
在福岡中国総領事館および(一社)日中投資促進機構は17日、ホテルニューオータニ博多にて、「中国経済と中日経済貿易協力交流会」と題するセミナーを開催、約200人が出席した。今回のセミナーには中国の地方(重慶市、広東省深圳市)からも代表団が参加した。
セミナーでは、まず主催者である楊慶東中国駐福岡総領事が、中国は日中の戦略的互恵関係を全面的に進める方針であると強調するとともに、日中両国は重要な経済・貿易パートナーであり、産業・サプライチェーンの安定・維持、一国主義・保護主義への対抗を呼びかけた。
日中協力は多分野におよぶ
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土屋直知福岡・大連未来委員会委員長((株)正興電機製作所代表取締役会長)ら日本側経営者はともに中国視察の意義を説いた。土屋氏によると、日中の地域協力は近年、製造業にとどまらず、AI・ロボットなどのDX、環境・エネルギー、ヘルスケアなど多方面に広がっているという。津田鶴太郎福岡貿易会副会長(津田産業(株)代表取締役社長)は、日本の主要都市のなかでも中国など成長著しいアジア諸国に最も近い福岡は、九州経済のゲートウェイとしての機能を果たしていると強調した。
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講演では、岡豊樹日中投資促進機構事務局長が、中国企業の競争力向上について触れ、日系企業が中国で成功を収めるためには、人材活用、R&D、権限移譲、人脈構築が重要であると強調した。日系企業の生産拠点の移転について、中国では6割以上が現状維持と慎重姿勢を示しているものの、ほかの新興国市場も視野に入れるべきと指摘した。
中国側からは、それぞれ日本との交流の実績や今後の取り組みが話され、経済・産業面にとどまらず、文化・芸術面でも交流を促進したいとの意欲が示された。イノベーションに力を入れる深圳市はAIを用いた創作コンテストを紹介した。日本の写真家・上田義彦氏をはじめ、海外からも多くの参加者がいるという。重慶市の担当者は、同市が鉄道または道路で欧州、中央アジアや東南アジア、さらには世界各地への輸送に優位性があると強調した。福岡県について、産業構造などで重慶と共通する点が多いとして、製造業や農業分野での連携に大きな可能性を感じているという。

地方代表団がそれぞれアピール
重慶市と深圳市は会場にそれぞれブースを設け、アピールを行っていた。重慶市が今回アピールしたのは日本で高級食材とされるじゅんさいだ。重慶市の企業が保存料無しでの常温保存に成功(中国で特許を取得)し、中国で商品化済みで、貿易業を手がける(株)AS(福岡市博多区)が8,000万ドル分のじゅんさいの購入について契約を交わし、日本での発売を準備中だ。同社の宇文航代表によると、じゅんさいは日本(秋田県が最多)と中国でのみ栽培されており、日本への輸入は初めてという。重慶というと辛い四川料理というイメージがあるが、おだやかなじゅんさいは日本人にとって受け入れやすいだろうと話す。すでに中国で店舗を展開する日本の流通大手から問い合わせがきており、日本での販売も視野に入れているという。
深圳市はAI創作コンテスト「AIビジュアルクリエイティブコンテスト」について、視聴数が数千万回以上の作品もいくつかあるなど、中国国内のトップレベルのクリエイターや企業が参加する大規模なイベントとなっているほか、AIを活用した画像や動画の広告などで多くの人材が育ってきていると実感しているという。今年8月に2回目の開催を予定している。アジアを中心に海外からの参加者も増えているとし、こうしたコンテストなどを通して日本との交流が深まることへの期待をにじませた。
【茅野雅弘】