新時代に突入するプロバスケ界 地域との共生でトップカテゴリーへ(前)
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ライジングゼファーフクオカ(株)
代表取締役社長 古川宏一郎 氏華やかな演出はバスケットボールのゲームならでは。写真は選手入場時の様子 「B.LEAGUE」(以下、Bリーグ)のB2リーグに所属するライジングゼファーフクオカは現在、西地区の首位を走るなど好位置につけ、来期のB1リーグ昇格へ向けて奮闘中だ。一方、Bリーグでは2026-27年シーズンから新リーグ「Bリーグ PREMIER(プレミア)」がスタートするなど、大きな改革の時期を迎えている。そこで、チーム運営会社の代表取締役社長・古川宏一郎氏に、好調の要因や今後に向けた方向性について聞いた。
西地区首位を走る
ライジングゼファーフクオカ(株)
代表取締役社長 古川宏一郎 氏──24-25年シーズンはB2リーグ西地区の首位(2月10日現在)を走っています。好調の要因をどう分析していますか。
古川 得点力やリバウンド力があり、日本でのプレー経験も豊富な外国人選手、有力な日本人選手などの新加入で戦力が充実していることはもちろんですが、寒竹隼人キャプテンを中心に、彼らがチームに馴染めるようプレーしやすい環境づくりをしてきたことが好調の大きな要因であると感じています。また、浜口炎ヘッドコーチは昨季まではアシスタントコーチとしてチームを支えてくれてきたので、チームの状況や選手をよく理解しているベテラン指導者です。こうした首脳陣の下、選手個々が力を発揮できるシステムが構築されたことなどが、今のチームの好調さにつながっていると感じています。
ただ、決して楽な試合展開ばかりではありません。Bリーグでは同じチームと2連戦を行いますが、ライジングゼファーも含め、前日に大勝したチームが翌日に大敗するケースもあります。チーム力が拮抗しており、相手チームに対策をされますから、メンタルの緩みが出ると一気に試合の流れが変わってしまうこともあるのです。もちろん、選手のケガなどによっても戦術や戦力のバランスが崩れ、それが勝負の行方を左右することもあります。
ゲームの様子。インサイドでの強みを発揮できるのも好調の要因の1つだ 盛り上がるバスケ界
──古川社長は、Jリーグの「横浜F・マリノス」の運営会社・横浜マリノス(株)の社長を経験されるなどして、現職に就かれています。バスケットボール界については、どのように見られていますか。
古川 バスケットボールは他のスポーツと比べて、選手と観客の距離が近く、試合の展開も最も早い。そして、得点シーンが多いことも特徴の1つです。また、屋内スポーツなので演出面も豊かで、エンターテインメントとして誰でも楽しみやすい競技でもあり、小さなお子さま連れの家族も含めて幅広い方々が大いに盛り上がれる要素が詰まっています。加えて、国内バスケットボール界はここ数年で大きな変化があり、今後もそれが続いていくダイナミックな流れが追い風になっています。具体的には、2019年にFIBAワールドカップ(中国)に男女が出場し、21年開催の東京五輪では40年ぶりに男子が出場。そして23年には、沖縄(日本・フィリピン・インドネシア共催)でワールドカップが開催され、48年ぶりに自力でのパリ五輪(24年)出場をはたしました。
これまでは、東京五輪で女子ナショナルチームが銀メダルを獲得するなどで活躍が目立っていましたが、男子チームもNBAの八村塁選手や渡邊雄太選手(今期から千葉ジェッツふなばしでプレー)、河村勇輝選手などの登場によって、世界で戦えるようになってきました。26-27年シーズンにはBリーグの構造改革、具体的には「Bリーグプレミア」(※)への移行が決定しており、さらに30年には日本バスケットボール協会(JBA)が100周年を迎えます。つまり、2~3年おきにバスケットボール界全体が盛り上がるイベントが続き、それが全体の成長を後押しする状況となっています。
※Bリーグのトップカテゴリーで、アメリカのNBAに次ぐ世界2位のリーグを目指し、26-27年シーズンから26チーム(24年12月現在)で始動する。下位リーグとして現在のB2にあたる「BリーグONE(Bワン)」、B3にあたる「BリーグNEXT(Bネクスト)」を置く予定。
まずはB1昇格目指す
──Bリーグプレミア昇格について、どのようなビジョンをお持ちでしょうか。
古川 残念ながら、ライジングゼファーフクオカは現在、新リーグへの昇格条件を満たせていません。「入場者数(平均4,000人以上)」「売上高(年間12億円を2シーズン連続で達成)」「アリーナ(5,000席以上のアリーナ確保など)」が条件ですが、このうちとくに課題となるのがアリーナです。現状のホームである「照葉積水ハウスアリーナ」(福岡市総合体育館)は、収容人数はともかくとして、VIPラウンジやスイートルームなどの設置要件を満たせず、市の施設であることから簡単には対応できません。そこで現在、関係各所との協議を行い、既存アリーナの改修や新アリーナ建設の可能性を慎重に検討しているところです。
ホームの「照葉積水ハウスアリーナ」の外観 一方で、昨シーズンの平均入場者数は約1,800人で、今シーズンは2,000人超を見据えるほどになっていますが、まだ倍増が必要な状況です。売上高については24年6月期に約8億8,000万円となり、12億円が視野に入ってきました。こうした現状を踏まえ、今シーズン(24-25年)にまずB1昇格をはたし、そのうえで中期的にこれらの課題をクリアし昇格する目標を設定しています。最短の昇格は29-30年シーズンとなります。
(つづく)
【田中直輝】
<COMPANY INFORMATION>
代表:古川宏一郎
所在地:福岡市東区香椎照葉6-6-10
設立:2007年5月
資本金:2億1,800万円<プロフィール>
古川宏一郎(ふるかわ・こういちろう)
1975年生まれ。上智大学理工学部電気電子工学科卒業後、Nokia Japan(株)を経て、2004年に日産自動車(株)に入社。17年に横浜マリノス(株)代表取締役社長に就任。その後、(公社)ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ代表理事COO、(公社)日本バスケットボール協会理事などを経て、21年10月にライジングゼファーフクオカ(株)取締役副社長となり、22年1月に代表取締役社長に就任した。月刊まちづくりに記事を書きませんか?
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