入契法適正化指針を改正へ
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国土交通省は12月2日、中央建設業審議会総会(中建審総会)を開催。「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(適正化指針)の改正案を示した。
国や地方自治体などの発注者は、入契法に基づき国土交通大臣と総務大臣、財務大臣が案を作成し、閣議決定する適正化指針に従って必要な措置を講じる努力義務があり、措置の状況報告を求め、概要を公表する。国交大臣と財務大臣は省庁に、国交大臣と総務大臣は地方自治体に対し、とくに必要と認められる措置を講じることを要請、今回の品確法改正により勧告も追加する。各省庁や地方自治体への勧告では、改善措置を要請しても改善しない際は勧告を行い、勧告を受けた場合は、直ちに措置を講じる必要がある。今回は中建審総会の内容を基に、適正化指針の改正案をまとめる。
中建審総会の冒頭、国土交通省の平田研不動産・建設経済局長は、「担い手の確保が建設業の喫緊の課題。労働者の処遇改善、働き方改革などを通じて、社会資本の整備と管理の担い手や地域の守り手である建設業の持続可能性を実現していく。民間工事を牽引する公共工事では、これらの取り組みを一層推進していく必要がある。建設業法や入契法のほか、議員立法である品確法も改正した。一連の改正法により新たな制度を施行するが、担い手確保の実現に向けては、実効性の確保が極めて重要だ。本日は最近の建設業の状況や改正建設業法の施行に際し、具体的な対応について報告する」と挨拶した。
続いて、第三次・担い手3法など最近の建設業をめぐる報告の後、適正化指針の改正の審議が行われた。改正骨子案は、「入契法・建設業法改正」「品確法改正」「昨今の課題への各対応」の3点のポイントで構成される。
入契法・建設業法改正での対応では、円滑な価格転嫁に向けた環境整備(誠実な契約変更協議の実施など)を明記した。公共工事は従来でもスライド条項の適切な運用を働きかけてきたが、過去の変更実績がないことで協議に応じないのは改正法の趣旨に反する恐れがあるため、改めて記載し、同様な趣旨の内容を品確法への対応でも盛り込んだ。
公共工事の現場管理でのICT活用の推進(CCUS活用)では、改正法を踏まえ、情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工の確保のためのICT指針を重視。ICTを活用する現場管理は、公共工事の受注者の努力義務とした。発注者はそのための助言を行い、適正な施工の確保のための情報通信技術の活用をポイントとした。
このほか、①入札契約の適正化を図るための発注体制整備(項目建ての追加)、②配置予定技術者の専任・兼任状況の確認、③発注者に対する要請、勧告、④技能労働者の処遇改善を記している。
品確法改正での対応では、行政機関は土木部局だけではなく財政部局とも連携し、施工時期の平準化への取り組みへ対応する。このほか、①円滑な価格転嫁に向けた環境整備(スライド条項の適切な運用など)、②発注関係事務におけるICT活用(電子契約、書類電子化)、③週休2日工事の推進(工期・予定価格の適正設定)、④地域の実情を踏まえた適切な入札参加条件・規模の設定、⑤災害対応力強化(適正積算、復旧・復興JV活用)が盛り込まれた。
さらに、昨今の課題への対応では、①入札契約に係る情報公表の原則インターネット化、②ピークカット(繁忙期の解消)による平準化の推進、③時間外労働規制に対応可能な工期設定、④工期設定における猛暑日の考慮、⑤多様な人材の確保に向けた環境整備(快適トイレ)などを基本的な考えとした。
(一社)日本電設工業協会(電設協)の文挾誠一会長は、「スライド条項の運用では策定や公表について努力義務を課しているとのことだが、策定内容を公表していない発注者もあり、早期にスライド条項を導入するよう一層の働きかけを求める」と指摘。これについて国土交通省は、「スライド条項は、運用の基準を定めないと発動できないこともあり、とくに小規模地方自治体では、そもそも基準が存在しないところもある。国土交通省としては、発注者に対してスライド条項の基準策定を促しているが、策定していない発注者に働きかけをより強める」とした。
また、(一社)日本建設業連合会(日建連)の押味至一副会長(土木本部長)からは、「日建連としては詳細なデータをまとめ、民間工事も含めて価格交渉ではデータを活用し、交渉事では当たっているため、データの採用をお願いしたい。また、電気や鉄道などの民間土木も多く発注があり、国土交通省から応援をいただきたい。本日の議題すべてのテーマについて、民間土木への波及を進めてほしい」と提案があった。この意見に対して、国土交通省は、「適正化指針では、発注者(国、地方自治体、特殊法人など)は適正化指針に従って必要な措置を講ずる努力義務があるとしており、民間の優良事例を集めて、横展開できるようにし、すそ野を広げていきたい」とした。
【内山義之】
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