日中関係に一足早い春が訪れるか(後)
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中国に進出している日本企業は3万2,000社余りを数え、外国企業のなかでは欧米にも増して主力の存在である上、中国人従業員の数も1,000万人を超える。さらに中日両国の年間貿易総額は3,000億ドルにも達している。しかしコロナ禍を経て、製造業で中国への投資を縮小する動きが進み、主な生産ラインを東南アジアやインドにシフトする傾向もみられる。その理由としては、アメリカによるグローバル産業チェーンの立て直しがあり、さらに中日関係が悪化していることで日本企業が中国市場への期待感を失いつつあることも挙げられる。加えて蘇州や深センで相次ぎ日本人の子どもが襲われる事件が発生し、企業の間で不安感が一層広まっている。
だからこそ中国は、経済の回復に支障が出ないように、「デカップリング」を防げるように日本との関係を改善し安定させる必要に迫られているのだ。
もう1つの要因として、中国側も日本の政局の変化を見据えている。石破首相は、田中角栄元首相の弟子であるゆえに中国に対してある程度の好意をもつ。また、政治問題を処理する際にかねてからバランス感を備えており、向こう見ずなことはしない。ライバルとの協力に長けているのだ。ただ自民党内ではこのような人物は少数派である上、自民党が先ごろの衆議院選挙で過半数の議席を確保できなかったことで、長期政権となり得るかはかなり不透明な状態である。それと、靖国参拝に固執し右翼的思想が強い高市早苗氏が虎視眈々と首相の椅子を狙い、政権の引きずりおろしを目論んでいる。従って中国は、外交面で石破首相を支持する一方、石破首相の在任中に関係改善を進めなくてはならない。台湾問題や南シナ海問題、アジア太平洋の安全保障問題における対立をほどき、新たな時代に見合った戦略的互恵関係を築く上で、重要な土台を固める必要がある。
日本人の入国ビザ免除が再開へ
石破首相からすれば、衆議院選挙に失敗したことで、内閣支持率の引き上げに向けて日米関係を強化し、日中関係を緩和するなど、急ぎ外交面で成果を出す必要がある。ゆえに習主席との会談で、「日中関係を安定的に進めていくため国民の納得と共感が不可欠だ。日中関係が発展してよかったと両国民が実感できるよう、具体的な成果を双方の努力で積み上げていきたいと述べている。
その「具体的な成果」とはつまり、日本人に対する15日間のビザ免除措置の早期再開であり、日本の水産物に対する輸入禁止令の早期解除であり、在留邦人の保護を一段と強化することである。
習主席は会談で、これらの「成果」について、水産物輸入については早期に話し合いで解決をし、日本人の安全を十分に守ると発言した。最新の情報では、ビザ免除については11月中に再開するとのことである(編集注:記事の脱稿は11月のビザ免除措置再開発表より前)。
これがつまり中国から石破首相への贈り物である。
初めてとなった今回の石破首相と習主席の会談は、当初予定されていた30分を超え、35分間にわたって行われた。また習主席は石破首相を一目見るなり当選を祝福するなど、会談の雰囲気もかなり友好的であった。石破首相が望んでいた、習主席と個人的に親しくしたいという当初の目的がかなったことを意味するものだ。
2025年4月には日本で、中日韓3カ国による首脳会合が行われ、李強総理が初めて訪日する。また石破首相もおそらく訪中をはたすだろう。2025年は中国にとって、日中戦争の勝利からちょうど80年となる年だが、日本との関係が順調に改善すれば歴史問題をめぐる長年の対立に終止符が打たれて、習主席の日本訪問もあり得るだろう。
今回の中日首脳会談で、両国関係が一足早く春を迎えるための土台がつくられたと言えるのではないか。
(了)
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