中国の情報戦略の要は“孫子の兵法”(中)
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国際未来科学研究所
代表 浜田和幸人民解放軍の幹部研修においても、「孫子の兵法」は最重要視されており、徹底的な学習が行われている模様です。というのも、孫子の兵法には今日にも応用できる戦略的なアドバイスが数多く述べられているからに違いありません。とくに、いわゆる「サブリミナル効果」を駆使して戦う前に勝負を仕掛けるという作戦について、現代社会においても各国が展開している情報戦そのものと言っても過言ではありません。
これはアメリカの大統領選挙などを見れば、容易に理解できるでしょう。世界各地の選挙にも、いわゆるマインドコントロールとしての情報操作が行われているわけです。中国の軍事専門家はアメリカの大統領選挙でトランプ氏が圧勝した背景には「トランプ流の情報操作が功を奏した」と指摘しています。
いずれにせよ、孫子の兵法は中国にとっては、とても都合のよい利用しがいのある知的財産と受け止められているようです。孫子の兵法の特徴は、2500年前も現在も未来も、人間の営みが欲にからめとられて争いや悲劇をもたらすという人間の心理を徹底的に分析したうえでの理論構築となっています。
じつは、550年前に一世を風靡し、今日においても「未来を正確に予言していた」と評判を呼んでいるノストラダムスも、孫子と共通点があるのです。ノストラダムスは25年には、大きな自然災害、天変地異が起きる可能性を4行詩というかたちで書き残しています。しかし、それは25年だけのことではないはずです。人類の歴史は自然災害との戦いの歴史ともいえます。そうであれば、驚き慌てふためくような必要はありません。なぜなら、異常気象や地球温暖化が極端に進み、エスカレートしてきていることは明らかですが、それはどの時代でも、どこの国でも起きてきたことですから。
ここで大切なのは、それによって、誰が、どういう利益を得ているのかに注目することです。そもそも異常気象というのは、本当に自然の営みのなかから出てきたものなのでしょうか。あるいは人間が温暖化を加速させるようなライフスタイルに傾いてしまったからなのでしょうか。背後には隠された真実があるはずです。孫氏もノストラダムスも、そのことに気づくように促しています。
24年のアメリカ大統領選挙戦の最中には、トランプ候補が何度も暗殺未遂にあっています。これも本当に狙撃犯がトランプ氏を狙ったのか、あるいはトランプ陣営が彼の支持率を高めるために、意図的にそういう暗殺劇を演出したのか。さまざまな見方が流布されたものですが、真相は闇の中に追いやられたままです。
もちろん、暗殺のターゲットになるのは政治家や経済人だけではありません。一歩間違えば、誰でもそうなる不安に満ちているのが現代です。24年秋に起きた、中国で日本人学校に通う10歳の男の子が殺された事件を見ても、どこでも起こり得るのです。
あの事件の後も中国政府は責任を認めず、「同じような事件はどこでも起こる」という言い逃れをしていました。「日本人学校の周辺の監視カメラ、監視体制をもっと強化し、安全に万全を期します」ということを、日本側に伝えてきただけです。それなりの効果があるのかもわかりませんが、なぜそういう犯罪行為が起こるのか、という根本の原因には向き合おうとしていません。
そのため、日本企業や欧米社会からは「中国は危ない。何が起きるか分からないので、駐在員は家族を連れて中国から帰国すべき」とか「中国への投資は見直し、他のアジア諸国に製造や販売の拠点を移すべき」との「中国回避」論が出てきました。アメリカ政府とすれば、間接的に「中国封じ込め」ができるというわけです。
社会全体の治安が悪化することによって、警備ビジネスやセキュリティ会社はどんどん契約が増えており、また携帯での位置情報をしっかり把握することによって、危険を未然に察知させる、警告するといった新しいサービスも次々と登場してきました。
しかし、そういうことの延長線上にどんな状況が待っているかということを、ノストラダムスは予言しています。人工知能が社会を支配する。要するに、人間と機械というものが一体化する。結果的に人間が機械に左右される。そういうような状況も、十分あり得るということを示唆しているのです。
また、これまでアメリカはドルという国際基軸通貨を握ることによって、必要なものを世界中から調達でき、世界を支配下に置いてきました。ところが、グローバルサウスの国々を中心にして、「ドルをいくら溜め込んでいても、ある日突然、紙くず同然になるかもわからない」との気づきが生まれています。
(つづく)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連記事
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