2025年01月10日( 金 )

話題沸騰の量子コンピューター(前)

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劉明鎬 氏

「量子コンピューター」とは

量子コンピューター イメージ    ケタ違いの計算能力の高さをもち、次世代コンピューターとして期待されている「量子コンピューター」に最近、急激に世間の注目が集まっている。

 というのは、米Googleは昨年12月9日(米国時間)、105個の量子ビットを搭載する量子コンピューターチップ「Willow」を発表した。最新のスーパーコンピューター「Frontier」で10の25乗年かかる計算を5分未満で実行したというので話題となった。同社は2019年にも量子優越性(量子コンピューターの計算能力が従来のコンピューターが到達しえない能力をもつこと)を実証したことを契機に、研究開発が加速していたが、技術の進化は一歩進み、量子コンピューターの実用化への期待が高まっている。

 原子は物質をそれ以上分解できない最小の単位で、原子は原子核と電子で構成されている。量子力学という学問は、原子核や電子などの動きを研究する学問である。「量子コンピューター」とは、量子力学の原理を利用し、既存のコンピューターに比べて、大量のデータを一度に処理できる次世代のコンピューターのことを指す。量子の特徴である量子の「重ね合わせ」や量子の「もつれ」などを利用して、コンピューターが処理できる情報量を劇的に改善させたコンピューターのことだ。量子コンピューターの実用化に取り組んだのは、1980年代からである。

 その後Google、IBM、Microsoftなどの大手テクノロジー企業やベンチャー企業、それに各国の研究機関などが量子コンピューターの開発を進めており、今日では量子コンピューターの開発は非常に活発である。とくにAI市場が急激に拡大するにつれて、処理しなければならないデータ量が膨大となり、量子コンピューターの技術が求められている。

高速処理の仕組みは

 量子コンピューターと区別するため、従来のコンピューターを古典コンピューターと呼ぶ。従来型である古典コンピューターは、「ビット」と呼ばれる情報の単位を使用している。ビットは0または1の値を取り、この2つの数値を利用して情報を符号化している。そのため、一度に1つの情報だけが処理でき、順次のデータ処理をする。

 一方、量子コンピューターでは、「量子ビット(qubit)」という情報の単位を使用している。量子ビットは一度に0と1の両方の状態をもつことができ、量子ビットを利用すると、複数の状態を同時に表現できて、一度に多くの情報が処理できるようになる。その結果、量子コンピューターでは計算速度が格段に上がり、特定の問題について古典コンピューターよりもはるかに高速に解を見つけることができるようになる。 

 しかし、量子ビットはノイズに弱く、計算中にエラーが起きやすい性質がある。量子ビット数が大きくなればなるほどエラーが増加し、量子コンピューターの実用化を妨げている。ところが最近、量子ビットが増えてもエラーが増加しない技術などが登場し、量子コンピューターの期待が高まっている。すなわち量子エラー訂正の技術が進化しつつある。

(つづく)

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