【連載】コミュニティの自律経営(45)~2つのプレイベント

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 元福岡市職員で、故・山崎広太郎元市長を政策秘書などの立場で支えてきた吉村慎一氏が、2024年7月に上梓した自伝『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』(梓書院)。著者・吉村氏が、福岡市の成長時期に市長を務めた山崎氏との日々を振り返るだけでなく、福岡県知事選や九州大学の移転、アイランドシティの建設などの内幕や人間模様などについても語られている同書を、NetIBで連載していく。
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令和4年までカイゼンの火を消さない
イベント実行委員会

 第15回大会は令和3年(2021)に東京都中野区で開催される予定だったが、コロナ禍で順延されることとなった。毎年開催してきた「全国都市改善改革実践事例発表会」の火を消さないためにも、「令和4年までカイゼンの火を消さないイベント実行委員会」を立ち上げ、オンラインでの代替イベントを用意することとした。ちょうど、この年はDNA運動誕生から20年目を迎え、さらに翌年は、全国都市改善改革実践事例発表会から15年、DNAどんたくから20年の節目を迎えることから、全国都市改善改革実践事例発表会と福岡市のDNA運動をメインテーマに取り上げて、プレイベントを二本立てで組み立てることとした。

<プレイベント第1弾>
カイゼン・サミット2020~DNA運動から20年目のクリスマスプレゼント!

令和2年(2020)12月12日(オンライン)
【プログラム】
(1)全国都市改善改革実践事例発表会の15年を振り返る(進行:後藤好邦)
 尼崎市(第2回)/吉田敦史、福井市(第3回)/加畑美佐穂、丹波篠山市(第14回)/堀井宏之、中野区(第4回、第15回)/酒井直人
(2)【鼎談】馬場伸一、吉村慎一(進行:吉崎謙作)「あれから20年~DNA運動とは何だったのか」
(3)【鼎談】藤義之(進行:吉崎謙作)「あれから20年~DNAのネーミング秘話、DNA掲示板について」
(4)【対話】これから5年、あなたはどうする? 加留部貴行

 すべての全国大会に参加してきた後藤好邦君/山形市役所が、全国大会に関わってきたキーパーソンのインタビューを行い、自治体カイゼン運動の発祥の地、福岡市の「DNA運動」を掘り下げ、受け継がれてきたカイゼン運動のDNAをこれからどうつなげていくかを語り合ったが、3時間枠を取ったにもかかわらず、消化不良もありで、プレイベント第2弾として、DNA特番を実施することになった。

<プレイベント第2弾>
カイゼン・サミット2020 DNA特番! カイゼン運動の“はじまり”から“その後”までを目撃せよ!~紆余曲折のストーリーを語り尽くす

令和3年(2021)2月13日(オンライン)
【プログラム】
(1)福岡市DNA運動の20年間を俯瞰する 加留部貴行
(2)【鼎談】進行:吉崎謙作/加留部貴行 カイゼン運動の「当事者」がその当時の思いを語る
・“はじまり”の想いやそのエピソード
 山崎広太郎×松田美幸×吉村慎一、藤義之×安川浩平+吉崎謙作
・“はじまり”から“つなぎ”に至る想いやエピソード
 松田美幸×安川浩平×吉崎謙作
(3)【鼎談】カイゼン運動の「傍観者」がその後の心境を語る
  今村寛×安川浩平×上原真之×加留部貴行(進行:後藤好邦)
(4)【対話】「“あなたのカイゼン運動”を続けるには何が必要でしょうか」加留部貴行

★これは、図らずも僕的には永久保存版のオンラインイベントとなった。

 1つには、このとき、元気に登壇していた広太郎さんが一月も経たない3月11日に急逝してしまったことである。当日は実に楽しそうで、福岡市関係者以外には、初見参だったかもしれないが、言っていることは20年前とまったく変わるところがなかった。

 DNA運動からの20年を俯瞰してみて、「DNA運動というのは、必然のことだった。市民の力を引き出し、市民とのコラボレイトがないと行政は成り立たない。目指すべきものがコミュニティの自律経営であればなおのことで、DNA運動に取り組むことで職員が市民の信頼を得て、市民の力を引き出すことが可能となる」と語り、また「カイゼン運動は、市民と関わり市民を巻き込んでいくことが必要不可欠であること」を強調していた。何より、まとめで後藤好邦君が「行政であれ民間であれ、相手のことを考えて、相手の喜びを達成することが使命であり、行政であればそのことが市民の幸福につながる」とまとめたときの何度もうなずき、満足そうな顔は忘れられないほどである。今村寛君曰く「間に合った」のだろうと思う。

 2つ目は、まさにタイトル通り、カイゼン運動の始まりからその後に至る紆余曲折のストーリーを語り尽くしたのだが、DNA運動を立ち上げた人、DNA世代ともいわれるDNAの申し子のような人、DNA運動は中断したものの、その種火をしっかりと灯し続けた人、そして、かつては傍観者だった人の覚醒が、時を超えて世代を超えてつながっていった不思議さを痛感した。今や対話の伝道師として、全国を駆けめぐっている今村寛君が、かつてはDNA運動の傍観者でありながら、東京財団への派遣研修を契機に、組織に埋め込まれたDNAによって覚醒していくプロセスは、組織の内外にはトップ交代を含めさまざまな出来事があるが、追い風となるタイミングは必ず来る。個人のたゆまぬ思いを火種として灯し続ける大切さとつながる場をつくり続けること、そのための共通のツール(DNAの精神、対話=ファシリテーション)をもち、使い続けることの大切さを教えてくれていた。この取り組みは、オンラインでなければ実現しなかったであろう珠玉のイベントとなった。

 「老兵はただ消え去るのみ」と覚悟していた僕が、カイゼン運動の再開や全国大会の開催への取り組みのなかで、DNAが埋め込まれた人たちから導き出された。DNA改革=DNA運動の講演は、文字通り北は北海道から南は九州まで、全国各地でやっていたのに、退職間際に初めて福岡市職員を対象にオフサイトミーティング『明日晴れるかな』で話をさせてもらうことができた。また、若手職員を対象にした退職記念講演会「我がジェットコースター人生を語る」が開催されたのも、やはりDNAが残してくれた種火だったのかもしれない。大過満載の公務員人生だったが、後顧の憂いなく次のステージに向かうことができたことに深く感謝している。

(つづく)


<著者プロフィール>
吉村慎一
(よしむら・しんいち)
1952年生まれ。福岡高校、中央大学法学部、九州大学大学院法学研究科卒業(2003年)。75年福岡市役所採用。94年同退職。衆議院議員政策担当秘書就任。99年福岡市役所選考採用。市長室行政経営推進担当課長、同経営補佐部長、議会事務局次長、中央区区政推進部長を務め、2013年3月定年退職。社会福祉法人暖家の丘事務長を経て、同法人理事。
香住ヶ丘6丁目3区町内会長/香住丘校区自治協議会事務局次長/&Reprentm特別顧問/防災士/一般社団法人コーチングプラットホーム 認定コーチ/全米NLP協会 マスタープラクティショナー
著書:『パブリックセクターの経済経営学』(共著、NTT出版03年)

『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』
著 者:吉村慎一
発 行:2024年7月31日
総ページ数:332
判サイズ:A5判
出 版:梓書院
https://azusashoin.shop-pro.jp/?pid=181693411

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