健康長寿ビジネスの最前線:寿命はどこまで延びるのか?

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、3月14日付の記事を紹介する。

    先週発売となった拙著『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)でも紹介したように、2025年はかつてない波乱の年になりそうです。そんな中、日本も世界もいかにして厳しい時代を乗り越えるのかが問われるようになっています。日本人の寿命は世界でも最高レベルと見なされていますが、課題は「健康寿命」をどこまで延ばすことができるのか、ということです。

 2024年の日本人の平均寿命は女性が87歳、男性が81歳で、いずれも世界最高を記録しています。とはいえ、いくら平均寿命が延びたとしても、健康でなければ意味がないでしょう。このまま行けば、2100年には、世界人口の4分の1は60歳以上になることが確実視されています。しかし、病気を抱え、薬漬けや寝たきりの長寿では寂しい限りです。

 実際、アルツハイマーや認知症患者も増える一方で、「2025年には65歳以上の5人に1人は認知症」との予測もあるほどです。世界を見渡せば、2050年には認知症患者は1億5,300万人に達するとの研究もあります。そうした背景もあり、今後、世界で最も成長が期待されているのが「健康長寿ビジネス」に他なりません。

 WHO(世界保健機関)では、このところ「エイジテック」を推奨し始めました。各国政府に対して、健康医療への投資、社会インフラ、高齢者向けの住宅や介護サービスの拡充を求める提言を相次いで公表しています。当面、次々に発生する感染症対策も欠かせませんが、長期的に見れば、人々の生命力や免疫力を高めるためにも、「エイジテック」と呼ばれる、「長寿と先端技術の融合」を目指そうという発想は理にかなったもの。

 最近注目を集めているのが、ドミトリー・カミンスキー氏。同氏は長寿ビジネスの旗振り役の起業家で、モルドバの出身。英国で投資ファンドを数多く起業していますが、その多くは長寿関連です。彼曰く「大きく延命できる技術は既にある」「寿命は最低でも50年延ばせる」「自分は軽く123歳まではいける」「過去最高齢記録は122歳まで生きたフランス人女性ジャンヌ・カルマンだったが、その上を行った人には100万ドルをプレゼントする」。

 ちなみに、カルマンさんは1997年に死亡しましたが、100歳まで自転車を乗り回し、110歳まで自活していました。また、117歳までタバコを愛し、チョコレートも大好きで、何と赤ワインは死ぬまで欠かさなかったといいます。カミンスキー氏の目標は「180歳超え」。多くの投資ファンドを運営していますが、「5年以内により精密な未来人体延命ビジネスを立ち上げる」と豪語しています。

 彼はメディア向けに未来の延命ビジネスを積極的に語るのみならず、自ら「グローバル・ロンジェビティ・コンソーシアム」と銘打った組織を立ち上げ、長寿ビジネスへの投資を加速させています。このコンソーシアムの一環として「エイジング分析エージェンシー」なる会社も起業。この会社を通じて、シンガポール政府が進める長寿へのプロアクティブ政策を後押しまでするという力の入れようです。

 というのも、2015年からシンガポールでは「40歳からのサクセスフル・エイジングのアクションプラン」を導入。具体的には「ナショナル・シルバー・アカデミー」や「シルバー・ジェネレーション・アンバサダー」制度を発足させ、在宅介護や家庭訪問でヘルスサービスの質的向上を加速させ始めているからです。

 シティバンクの報告書によれば、「現在のアンチエイジングビジネスは世界全体で2,000億ドル市場を形成している。ただ、これには医学療法分野は含まれていない。今後、医療ビジネスが広がれば、この市場は一気に拡大するだろう」。例えば、骨粗鬆症の治療に対する取り組みが加速しており、2025年までに膝の細胞を活性化することで、若返りビジネスにこれまでにない追い風が吹くものと期待が高まっています。

 同様に、普段は眠っているサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させることで健康長寿を達成する研究にも拍車がかかっています。カロリー制限や運動で活性化することも可能ですが、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種である「レスベラトロール」でも活性化できるとの医学的研究成果も明らかになってきました。病気予防と若返りが同時に可能になるというわけです。

 そこで、最近の注目株は「NAD(ミトコンドリアでのエネルギー補完因子、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」です。これはサーチュインの活性化にも効果抜群といわれており、アメリカで研究を続ける今井眞一郎博士が血液中のNADに老化防止効果を発見したのがきっかけといわれています。

 また、NADが減少することをNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が予防するとの研究も明らかになってきました。心臓血管の強化はもちろん、NMNには様々な延命上の有効性が今井博士によって立証されています。特に記憶を司る脳の機能が低下するのを抑える効果がNMNにはあるとされるため、アルツハイマー病の予防にもなるとのこと。筋肉内の血管の強化も期待されるということで、NMNは健康長寿の切り札として注目が集まっているわけです。日本発の健康長寿の切り札といっても過言ではありません。皆さんも試してみては如何ですか。


著者:浜田和幸
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