逃げるは得だが逃げ切れない

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「兵庫県の斎藤知事の公益通報者保護法違反事案に対する適正な対応が厳正に取られる必要がある」と指摘する3月28日付の記事を紹介する。

 告発発文書問題で兵庫県が設置した第三者調査委員会が3月19日に調査報告書を提出した。第三者委員会は元県民局長が昨年3月に県警や報道機関など10ヵ所に送った文書が公益通報者保護法に定める〈3号通報〉、外部公益通報に当たると判断した。

 県民局長による外部通報文書に記載された7つの事項のうち、
事項4(贈答品に係る事項)
事項6(プロ野球優勝パレードに係る問題)
事項7(職員に対する言動ないし対応の適否)
 は3号通報の「通報対象事実」の要件を満たしているとした。また、元副知事の片山安孝氏が百条委で主張した「クーデターという不正目的だから公益通報には当たらない」との主張を退けた。

 報告書は、
・県民局長が当該文書内容を流布させることで「不正の利益を得る」ということは考えにくい。
・同局長が、将来的に何らかの影響力を行使して、実際に斎藤知事や県の幹部職員を失脚させる目的があったとまでは認めることができない。
・当該文書の末尾に当該文書の取扱いについて注意を促す記載があることに照らすと、当該文書に記載された企業、金融機関や県の外郭団体に「損害を与える」目的があったとも認め難い。
・当該文書の配布先が10か所に限定され、その中に県警本部が含まれていたことからは、直ちにこの文書内容を広く流布して県政を混乱に陥れようとの不当な意図を看取することもできない。
などの根拠を列挙した上で、「当該文書の配布が〈不正の目的〉でなされたものと評価することはできない」とした。

 文書が公益通報であると認定されたため、告発者探しは違法である。元県民局長を特定したメール調査も、片山副知事(当時)が行った事情聴取や公用PC押収も違法になる。告発者探索は違法であり、県による5月7日の通報を理由とする懲戒処分も無効である。

 外部通報が行われた直後、斎藤知事は側近4人を呼んで対応を協議。4人は告発文書が指摘する各自に関係する事実を否定し、当該文書を「核心部分が真実でない怪文書」と決め付けて通報者探索の行動を取った。

 斎藤氏および4人の側近は当該文書で名指しされている被告発者。利害関係者である。被告発者が告発を握りつぶすことこそ公益通報者保護法が警戒する典型的ケースである。

 斎藤知事は昨年3月27日に知事定例記者会見で元県民局長の処分について聞かれ、こう答えた。「職務中に、職場のPCを使用して、事実無根の内容が多数含まれ、かつ、職員の氏名等も例示しながら、ありもしないことを縷々並べた内容を作ったことを本人も認めている。」「公務員ですので、選挙で選ばれた首長の下で、全員が一体として仕事をしていくことが大事なので、それに不満があるからといって、しかも業務時間中に、嘘八百含めて、文書を作って流す行為は公務員としては失格ですね。」

 この斎藤氏発言を第三者委員会は〈パワハラ〉と認定した。

※続きは3月28日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「逃げるは得だが逃げ切れない」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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