アメリカに最大のインパクトを与える日本人・孫正義(1)(後)

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ジャック・マー氏への投資で世界企業へ変貌する

 さらに、99年には中国・杭州でジャック・マー氏と運命的な出会いをはたします。当時はまだ黎明期だったアリババに孫氏は2,000万ドルを投資し、ここからアリババはタオバオやアリペイ、Tmallといった数々のサービスを展開。2014年には米国市場でIPOをはたし、ソフトバンクが保有する株式の価値が大幅に増大しました。これはIT投資史上でも語り草となる成功例であり、孫氏の「人を見る目」とリスクを恐れない投資姿勢が強く印象づけられたエピソードです。

iPhone イメージ 00年代半ばには、Vodafone日本法人を買収(06年)することで本格的に携帯通信事業へ参入します。こうした大規模な買収を成功させるには、テリー・ゴウ(郭台銘)氏との協業も大きかったとされます。台湾のFoxconnを率いるゴウ氏は製造・サプライチェーンの面でソフトバンクをサポートし、これがiPhone普及に向けた強固な土台となりました。また、スティーブ・ジョブズとの再会・交渉を経て、08年にソフトバンクは日本初のiPhone販売を実現。革新的な端末と革新的なビジネスモデルを組み合わせたことで、携帯電話市場に大きな旋風を巻き起こしました。

世界トップのトップ投資家たちとの深い関係づくり

 16年以降には、英国の半導体企業ARMを3.3兆円で買収し、IoT・AI時代に備える戦略に踏み出します。交渉の相手となったサイモン・シガース氏(ARM元CEO)とのやり取りを通じて、半導体設計の重要性と世界的な展望を一挙にソフトバンクグループに取り込みました。さらにイーロン・マスク氏との対話など、次世代技術の開発者とも積極的に交流を重ね、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(17年設立)を通じて大型投資を実行。サウジアラビア皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏やWeWork創業者のアダム・ニューマン氏など、多くの異分野リーダーとの縁が、孫氏の投資網を世界規模へと広げていきます。

 以上を総括すると、孫正義氏のビジネスのカギは「時代の変化を先取りし、卓越した人物のビジョンに乗る」ことに尽きます。彼が携わる事業は常に新しい波の最先端に位置し、その波を形づくる中心人物たちとの出会いが次の投資を呼び込む好循環を生み出してきました。もちろん、その過程では失敗や批判もありましたが、孫氏自身はスピード感と大胆な意思決定力をもってリスクを負い、成果をつかむことで企業規模を飛躍的に拡大させてきたのです。

 ビジネスパーソンにとって、孫正義氏が示す学びは明快です。「どの領域が伸びるか」を世界規模で考え、夢とリスクを恐れない姿勢で動く。そして「誰に賭けるのか」を見極める眼を研ぎ澄ますこと。激変するテクノロジーの時代だからこそ、孫正義氏の軌跡は示唆に富んだ指針となるでしょう。今後もソフトバンクグループと孫正義氏は、次の変革をいち早く察知し、新たな出会いを求めながら未来を切り開いていくに違いありません。日本企業経営者のなかからソフトバンクオーナー孫正義氏に匹敵するスケールの大きい存在者は今後も現れることはないでしょう。

 本当に感服されっぱなしですね。(寄稿者:フェニックス氏)

(了)

【児玉直】

(1)(前)

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