麻生太郎元首相が参院選事前運動か~西村康稔元大臣の国政報告会で現職支援依頼

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 裏金問題で1年間の党員資格停止処分を受けていた西村康稔元経産相が4月4日、地元・兵庫県明石市で国政報告会を開催した。報告会には麻生太郎元首相(最高顧問)が駆けつけ「極めて厳しい状況におったのが、(処分終了で)無事解放されためでたい日の第1日目」と激励する一方、今夏の参院選事前運動にしか見えない現職支援依頼もした。

講演を行う麻生太郎氏
講演を行う麻生太郎氏

    講演の最後で「ぜひ、皆様方の変わらぬ思いを西村康稔に与えていただき、西村康稔が先ほど推薦しておりました加田(裕之参院議員=兵庫選挙区)。次の参院選挙は加田、よろしくお願いします」と呼び掛けたのだ。

 処分終了翌日の国政報告会ではあったが、参院選向けの事前決起集会の様相も呈していた。締めは、関係者がステージ上に勢ぞろいして「頑張ろう」を連呼。改選を迎える現職の加田参院議員は、麻生氏と西村氏の間で拳を振り上げていた(写真参照)。

ステージ上に勢ぞろいして「頑張ろう」を連呼した
ステージ上に勢ぞろいして「頑張ろう」を連呼した

 麻生氏の講演内容も、参院選で野党支持者を切り崩そうとする狙いが透けて見えた。芳野友子連合会長を絶賛し、次のように言い放ったのだ。

「春闘が今いろいろやっていますけれども、今年も5.4%の賃上げということになりました。いま連合というところの会長さんは女性ですよ。芳野友子という女性、たしか高卒だと思ったな。その前の方、神津さんという方は東大出だった。新日本製鉄。その方のときは2%くらい。その前の人は古賀さん、この人は関大だったかな。このときは2%、いくかいかないかですよ。

 しかし芳野友子さんになって、『共産党嫌い』と連合の会長が公然と言ってのける。そういった女性が出てきて、この女性が(賃上げ2年)連続5%。その前の人は2%。3%に行った人はいません。『誰が芳野と組んでやっているのだよ』と言ったら、自由民主党が一番芳野友子と連絡を取って、いろいろ活躍している政党だと私は思っている。しかし組合員の人たちは、選挙になったら、(自民党参院議員の)加田さんをやらない。立憲をやります。『あんたらの給料の値上げの交渉を連合と一緒にやっているのは俺たち自由民主党ではないのか』と俺は言いたいね。そう思いませんか。(拍手)

 我々はいま、こういったような状況に置かれているのですけれども、ぜひ、皆様方の関心をぜひ『連合=組合員』『組合=立憲』と思わないで、もう少し目を広げてみて、現実問題、このなかにも連合の所属の組合員の人、いるだろう。よく考えてみてください」

 麻生氏の狙いは明白だ。野党支持の連合組合員に向かって「連合と自民党が一緒に賃上げ交渉をして2年連続で5%を達成」と強調、自民党現職の加田参院議員への支持を呼び掛けたということだ。実質的な投票依頼と見られても仕方がない。

ステージ上に勢ぞろいして「頑張ろう」を連呼した
前列左から、麻生太郎氏、加田裕之氏、西村康稔氏。

 公選法に違反するリスクがある支援要請をしてしまった麻生氏の焦る気持ちは分からないではない。

 これまで兵庫選挙区(定数3)は自民党と公明党と維新で議席を分け合っていたが、今回は泉房穂・前明石市長が無所属で出馬表明。抜群の知名度に加えて連合や立憲民主党が支援に回ると見られていることから有力視されている。「“炎上”してもトップ当選? 参院選出馬表明の泉房穂氏」(4月4日のアエラデジタル)と銘打った記事が出るのはこのためで、「(最後の)残り1議席を連立与党の自民と公明で争うという最悪の展開」(自民党幹部)との声も記事のなかで紹介されていた。こうした危機感が麻生氏の発言につながったように見えるのだ。

国政報告会後は、会場出口で西村氏と加田氏が並んで参加者一人一人にあいさつしながら握手もしていた。すでに参院選に突入したかのような雰囲気を醸し出していたのだ。

 公選法では、選挙運動を「特定の選挙において、特定の候補者の当選を目的として投票行為を勧める活動」と定義、選挙告示日から投票日前日までの限られた期間内でのみ選挙活動を行うことを許している。つまり告示日より前に選挙運動を行うことは事前運動と見なされて公選法違反となるということだ。

 自民党最高顧問の麻生元首相に公選法違反疑惑が浮上した。「今夏の参院選において加田参院議員の当選を目的として、連合と自民党の連携関係を強調しながら組合員に支援(投票)を呼び掛けた」というように見えるからだ。

 なお国政報告会は冒頭のみ報道関係者に公開され、その後は麻生氏の講演を含めて非公開だったことを後から知った。遅れて会場に到着した私はなぜか、フリーパスでなかに入ることができ、撮影も可能だった。

 今後、メディアや野党が厳しく追及していくのか否かが注目される。

【ジャーナリスト/横田一】 

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