を有力視していたが、共和党のドナルド・トランプ前大統領が再選をはたした。
鮫島氏は、日本の国際報道は偏っていると指摘。「まともに特派員として取材しているのは1割くらいで、CNNやニューヨークタイムスを翻訳し日本の外交官と食事すれば、仕事をした気分になっている」と痛烈にメディア批判を展開した。
さらに「ウクライナ戦争は、民主党政権を支える軍需産業・穀物メジャー・石油産業を潤わせており、円安ドル高で、米国企業はぼろ儲けしている」と述べ「その利益がバイデン政権に献金として流れている」と、戦争の背後にある利益構造を語った。
日本や欧米諸国で、既成政党への批判が高まっているが、共通するのは、(1)格差の拡大、(2)大手メディア不信である。「日本では、自民党は経済界、立憲は財務省の味方で、どちらも勝ち組」と鮫島氏は指摘したうえで「新聞記者時代、2大政党制を推進したが誤りであった」と振り返った。
講演後の質疑応答では、元県議会議員や企業関係者などから熱心な質問が出された。
地方議員や関係者による活発な意見交換
夕方5時からは天神テルラへ場所を移して政局意見交換会を開催した。会には自民党、立憲民主党など各党の地方議員や議員秘書を中心に、企業経営者や、大学教授、メディア関係者が参加した。
鮫島氏は昼の講演を踏まえて、政治の深部に入り込んだ講演を行った。講演後、地方議員や大学教授から活発な意見や質問が出された。
また、その後の懇親会においては、各テーブルで国政や地方自治体についての盛んな意見交換などが行われ、福岡市議による閉会の挨拶で、盛会のうちに終了した。
【近藤将勝】
<プロフィール>
鮫島浩(さめじま・ひろし)
ジャーナリスト、『SAMEJIMA TIMES』主宰。香川県立高松高校を経て1994年、京都大学法学部を卒業。朝日新聞に入社。政治記者として菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら幅広い政治家を担当。2010年に39歳の若さで政治部デスクに異例の抜擢。12年に特別報道部デスクへ。数多くの調査報道を指揮し「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。14年に福島原発事故「吉田調書報道」を担当して“失脚”。テレビ朝日、AbemaTV、ABCラジオなど出演多数。21年5月31日、49歳で新聞社を退社し独立。▼関連リンク
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