2025年の日本株式展望~主役はM&Aブームと自社株買い~(後)
-
NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は1月20日発刊の第372号「2025年の日本株式展望~主役はM&Aブームと自社株買い~」を紹介する。企業買収と自社株買いブームが起き始めた
今の日本に同様の動きが起きている。東証・金融庁によるPBR1倍以下の企業の是正要求、日経新聞「私の履歴書」へのKKR創業者ヘンリー・クラビス氏(30年前は米国でも野蛮人と言われていた)の登場など、日本の政策と企業社会はM&A受容へと驚くばかりの姿勢変化を見せた。カナダ企業であるアリマンタシ ォン・クシュタール(ACT)によるセブン&アイホールディングスの買収提案は、資本の効率性をないがしろにし、低株価を放置してきた日本の株式市場に大きく活を入れるものになった。日産・ホンダの経営統合も台湾メーカーの 鴻海による日産買収意向が伏線となっている。またニデックが工作機械の老舗牧野フライスに対するTOBを発表したが、ニデック創業者の永守氏は「中国の脅威の前に時間はかけられない」との弁を述べた。
時価総額44兆円の日本最大企業のトヨタですら買収のターゲットになり得る。販売台数ではトヨタの6分1のテスラは、株式時価総額では1.38兆ドル(210兆円)とトヨタの4.7倍の規模にあり、M&Aの餌食になりかねない。先月末トヨタが現在11%であるROE(自己資本利益率)を20%に引き上げると発表して市場を驚かせたが、巨額のキャッシュを抱えて安閑としてはいられなくなったのである。日経新聞は、トヨタは「2024年9月に25年4月までの自社株取得枠を1兆2,000億円と従来から2割引き上げた。前期配当総額は1兆円を超え、配当と自社株買いを合わせた総還元性向は今期に5割を超す可能性がある」と伝えている。
このようにして日本は米国で確立した「株式資本主義」に急速にシフトし、一大自社株買いブームが起き始めている。図表9のFTによる株式数を年間1%以上減少させた企業の割合(MSCI対象企業)を見ると、ここ3年間の日本企業の増加が際立っているが、顕著な変化はむしろこれからであろう。
日本株式は株式益回り6%、国債利回り1%と国債に比して著しく割安であるが、その割安さは企業による自社株買いと配当増による株主還元によって、是正されていくだろう。そしてこの株高はNISAを通して資産運用を高め始めた家計、いったん購入した日本株を売り切った外国人、GPIFに準じて積極運用を政府から求められている公的年金基金など多くの投資主体の日本株買い意欲を高めざるを得ない。
懸念は日銀の前倒しの利上げと財務省による増税路線の顕在化である。2022年の岸田ショック、2024年の植田ショックのように性急な引き締め路線が株価の上値を抑えることがたびたび起きるかもしれない。
(了)
法人名
関連キーワード
関連記事
2025年1月20日 15:052025年1月17日 16:002025年1月16日 18:252025年1月16日 16:402025年1月14日 16:202025年1月10日 10:402024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す