新時代に突入するプロバスケ界 地域との共生でトップカテゴリーへ(後)
-
-
ライジングゼファーフクオカ(株)
代表取締役社長 古川宏一郎 氏「B.LEAGUE」(以下、Bリーグ)のB2リーグに所属するライジングゼファーフクオカは現在、西地区の首位を走るなど好位置につけ、来期のB1リーグ昇格へ向けて奮闘中だ。一方、Bリーグでは2026-27年シーズンから新リーグ「Bリーグ PREMIER(プレミア)」がスタートするなど、大きな改革の時期を迎えている。そこで、チーム運営会社の代表取締役社長・古川宏一郎氏に、好調の要因や今後に向けた方向性について聞いた。
まずはB1昇格目指す(つづき)
──昇格には、ファン拡大が何よりの後押しになりそうです。
古川 スポーツビジネスの世界では、ファン拡大の三大要素として「人気選手の存在」「観戦環境の良さ」「地域ロイヤリティの高さ」が挙げられます。有名選手が加入すれば一時的に大きく集客できる可能性はありますが、常にそうしたスターを呼べるわけではありません。ちなみに、千葉ジェッツでは渡邊雄太選手の加入効果もあり、観戦チケットが非常に入手しづらい状況です。
試合会場には子どもが楽しめる
アクティビティもあるまた、新アリーナが建設されると一気に盛り上がりが生まれますが、これも時間を要します。そこで、クラブとしてすぐに取り組めるのが地域ロイヤリティを高めることだと考え、実行しています。具体的には、地域の催しや学校訪問、バスケ教室を積極的に行い、地元チームとしての認知度を高めています。地道な積み重ねがファンを増やす近道であり、サステナブルなかたちを築くうえで欠かせないと考えています。
子どもたちを対象にしたバスケットボールスクールも実施
(画像はライジングゼファーフクオカ提供)社会課題解決へ、地域との連携を強める
──「プロジェクトスパイラル」という活動も展開されていますね。
古川 3年前に社長就任の挨拶回りをしていた際、「ライジングはお願いばかりで、地域に何も貢献していない」という指摘を受けたことが大変重く感じました。そこで22年3月に「ホームタウン事業部」を設置し、地域の方々とともに社会課題の解決を目指す共創の取り組みとして、プロジェクトスパイラルをスタートさせました。これはクラブ単独では解決が難しい地域課題に、他企業や個人の専門性を掛け合わせることで、より大きな貢献を目指そうというものです。私たちがバスケットボール教室や病院・学校訪問などの入口をつくり、その活動のなかに企業や個人が持つ独自のノウハウやリソースを加えていただくかたちです。
たとえば、美容師さんなら長期入院中の子どもにカットサービスを提供できるかもしれません。しかし、病院への橋渡しなどの最初のきっかけづくりは、クラブのほうが行いやすい。そうしたかたちでクラブがハブとなり、地域全体を巻き込む取り組みを進めた結果、昨年は各種イベントに約8,000人の方々が参加してくださり、回数も160回(前年70回)にまで増えました。
24年4月に行われた
粕屋町とのフレンドリータウン協定締結時の様子
(画像はライジングゼファーフクオカ提供)また、福岡県内各地で地域の自治体との連携を深める取り組みにも力を入れています。他チームではホームタウンを各自治体に設定するケースが多いですが、私たちはホームタウンを福岡県全体に設定し、23-24シーズンから「フレンドリータウン制度」として展開しています。ホームゲームを福岡市、北九州市、飯塚市で開催していますが、それ以外の市町村をフレンドリータウンとして位置づけ、市町村とともに試合を盛り上げる応援デーとして開催するなどしているのです。これにより、「地元のチーム」として福岡県のより多くの方々に認知していただければと考え、取り組んでいます。
応援デーの一例としては、1月25日に行われた福島ファイヤーボンズ戦が「篠栗町応援デー」として開催されました。この試合には同町出身でU15チームに所属する栗本富美也選手が、ユース育成特別枠制度で出場しました。町長をはじめ多くの町民の皆さまに観戦いただき、喜んでいただくことができました。なお、栗本選手は15歳1カ月での出場となり、Bリーグ最年少出場記録を更新しています。
スポーツを通じた地域貢献に一層の可能性
──最後に、今後に向けたメッセージをお願いします。
ライジングゼファーフクオカ(株)
代表取締役社長 古川宏一郎 氏古川 今後はBリーグがさらに発展し、ライジングゼファーフクオカもB1昇格、プレミア参入に向けて上昇気流に乗ろうとしている状況です。だからこそ、早い段階からチームを知り、応援してもらえれば、その成長過程を一緒に楽しんでいただけるはずだと思っています。また、スポンサー企業や地域の方々には「単にお金を出していただくのではなく、ともに地域社会を盛り上げるパートナーとして参加していただきたい」と考えています。スポーツを通じた地域貢献の可能性はまだまだ大きく、一緒に新しい取り組みをつくり上げていく余地があるからです。フレンドリータウン制度やプロジェクトスパイラルといった取り組みをさらに強化することで、地域の皆さまとともにチームを成長させてまいります。ライジングゼファーフクオカの今後の活躍に、ぜひご期待いただき、試合会場に足を運んでください。
(了)
【田中直輝】
<COMPANY INFORMATION>
代表:古川宏一郎
所在地:福岡市東区香椎照葉6-6-10
設立:2007年5月
資本金:2億1,800万円
<プロフィール>
古川宏一郎(ふるかわ・こういちろう)
1975年生まれ。上智大学理工学部電気電子工学科卒業後、Nokia Japan(株)を経て、2004年に日産自動車(株)に入社。17年に横浜マリノス(株)代表取締役社長に就任。その後、(公社)ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ代表理事COO、(公社)日本バスケットボール協会理事などを経て、21年10月にライジングゼファーフクオカ(株)取締役副社長となり、22年1月に代表取締役社長に就任した。月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)関連キーワード
関連記事
2025年2月25日 13:402025年2月21日 15:302025年2月20日 13:002025年3月6日 12:002025年2月26日 13:302025年2月6日 11:002025年1月24日 18:10
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す