2025年01月30日( 木 )

【連載】コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生(13)

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 元福岡市職員で、故・山崎広太郎元市長を政策秘書などの立場で支えてきた吉村慎一氏が、2024年7月に上梓した自伝『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』(梓書院)。著者・吉村氏が、福岡市の成長時期に市長を務めた山崎氏との日々を振り返るだけでなく、福岡県知事選や九州大学の移転、アイランドシティの建設などの内幕や人間模様などについても語られている同書を、NetIBで連載していく。

国会での主な質問

 広太郎さんの国会での質問の主なものを紹介しておきたい。

《政治改革関連法案〜賛成討論から》平成5年(1993)11月18日

 竹下、海部、宮澤内閣が倒れ、細川内閣が年内成立を公約した政治改革関連法案が120時間を超える審議を経て本会議に上程され、連立与党を代表して広太郎さんが賛成討論に立った。政治改革が最大の争点であった先の総選挙で全国最多得票を得た広太郎さんにとって宿命ともいえる登壇だったと思う。改めて読み直すと、後のその著書『紙一重の民主主義』(PHPパブリッシング、2012)で訴えた国民主権の思想がにじみ出ている内容である。

 「私はまず、このたびの政治改革に対し、与野党を問わず、我々が取り組んできた政治改革の目的は、選挙制度や政治資金制度の改革によって政治への国民の信頼を回復し、かつ、現在の国内外の政治課題に的確に対応し得る政治システムを構築することであります。しかし、私がここで改めて申し上げたいことは、今回の政治改革で我々をして法案成立に向かわしめた熱意は、我々議員の胸に一貫して流れる政治哲学である、主権者は国民であるという思いであり、国民主権という共通の精神であったと思うのであります。(拍手)三十八年におよぶ我が国政治における自民党の長期政権は、冷戦構造下において国民の選択肢が極めて限られていたということもありますが、またこの間、我が国の経済の発展と国民の福利向上に多大な貢献を果たされたことを評価するものではありますが、やはり国民主権のかたちは薄らいだことも否めないのであります。我々は、ここで改めて、主権者である国民の登場を希求するものであります。このたびの政治改革関連法案については、政府案にしても自民党案にしても共通していえることは、小選挙区比例代表並立制を導入して、民意の集約と反映を図ろうとするものであり、これまでの利益誘導型の政治から、政策本位、政党中心の政治へと転換しようとするものであります。(拍手)私は、この政治改革に対する我々の意図するところを国民に理解していただき、今後の我が国の政治に対し、強い関心と自覚をもって、積極的かつ意欲的に参加されんことを強く訴えたいのであります。(後略)」

《衆議院本会議代表質問》平成7年(1995)2月14日

 1月17日に発災した阪神・淡路大震災を受けて、4日後に現地入りしてつぶさに現地の状況を把握したうえで、地方交付税法改正案等の代表質問に際し、政治責任の在り方について質問。被災地に責任転嫁したかのような村山首相の答弁は国会で問題化し、山崎質問のペーパーがあちこちに飛び交った。この質問は地方交付税法改正案に対する代表質問だったので、僕の方で原稿はつくっていたが、質問前日の深夜議員宿舎に帰ってきて、冒頭の政治責任に関する部分の差し替えの原稿を便せんに書き付けていた。「読んでみてよくないなら、お前の原案で行く」とのことだったが、読んでみて感動した。「これは僕にはとても書けません。凄いです。これが政治家の言葉なのでしょう。もちろんこれで行きましょう」と返事した。広太郎さんの机の周りには一枚の書き損じもないし、便せんに修正の跡もなかった。以下がその質問である。

 「阪神大震災は、災害規模の未曾有の点、そして初動態勢の有無や有効であったかどうかが問われなければならない点において、戦後最大規模のものであり、まさに総理がおっしゃいましたように、初めてのことでありました。国民は、二日二晩、燃え続ける神戸市をテレビで見続けるしかなかったのであります。死者1人という情報からスタートして、ついには五千人を超えるという信じがたい結果が招来したのであります。その原因は何か。総理を初め、待つ姿勢しか持ち得なかったからであります。間違いない判断、的確な判断がもたらされるのを誰もが待った結果にほかなりません。常に官僚の判断に依存してきたがために、間違いない判断を待つ、それがこれまで培われてきた我々に共通の習性ではなかったでしょうか。「間違いのない」ということにこだわり、「あえて」ということのない今日の政治・行政システムが、今度の阪神大震災への対応を性格づけていると言って過言でないと思います。そのことが、これほどの大災害の結果を前にして、誰も責任をとらないという結果をもたらしております。この重大な結果を前にしても、誰もその責任を明らかにしようとしない政治とは一体何なのかということであります。ここで政治が責任を明らかにしなければ、ついに政治がイニシアチブをとることはないということを指摘したいと思いますが、総理の御見解をおうかがいいたします。(後略)」

(村山総理答弁)
 「地震発生直後の初動期の対応についていろいろと御批判のあることは私としても十分に承知をいたしており、今後は、今回の経験に照らし、反省すべきところは率直に反省をして、震災対策に万全を期していく所存でございます。なお、一月二十日の本会議において私が初めてのことと答弁したことについて触れておられますが、現場における関係自治体の職員や、警察、消防、自衛隊などの防災関係者が、みずからも被災者となりながら、困難な状況のなかで不眠不休の救援活動を続けておられることにつきましては、皆さんも御承知のことと思います。私が本会議で、初めての経験であり早朝のことで若干の混乱があったと申し上げましたのは、被災地のその当時の状況を申し上げたものでございます。この際、誤解を解いていただきたいと思います。」

(つづく)


<著者プロフィール>
吉村慎一
(よしむら・しんいち)
1952年生まれ。福岡高校、中央大学法学部、九州大学大学院法学研究科卒業(2003年)。75年福岡市役所採用。94年同退職。衆議院議員政策担当秘書就任。99年福岡市役所選考採用。市長室行政経営推進担当課長、同経営補佐部長、議会事務局次長、中央区区政推進部長を務め、2013年3月定年退職。社会福祉法人暖家の丘事務長を経て、同法人理事。
香住ヶ丘6丁目3区町内会長/香住丘校区自治協議会事務局次長/&Reprentm特別顧問/防災士/一般社団法人コーチングプラットホーム 認定コーチ/全米NLP協会 マスタープラクティショナー
著書:『パブリックセクターの経済経営学』(共著、NTT出版03年)

『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』
著 者:吉村慎一
発 行:2024年7月31日
総ページ数:332
判サイズ:A5判
出 版:梓書院
https://azusashoin.shop-pro.jp/?pid=181693411

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