【連載6】トランプ大統領の仕掛ける関税戦争:勝つことが全て!

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、4月11日付の記事を紹介する。また、今回の記事は、シリーズ『ドナルド・トランプとは何者か』の第6回としてご案内する。

日米関係 イメージ 同盟国だろうと敵対国であろうと、ほとんど全ての国を対象にしたトランプ大統領の「相互関税」は世界中に大きな衝撃をもたらしています。日本の石破首相も「想定外の事態」と受け止め、緊急のトランプ大統領との電話会談や新たに任命した対米交渉担当大臣をワシントンに派遣する段取りに右往左往しているようです。

 しかし、トランプ大統領にとっては、相手が右往左往し、こちらに歩み寄ってくることこそが狙いに他なりません。トランプ大統領曰く「関税ほど美しい言葉はない。関税によってアメリカは再び偉大な国として蘇る。若干の株価の変動はあるだろうが、長期的にはアメリカ人が金持ちになるチャンスだ」。

 トランプ氏の説明によれば、今回の関税戦争によってアメリカは前代未聞の税収を外国企業から徴収できるので、その分をアメリカの国民に減税として還元できるとのこと。とはいえ、大半のアメリカ国民はそんな勝手なトランプ節を信じてはいないようです。最新の世論調査でも、「トランプ大統領の対外通商政策は間違っている」と答えている国民が60%に達しています。トランプ氏の右腕を自画自賛するイーロン・マスク氏ですら、「関税は相互にゼロにするのが望ましい」と、相互関税に異を唱えているではありませんか。

 そもそも、いわゆる「関税戦争」は目くらましに過ぎないとの指摘も聞こえてきます。その代表格はトランプ政権1期目で補佐官を務めたバノン氏でしょう。彼の見立てによれば、「トランプ大統領の関税戦争は得意の話題作りの一環で、真の狙いは3期目の大統領の座に向けての布石に他ならない」とのこと。

 トランプ大統領は「シンゾーは素晴らしい男だった」と、故安倍首相を持ち上げながら、日本への24%の追加関税を発表しました。日本政府は「同盟国への配慮に欠ける決定だ。断固として抗議し、修正を要求する」と述べていますが、トランプ大統領の真意を掴めていないようです。石破首相は「日本は対米投資額では他を圧倒している。きちんとデータを示して説明すれば、分かってくれるはずだ」と悠長な構えに終始しています。

 実は、トランプ大統領はアメリカの「黄金時代」を築くためには、敵味方関係なく、とにかくアメリカの言うことを聞かせようという発想の持ち主なのです。トランプ氏とすれば、アメリカの最大のライバルとなった中国の習近平主席が3期目を経て、場合によっては「終身国家主席」を狙っているとも見られるため、自分も同じような長期政権を目指すと心に決めているとしか思えません。実際、3月30日のNBC放送のインタビューに応えて「冗談ではなく、3期目の可能性はあり得る」と率直に心情を吐露していました。

 そのためには憲法の改正が必要になりますが、トランプ陣営は入念に抜け道を考えています。何かと言えば、2028年の大統領選挙ではバンス副大統領が大統領候補となり、トランプ氏は副大統領候補に回るという筋書きです。そして、バンス大統領が誕生した暁には、権力をトランプ副大統領に移譲し、実質的な3期目のトランプ政権の発足になるというシナリオに他なりません。

 日本を含め、今回発動された関税戦争はトランプ大統領が政権を去れば終焉し、より安定した通商貿易関係が復活すると期待する向きも多いようですが、そうは問屋が卸さないでしょう。もし、2028年にホワイトハウスを去ることになれば、多数の訴訟案件を抱えるトランプ氏は即座に収監されるはずです。

 そうした不名誉な末路を回避するには手段を選ばず終身大統領で居続けるか、自分の身内を大統領に就けることで保身を図ることが必須条件になります。既に娘のイバンカをフロリダ州から上院議員に選出させ、将来の女性初の大統領職に就かせる工作も進めている模様です。

 トランプ氏にとっては、世間の常識や過去の前例は一切意味を持ちません。彼が大事にする生き方は「勝つこと。そのために手段は選ばない」ということに集約されています。

 そうした価値観を植え付けたのは20代のトランプ氏に目を付け、徹底的な「悪徳教育」を施したコーン弁護士でした。「20世紀最強のマフィア弁護士」と異名を取ったアメリカ政界の仕掛け人に他なりません。

 そうした悪魔のような弁護士から見込まれ、育て上げられたトランプ氏の精神構造をしっかりと把握した上で、対米交渉に当たらなければ、日本はいつまで経っても悪徳国家の属国のままでしょう。


著者:浜田和幸
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