2025年01月09日( 木 )

警戒強まるJR東海財務健全性

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回はリニア中央新幹線の問題点について指摘する1月8日付の記事を紹介する。

リニアとMRJとコンコルド。

「失敗するものが一時的に良くなるように見える場合でも、そのまま失敗したほうがダメージは小さい」

三菱重工業は国産ジェット機開発に巨大な労力と資金を注いだ。しかし、失敗した。撤退は早ければ早いほど痛手は軽微になる。三菱航空機の累損が8,850億円、親会社である三菱重工業の関連資産の評価損が1,430億円。1兆円の損失を生んだ事業だった。撤退の判断が遅れた分だけ損失額は膨らんだ。コンコルドは開発段階から開業後の赤字が予測されていた。しかし、動き出した船体を止めることは難しい。商業飛行に突入したがあえなく廃業に追い込まれた。

21世紀版のコンコルドと見られているのがリニア中央新幹線。JR東海は2027年度開業を公表していたが撤回した。現時点で開業は見込めない。静岡工区が着工されていない。しかし、静岡のために工期がずれ込んだというのはウソである。静岡以外の工区も著しく遅滞している。リニア中央新幹線の建設に反対し、「ストップリニア!?訴訟」の原告団長を務める川村晃生慶応義塾大学名誉教授による解説をご覧いただきたい。

2023年6月24日、「たんぽぽ舎」における川村晃生氏と広瀬隆氏による講演

「川村晃生〈行き詰まるリニア、窮地のJR 東海〉ストップリニア!訴訟を原告738名で提訴」

【「原発大暴走を斬る+リニア新幹線を斬る 」】
https://www.YouTube.com/watch?v=_Hxdel9H-2s

川村氏は7つの問題点を挙げている。

1.JR東海の財務不安定性

2.残土処理

3.南アルプストンネル掘削の難度

4.都市部大深度工事の難度

5.静岡工区問題

6.全面的な工事遅延

7.膨大なエネルギー消費

当初、リニア中央新幹線はJR東海の民間事業だった。ところが、2016年11月に財投資金3兆円の投下が決定された。安倍晋三首相とJR東海葛西敬之氏による談合決着だった。工費は当初5.5兆円とされたが財投資金が3兆円上乗せされた。今後、どこまで費用が膨張するか不明である。巨大債務にJR東海が耐えられるか。JR倒壊に社名が変更される可能性がある。

1月5日付東京新聞、北陸中日新聞がリニア工事の遅れを大報道した。なぜか、名古屋が拠点の親企業である中日新聞はこの重要ニュースを報じていない。18工区で27年に工事が完了しないことが明らかにされた。工事に着手できていない南アルプストンネル=静岡工区の問題は単なる水問題でない。静岡県の大井川流域の住民が生活用水、農業用水、工業用水としての水に特段の警戒感を保持していることは事実。静岡県の川勝平太知事が静岡県民の意思を代表して静岡工区の工事着工を認めてこなかったことは大いなる業績である。

しかし、水の問題以外にも重大な問題が存在する。それは、南アルプストンネル工事が未曾有の危険をともなう工事になること。南アルプスを構成する土壌が軟弱地盤であると見られている。山系全体を破壊する恐れも指摘されている。また、南アルプス山系自体が世界でも類例を見ないスピードで隆起している事実がある。

リニア新幹線はフォッサマグナを貫通する。リニア経路で断層にズレが生じればリニアは粉砕される。南アルプストンネルでは地表から2000mの深さのトンネルが掘削されることになっているが、発生土の処理方法も確定していない。品川-名古屋が開業しても採算が取れない可能性が高い。

JR東海が自己責任で事業を実施しているならまだしも、国民の血税が投下されている。国民が口を差しはさむべき事業である。2025年のリニア中止決断が強く求められる。

※続きは1月8日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「警戒強まるJR東海財務健全性」で。


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