2025年01月09日( 木 )

縁の下の力持ち、鉄筋工事の魅力を伝え続ける

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(株)岩田鉄筋工業
代表取締役 黒木実 氏

(株)岩田鉄筋工業 代表取締役 黒木実 氏

 鉄筋工事は、建物の駆体をつくる重要な工事だが、建物内部の工事のため目立たず、魅力を伝えることが難しい──(株)岩田鉄筋工業の代表取締役・黒木実氏は話す。同氏に、業界環境の現状や職人不足への対応策などを聞いた。

鉄筋工事業とは

 ──躯体三役の1つである鉄筋工事業について、お聞かせください。

 黒木 鉄筋工事業は、建物の駆体をつくる重要な部分を担っています。そのため検査も多く厳しい業種でもあります。鉄筋コンクリート造の建物の場合、鉄筋を組んだうえでコンクリートを流しこむのですが、流し込んだ後は見ることができなくなります。ですので、まず鉄筋を組んだ段階で検査を受けます。柱のなかに何本入っているか、規格に合っているかといったことについて、場合によって検査は二重三重に行われます。そのくらい鉄筋工事は駆体を支える重要な部分を担っており、コンクリートを流し込んだ後はやり直しがきかない工事でもあるため、慎重に行う必要があるのです。

 ──御社の概要および強みについて、お聞かせください。

 黒木 当社は1976年6月に、先代の岩田順一が岩田鉄筋工業を創業したのが始まりです。その後、91年5月に(株)岩田鉄筋工業として法人化しました。

 私は宮崎県出身で、学校卒業後はいろいろな経験をしようと思い、トラックドライバーとして大阪や広島で働いていました。私が34歳のころ、叔父にあたる先代が「トラックの運転手が必要だから、福岡で仕事をしないか」と言われ、当社に入りました。

 トラックドライバーとして入社したのですが、当時はトラックの運転手とか鉄筋屋とか区別がなく、鉄筋を加工場からトラックに乗せて現場まで運び、そのまま鉄筋を組んで帰ってくるという作業を行っていました。そのころの職人は大卒の方々よりも給料が高かったですね。職長さんたちもすごく羽振りが良かった印象です。その後、2005年4月に先代が亡くなり、会社を潰すわけにはいかないと、私が2代目社長になりました。

イメージ    鉄筋工事には、加工した鉄筋を配筋し鉄筋同士を結合する鉄筋加工組立て工事と、鉄筋同士を突き合わせて結合する圧接工事があります。当社の強みは、その両方を行うことができることです。また、風通しの良い社風で、上からの指導が行き渡りやすいことも強みの1つでしょう。また、どのような現場でもすぐに対応する機動力にも自信があります。

 ──社長に就任してまもなく、リーマン・ショックが訪れますが、どのように乗り切ったのでしょう。

 黒木 当時は本当に厳しかったです。仕事量も減りましたし、それにともない労務単価がとにかく下がりました。鉄筋工事は職人がいないとどうにもなりません。私よりも社歴が長い方もおり、職人も家族みたいなものでしたので、当社はリストラを行いませんでしたが、同業者には大幅リストラするところも少なくありませんでした。リストラせずに乗り切るため、対馬などの遠方の現場にも職人を送り、雇用を続けてきました。

 ここ数年は、福岡は活況です。リストラしなかったことが、今になって生きてきています。職人もそろっていたため引き続き受注することができているからです。

課題は魅力発信

 ──鉄筋工事業界の課題について、お聞かせください。

 黒木 やはり職人不足です。とくに若手の入職者確保は大きな課題となっています。鉄筋工事は建物をつくるためには、なくてはならない業種です。さまざまな立派なビルにも鉄筋は使用されています。しかし、ビルの外観から鉄筋は見えません。その鉄筋工事の魅力を伝えるのはとても難しいと感じています。私も職業案内で中学校や高校などにうかがった際や、面接を行う際、鉄筋工事業という業種をいかに伝えるか苦心しています。

 そもそも建設業、とくに専門工事業には入職希望者が少ない状況です。入職者を増やすためには、所得面も他産業以上にならなければならないと考えています。そのためにも、労務単価交渉は必要です。もちろん、私たちも常に元請と交渉は続けており、単価を適正価格まで上げてもらうように努力はしています。

職人不足への対応

 ──若年入職者および職人不足への対策をお聞かせください。

 黒木 当社では外国人は雇用していませんが、若年者の入職者が少ない現状では、外国人に頼らざるを得ず、今後は考えていかなければならないでしょう。

 また、女性職人の受け入れも考えています。1時間、2時間といった短時間だけ働きたいというシングルマザーの方も多いと聞きます。現場ではなく工場の作業員として働いていただくことも可能ですので、鉄筋工事業を含む専門工事業には女性がこない、という固定観念を除き、視点を変えてみることも必要だと考えています。

イメージ    重ね重ねですが、鉄筋工事業の魅力を伝えていくことが必要です。さまざまな建物づくりに携わる鉄筋工事業は、私にとってはとても魅力的です。九州鉄筋工事業団体連合会の総会でも、福岡以外の他県は仕事のボリュームが少ないと聞いています。とくに私の出身地である宮崎県では、年間の仕事量が限られており、鉄筋工事をしながら農繁期には農業を行っているとも。そういった点では、福岡を拠点とする我々は非常に恵まれた環境にあるはずです。簡単ではありませんが、これからも若者や女性、多くの方に試行錯誤しながら、鉄筋工事の魅力を伝える努力を続けてまいります。

【内山義之】


<プロフィール>
黒木実
(くろき・みのる)
全技連マイスター(鉄筋施工)
1962年1月生まれ、宮崎県延岡市出身。宮崎県立延岡工業高等学校を卒業後、ドライバーを経て、1996年1月に(株)岩田鉄筋工業に入社。2005年4月に同社の代表取締役に就任した。趣味はゴルフ。

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