日中関係に一足早い春が訪れるか(前)
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11月16日午前、ペルーでAPEC首脳会議に出席した中国の習近平国家主席と石破茂首相が初めての会談をした。石破首相は10月10日にラオスで李強総理と会談してからわずか1か月で、中国の最高指導者である習近平主席との会談となった。中日両国の首脳が短期間で会談を重ねたのはここ10年余りでは見られなかったことで、両国関係が改善していることが示された上、関係を早期に改善したいという両首脳の強い意向や、中国政府の石破首相に対する期待感も表されている。
今回の首脳会談で明らかになった情報として、習主席は石破首相に対し、(1)日本人入国時のビザ免除措置を近々再開する、(2)日本の水産物の輸入規制を早期に解除する、という2つの贈り物を約束した。一方、石破首相は習主席に対し、台湾問題で「1972年の日中共同声明を守るという立場は少しも変わらない」との姿勢、経済協力問題で中国と、「デカップリング」するつもりはない、という贈り物を差し出した。
今回の会談はすなわち、近年の中日首脳会談のなかではとりわけ成果のあるものだったと言える。
中国が、わずか1カ月間で習主席と李強総理が相次ぎ就任直後の石破首相との会談に踏み切ったのはなぜか。
まず大きな要因として、米中関係の変化が挙げられる。
アメリカは2025年1月にトランプ氏が大統領に復帰するが、中国政府としてはハリス氏に比べれば望んでいた相手となる。前回の政権でトランプ氏の政治理念やスタイルが十分にわかり、手腕も分かっている。新政権となっても米中関係が根本的に改善することはまずありえず、逆に「アメリカ・ファースト」をもってハイテク分野や軍事面における中国への締め付けや対抗が一段と強まるであろうことも十分承知である。さらには中国の輸入商品に60%の追加関税を導入することも排除できない。
こうしたなかで中国は、日米両国が共同で中国に対抗することを懸念している。日本がアメリカの差し金ではなく、アメリカの協力者となることを望んでいるのだ。日本は安倍政権から岸田政権まで、インド太平洋戦略の策定に際し企画者かつ実行者であり続けた上、東アジア地域の安全保障強化に向けて英・仏・独などと同盟関係を形成していることに、中国は気づいているのだ。よって中国は、石破首相が東アジアの安全バランスを維持し、日本が中国と対抗するアジア太平洋安全保障連盟の中心役とならずに米中関係のバランスを維持するよう願っている。
ゆえに習主席は会談で、「中日関係は改善と発展の大切な時期にある。中日両国は近隣国で、アジアそして世界の重要な国であり、両国関係は二国間を超える重要な意義をもつ。中国は日本側とともに、『パートナーであり互いに脅威とならない』という重要な共通認識を守り、戦略的互恵関係を全面的に推進するよう共に努力し、新しい時代に合った建設的で安定した関係を築くよう努めたい」と強調したのである。
「建設的で安定した関係」を築くことは、石破首相が求めるものでもある。こうした意味で、両国関係は基本線で首脳間の合意をはたしたことになる。
またもう1つの要因は、中日両国の経済協力である。
中国の経済は、コロナ禍を経て、中国政府も予想できなかったくらいに落ち込んでいる。局面を挽回して経済を立て直すべくさまざまな策が打ち出されてはいるが、ここ1年余り、それらの政策もはかばかしい効果を上げていない。さらに日本も含めた外国企業が撤退する傾向もみられる。
(つづく)
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