2025年01月08日( 水 )

海軍力の増強にまい進する中国(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

最も重要な海軍力

アメリカ海軍 駆逐艦 イメージ    海運とは、海上ルートを利用し、船舶で貨物や旅客を運ぶことを指す。船舶で貨物を運ぶメリットは、一度に運べる量が多く、かつ輸送コストがほかの運送手段より安いことだ。そのため現代の貿易は、海上輸送に大きく依存している。そのような状況下においては、海上で船舶が安全に運行するための強力な海軍力が求められる。今までは世界最強である米国の海軍力によって、日本や韓国は安全保障と経済的繁栄を謳歌してきた。ところが、中国が海軍力の増強にまい進し、米国とのパワーバランスが崩れようとしている。

 海軍力は海軍が保有している軍艦の数で測られることが多い。軍艦の種類は、任務と排水量によって分けられる。まずは敵を攻撃する任務を担う「戦闘艦」と戦闘艦を後方でサポートする「支援艦」がある。また、戦闘艦は巡洋艦、駆逐艦、護衛艦、哨戒艦などに分けられる。そして、このようなさまざまな艦艇を指揮するのが空母である。米国の空母艦隊は、中小国家の火力をしのぐほどの火力を有しており、その破壊力はすさまじいものだという。

米シンクタンクのレポートが警告

 米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によると、中国が現在のペースで艦艇の数を増やしていけば、米中覇権戦争において中国が米国を打ち負かすことになるだろうと警告している。同報告書によると、1,000t以上の軍艦数は中国が234隻と米国の219隻を上回っており、世界最大規模を誇っているという。

 現在は海軍力が最もモノをいう。同報告書では中国の海洋戦力強化に対して米国は早急に対応しないと、米国は覇権を維持できなくなるかもしれないと警告を発している。歴史を振り返ってみると、海上戦では必ずと言っていいほど、相手より大規模な艦隊が勝利しており、28回のうち25回の海戦で艦隊数が多い方が勝利しているという。この問題を解決するため、米国は艦艇の設計能力と建造能力を早急に高める必要があるとされている。

米中の海軍力を比較

 米海軍が駆逐艦を73隻保有している一方、中国は42隻保有している。数の上では米軍がまだ有利だが、中国の駆逐艦は2003年の20隻から23年には42隻に増えるなど、増強のペースが速い。また、中国の戦闘艦の約70%は10年以降に建造されたものであるのに対し、米国の戦闘艦は造船業衰退の影響を受けて古いものが多く、10年以降の艦艇は25%に過ぎない。

 米国と中国の艦艇を比べると、サイズの大きい空母や駆逐艦などは米国が優位で、中国は規模の小さい艦艇が中心で、数の面では中国が優位にたっている。海上戦はどの方角からも攻撃ができるので、数が多いことが有利であるという研究結果も出ている。中国は米国が台湾海峡を封鎖しようとしたときに、それを無力化するために海軍力の増強に力を入れているようだ。いずれにしても、中国は世界一である造船業の強みを生かし、海軍力でも米国をしのごうとしている。艦隊の規模や数を見ると、米海軍は中国海軍のペースに追い付いていないのが現状である。

(つづく)

(後)

関連キーワード

関連記事