2025年01月08日( 水 )

海軍力の増強にまい進する中国(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

米国の弱点は造船業の衰退

横須賀港に停泊している整備中の米軍の軍艦 イメージ    海戦は長期化すればするほど、自国の艦艇建造能力が重要となってくる。良い例は日本が真珠湾攻撃を仕掛けたときのことだ。その当時、米国は2隻の艦艇しかなかったが、損傷した艦艇をすぐ修理したり、新しい艦艇を建造したりする能力があったので、戦争が終わった時点で、艦艇は25隻になっていた。一方、日本が同期間中に建造できた艦艇は2隻に過ぎなかったという。

 中国の艦艇建造能力が世界一である一方、米国の造船業は衰退の道を歩み、中国とは比較にならないような状況である。米国は人材不足で、艦艇が故障しても修理できず、時間がかかってしまうのが現状である。

 24年の世界の船舶建造能力を比較すると、中国が40%で1位、韓国が35%で2位、日本が20%で3位となっている。新規船舶受注量においては、中国は66%で断トツのトップとなっている。一方、米国の新規船舶受注量は世界の0.1%に過ぎない。このような状況下、現在でも中国は数のうえで米国を抜いているが、建造能力を合わせると、中国の脅威が現実的であるという同レポートの内容に賛同せざるを得ない。

 米国にはジョーンズ・アクトという法律があり、米国で運行する船舶や艦艇は米国内で建造しないといけないことになっている。この法律があるかぎり、米国の艦艇を他国で調達することもできない。しかし、艦艇の修理などを外国に依頼しようとする動きはあり、米国の海軍トップが日本と韓国の造船所を訪問したというニュースも流れた。衰退した米国の造船業は立て直すことが難しく、日本と韓国の造船所を米国に建設して解決しようとする動きもあるだろう。

 最近、韓国の造船会社が米国の造船会社を買収し、米国に拠点をつくった。覇権争いにおいて一番大事な海軍力の補強に米国もアクションを起こすときだろう。

韓国や日本の造船業との連携も視野に

 造船業の覇権はイギリスから日本に、その後、韓国へと移ったが、現在は中国が造船業界において圧倒的な存在感を示している。

 世界最大の造船所が中国にあるのはいうまでもない。一時期、韓国は技術面で中国をリードしていたが、最近は中国の優位が鮮明になりつつある。

 上記レポートで指摘されているように、米国はこのような状況を放置しておくわけにはいかない。中国の台頭を抑えるため、米国は同盟国である韓国と日本の力を借りるしかない。米国の軍事費は圧倒的で、その軍事力をベースに世界の覇権を維持している。しかし、今後も中国を抑えて海軍力を維持するためには、潜水艦や艦艇を韓国や日本の造船会社に発注することになるかもしれない。

 半導体やほかの分野で中国をけん制するのと同じように、造船でも中国をけん制する動きが顕在化してくるだろう。どのようなビジネスモデルになるのかは、未定であるが、場合によっては中国に対するけん制が、韓国の造船業の追い風になるかもしれない。米中の覇権争いは、今後ますます熾烈になっていきそうだ。

(了)

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