福岡再開発2025　周縁部でも再開発進む（後）

福岡家庭裁判所跡地

    中央区大手門の福岡家庭裁判所跡地では、野村不動産、東京建物、西日本鉄道、九電不動産（株）のグループによる再開発が進められようとしている。

　同跡地は、18年8月に中央区六本松の「福岡高等・地方・家庭・簡易裁判所及び検察審査会合同庁舎」に移転・集約された福岡家庭裁判所の跡地で、大濠公園と舞鶴公園に隣接する敷地面積5,133m²の国有地である。その跡地活用に際しては、福岡市も22年9月に地方公共団体の立場から跡地活用に係る基本的な考え方を提示しており、目指すべき導入機能として「国際的なMICE誘致に資する都市機能としてのラグジュアリーホテル」「セントラルパーク構想と親和性の高い賑わい施設」「快適なビジネス環境を創出するオフィス」を挙げていた。その後、財務省福岡財務支局によって企画提案および価格競争の二段階一般競争入札が行われ、24年1月に野村不動産らのグループが落札者となった。

　野村不動産らのグループによる提案では、地上23階・地下1階建、延床面積4万8,400m²の複合ビルを建てる計画で、1階部分はセントラルパークの賑わいを“つなぐ”緑とアートの広場空間となる。また、2～3階はオフィス、10～23階は全255戸の高品質なレジデンスとなるほか、4～9階には福岡初進出となる英・高級ホテル「インターコンチネンタルホテルズ&リゾーツ」が入居する。新たな再開発ビルは29年12月末（29年第4四半期）までに竣工する予定で、30年3月末（30年第1四半期）の開業を目指していくとしている。
　なお現在は既存建物の解体工事が行われた後、26年2月末までの期間で埋蔵文化財の発掘調査が行われている。

サンセルコ

    中央区渡辺通の複合施設「サンセルコ」も、そろそろ再開発が動き出す可能性が高まってきている。

　サンセルコは、福岡市の再開発事業「渡辺通地区第一種市街地再開発事業」によって1979年2月に竣工、同年3月に開業した複合施設で、建物は地上10階・地下2階建の構造。地下1階～地上4階までは主に店舗が、5階～10階まではオフィスが入居しており、隣接する「ホテルニューオータニ博多」とはテラスや連絡通路などで往来が可能となっている。すでに開業から40年以上が経過し、施設自体の老朽化が進んできているうえ、商業部分では空きテナントの増加も目立っており、これまでにも建替えによる再開発が検討されてきた経緯がある。

　だが、通常の商業施設やオフィスビルのような賃貸での入居とは違い、サンセルコの場合は「区分所有」となっており、意思決定が難航しやすいという難点がある。過去には18年10月に、管理組合法人が通常総会で建替えに向けた決議を行っていたことが報じられたことがあるが、これまでに表立って具体的な建替えの動きは進んでいないのが現状だ。さらに、23年9月には商業部分の運営を行うサンセルコ商業協同組合が破産。ビル自体の管理を行うサンセルコビル管理（株）が存続しているため、ビル運営は継続中ではあるものの、商業施設としては歪な状況となっている感は否めない。

　そうしたなか、09年に開業した優良運転者向けの運転免許更新センター「ゴールド免許センター」が、24年11月29日をもって業務を終了。博多区千代の福岡県千代合同庁舎内に移転し、12月16日より千代優良運転者免許更新センター（千代ゴールド免許センター）として業務を開始した。福岡県警察としては、サンセルコの建替えを見据えて退去・移転を決定したと見られるが、一定の集客力が見込まれるゴールド免許センターを失ったのは、サンセルコとしてはかなりの痛手だ。今後、これまでゴールド免許センターの恩恵を受けていたテナントの退去が連鎖的に進み、商業施設として立ち行かなくなる可能性も否定できず、もはや建替えによる再開発は待ったなしの状況になってきたといえるだろう。

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    福岡市内では今回取り上げたほかにも、再整備が進む須崎公園の一角で25年3月の開館を予定する「福岡市民ホール」や、同じく25年3月にグランドオープンを迎える福岡空港の国際線ターミナルビル、大濠公園の南側隣接地で29年度の開館を予定する新たな福岡県立美術館、24年8月に閉館した「マリノアシティ福岡」の跡地再開発など、さまざまな再開発プロジェクトが控えている。こうした多数の再開発が進んでいることは、福岡市の都市としてのポテンシャルが評価されていることの表れだと思われる。今後も再開発によって都市の新築代謝が進んでいくことで、福岡市がさらに発展していくことを期待したい。

（了）

【坂田憲治】