国民民主党は就職氷河期世代を見捨てるのか
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国民民主党が10日、30歳未満を対象とする「若者減税法案」を国会に提出するという。法案では、若者の社会保険料や所得税の負担が重い現状を指摘し、負担軽減のため、所得税の減税などを行うことを盛り込んだ。
同党は法案を通じて若い世代に対するアピールにもなることを期待しているようだが、SNS上では「就職氷河期世代への対策はないのか」「これは大失敗したな、支持層を分かってない」など反発や批判の声が上がっている。
昨秋の衆院選や各地の地方選挙での国民の躍進は、いわゆる現役世代の支持を集めたことが大きいといわれる。もちろん現役世代には20代・30代も含まれるが、人口のボリュームゾーンが分厚いのは、団塊ジュニアや就職氷河期世代とも呼ばれる40代や50代である。
就職氷河期世代は、1990年代半ばから2000年代前半に就職活動を行った世代で、バブル崩壊後の不況の中で、新卒の就職市場は冷え込んでいた。現在の年齢は30代後半から50代前半が該当する。
非正規雇用が少なくない世代でもあるが、親の介護や住居の確保、低年金といった問題が想定され、国としても対策の必要性が指摘されており、リスキリングや就職氷河期世代の公務員採用試験などの取り組みが行われてきた。
指摘しておきたいが、大企業の新卒一括採用重視に対して、就職氷河期世代を多く雇用し、教育して社会の最前線で活躍する人材を送り出してきたのは中小企業である。
これまで自民党や立憲民主党といった多くの既存政党は、高齢者支援や子育て支援に比重を置き、就職氷河期世代の問題に関心を払ってこなかった。その結果、現役世代の政治への関心が失われ、投票率は下がる一方だった。
そうした中、国民の玉木雄一郎代表が、1月25日のYouTube「たまきチャンネル」で「就職氷河期世代の人達がサボってきたかと言うと、決してそんな事はない。逆に、どの世代よりも懸命にやってきた世代」と述べたうえで「就職氷河期世代を生み出したのは、政治である事は否定できない。であれば、政治が最後までできる事をやりきって、本当の意味で寄り添う姿勢が必要」と語っていた。
玉木氏の発言に期待を寄せた就職氷河期世代の投票行動が国民の躍進に大きく作用したことは間違いない。しかし、今回の若者減税法案の対象から外れていることで、一気に反発の声が噴出したようだ。
現在、多くの怨嗟の声が社会に充満している。それだけ国民生活は逼迫(ひっぱく)しており、個々人が抱える問題も複合的で、容易に解決策を見いだすことは難しい。闇バイトや東京・新大久保公園周辺の若い女性による売春行為、近年相次ぐ組織型ではないテロ事件は、将来に希望を見いだせない閉塞(へいそく)感が背景にあるとの指摘がある。
財務省前で「財務省解体デモ」が連日行われているが、平日夕方にもかかわらず参加者は200名を超えている。参加者の多くは30代や40代の現役世代である就職氷河期世代だ。支持政党は、れいわ新選組、国民民主党、そして参政党が多い。
デモが広がったのは国民生活の窮乏にもかかわらず減税を行わず、政治家に財政規律重視の思想を吹き込む「元凶は財務省」だとみられたからだ。「デモなんか無駄」との冷ややかな声もあるが、国民の怒りの声は収まることはないだろう。
国民民主党は就職氷河期世代からの反発の声への対処を誤ると、一気に失速する可能性があることを指摘しておきたい。
【近藤将勝】
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