【連載】コミュニティの自律経営(42)~DNA運動掲示板でのやり取り

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 元福岡市職員で、故・山崎広太郎元市長を政策秘書などの立場で支えてきた吉村慎一氏が、2024年7月に上梓した自伝『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』(梓書院)。著者・吉村氏が、福岡市の成長時期に市長を務めた山崎氏との日々を振り返るだけでなく、福岡県知事選や九州大学の移転、アイランドシティの建設などの内幕や人間模様などについても語られている同書を、NetIBで連載していく。
 連載の第1回はこちら

◆「拝啓、山崎市長様」を読んで
(保健福祉局保護課 平居 秀児さん、6月21日掲載)

 「拝啓、山崎市長様」を拝読しました。正直にいえば、まず初めに感じたのは、私と同じ市職員の多数が感じたであろう「共感」でした。皆、勤務年数の長短の差はあれ、役所のなかで仕事をし、まじめに頑張ってきた人ほど強い思いがあるはずです。また、行政のプロとして、社会をリードしてきたとの自負もあると思います。職員1人ひとり、自分が成し遂げ、歩んできた道に誇りをもつのは当然のことでしょう。それは経営管理委員会の提言が出ても、何ら変わることはありません。皆がこれまで達成してきたことを否定するものは、これまでも、そしてこれからも、何1つ存在し得ないと思います。

 今回の提言は過去を否定し、今までのやり方が間違っていたというものではありません。ただ地方分権や財政の硬直化、市民という存在の多様化など、世の中が大きく変化しているなかで、これからの行政の在り方や進み方について、1つの方向を示す指針となるものです。 (中略)ご指摘の通り、実際に市の職員が対応する市民は当然生身の存在であり、とくに行政と相対するときは当事者としてのエゴも出る。提言が期待している市民像と実態が懸け離れているのは私も実感しています。しかし一方では、地域の発展のため力を尽くす市民がいることも事実です。「規制する行政」から「住民本位の行政」へ。市民と触れ合い、市民の意見を汲み上げ、市民の力を活用する。市民革命を経ていない日本の民主主義のもとで、ご指摘の通りどれほどのことがやれるかという疑問はありますが、行政と市民が手を携え、お互いに成長しながら福岡市の発展に努めていくことが、大きな流れとしては見えていると思います。(中略)

 それにしても、時代も変わるものです。意見のある人が書き込みをし、市長が応える。市長に対する意見も出る。ご存じの通り、民間では社員の意見がEメールで直にトップに届くシステムが普及しています。本市でも、このネットワーク自体が、すでに縦割りの組織を突き崩し始めています。委員会の提言は、これまでの行政の常識から懸け離れています。読むと戸惑いを感じます。実現できるはずがないと考えます。怒りを覚える人もいるでしょう。しかし、考え方によっては、このネットワークシステムのほうが「なにげなく過激」なのかもしれません。2000年の今、福岡市は新しい時代の大波に向け、出帆しようとしています。船(提言)は新型で、我々には馴染みのないシステムで構成されています。しかし、無事に目的地に辿り着けるかどうかは、市長のリーダーシップももちろんですが、乗組員たる我々の手にも委ねられています。これまで、我々は行政のプロでした。大きな転換期を迎える行政のなかにあって、これからも誇り高いプロとして、新たな時代を切り拓いていきたいものです。

 いかがでしたでしょうか? こんなやり取りが机にいて読めるんだから、たまりませんよね。でもそんな重たい投稿ばかりではありません。心が温まる投稿もたくさんありました。そして、次の投稿には本当に救われたというか、DNA運動をやっていて本当によかったと思わせてくれた投稿でした。

◆私のDNAは「楽しい時間のプレゼント」
(西保健所予防課 H・Tさん、6月30日掲載)

 DNAの掲示板を朝・夕開くのが日課になっており、皆さんのご意見を読むのを毎日楽しみにしてます。 DNAの掲示板の読者にとどまっておくつもりだったのですが、常連の方々は、お忙しい時期に突入されたようなので、「ちょっとデビューしてみようかなあー」と思い立ちました。皆さんの書き込みを読みながら、私のDNAって何だろうなと考え続けているところです。私の周りの人からは、「あんたのDNAは、たまった仕事を片づけることたい!」といわれそうですが……。

 私の仕事は、対市民の最前線です。私の恵まれていることは、市民の方とにっこり笑いながらおつきあいしていける仕事だという点でしょう。ですから、市民=良い人なのです。 市民に対するとらえかたがいろいろ出てきていますが、私にとっては、一緒に仕事をしてゆくパートナーでもありますが、「お客様」という比重がとても重いです。

 先日の大雨の日、私の教室に誰も来てくれんかったらどうしようと思っていましたら、いつもの9割の方がきてくださいました。(「2回以上休んだら修了証をやらんよ」とおどしをかけているからかもしれませんが……)「ようきてくれたね」とお礼を言ったら、「楽しいからきてるとよ。元気をもらいにきてるとよ」と答えてくださいました。私のDNAって「市民の方にきて良かったと思える楽しい時間をプレゼントすること」かもしれません。

 私が最近始めたこと……教室の参加申し込みをされた方へ「おいでになるのをお待ちしております」の一言。来ていただいたときに「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました」の気持ちを込めて「おはようございます。こんにちは。」の声かけをすること。

 諸兄、諸姉へまた、お時間に余裕ができましたら、良いお話をたくさん書き込んでくださいね。

 ワクワクしながら、掲示板を開いてお話を読ませていただきます。

(つづく)


<著者プロフィール>
吉村慎一
(よしむら・しんいち)
1952年生まれ。福岡高校、中央大学法学部、九州大学大学院法学研究科卒業(2003年)。75年福岡市役所採用。94年同退職。衆議院議員政策担当秘書就任。99年福岡市役所選考採用。市長室行政経営推進担当課長、同経営補佐部長、議会事務局次長、中央区区政推進部長を務め、2013年3月定年退職。社会福祉法人暖家の丘事務長を経て、同法人理事。
香住ヶ丘6丁目3区町内会長/香住丘校区自治協議会事務局次長/&Reprentm特別顧問/防災士/一般社団法人コーチングプラットホーム 認定コーチ/全米NLP協会 マスタープラクティショナー
著書:『パブリックセクターの経済経営学』(共著、NTT出版03年)

『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』
著 者:吉村慎一
発 行:2024年7月31日
総ページ数:332
判サイズ:A5判
出 版:梓書院
https://azusashoin.shop-pro.jp/?pid=181693411

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